第四講 ヴェネツィア・ビエンナーレ第56回国際美術展(2)企画コンセプト


1.国際企画展部門の概要と企画コンセプト

 ◆ヴェネツィア・ビエンナーレ第56回国際美術展 <スライド>

・会期: 5月9日〜11月22日(171日間、月休)
・会場:ジャルディーニ、アルセナーレ、ほか市内各所
・テーマ:全世界の未来(All the World’s Futures) ※世界のさまざまな未来のすべて
・キュレーター:オクウィ・エンウェゾー(Okwui Enwezor) <スライド>

 ◆国際企画展部門「全世界の未来」

・参加作家:136人以上
・各作家の出身国:53カ国
・89作家がヴェネツィア初出品
・159作品が2015年制作の新作


 ◆キュレーター・ステートメント

「世界のさまざまな未来のすべて」は、多様な形式や実践を一つの統一的な視覚領域の中に押し込んで閉じ込めてしまうような、全体を橋渡しするテーマとは異なる。それは、3つの互いに交差し合う「フィルター」によって特徴づけられる。すなわち、「秩序を失った庭」、「ライヴであること―叙事詩的持続をめぐって」、「『資本論』を読む」である。展覧会は、この3つのフィルターによって繰り返し振り付けし直されながら、さまざまな指標の星座的配置を描き出すことを通じて多種多様な実践の構想や実現へとつながっていくだろう。2015年5月6日から11月22日まで、第56回国際美術展は、ビエンナーレ自身の120年を超える歴史的軌跡を内に取り込んで作動させるだろう。物事の現時点での状態と様相との双方を映し出す、一つの「フィルター」的存在としての歴史を。(訳・藤川哲)

Source: Okwui Enwezor, “Introduction,” La Biennale di Venezia 56th International Art Exhibition. All the World’s Futures. Short Guide (2015):18.


2.秩序を失った庭

1. カールステン・ヘラー(ベルギー)《RB ライド》

2. RAQSメディア・コレクティヴ(インド)《戴冠式の公園》(1)(2)(3)(4)(5)(6)

3. イザ・ゲンツケン(ドイツ)《2本の蘭》

4. イザ・ゲンツケン(ドイツ)+ウォーカー・エヴァンス(USA)展示風景

5. イザ・ゲンツケン《チューリップ》 1988年

6. イザ・ゲンツケン《薔薇》 1993年

7. イザ・ゲンツケン《薔薇U》 2009年

8. サラ・ジー(USA)《最後の庭》(1)(2)(3)(4)(5)


3.ライヴであること―叙事詩的持続をめぐって

9. レミ・ポニファシオ(サモア)《ラジモアナ》

10. ハンス・ハーケ(ドイツ)《世界投票》

11. ジェイソン・モラン(USA)《舞台用:3つのデュース》

12. エイドリアン・パイパー(USA)《ポータブル信念登録所―ゲームのルール1-3》(1)(2) 2013年

13. エルネスト・バレステロス(アルゼンチン)《室内飛行》(1)(2)


4.『資本論』を読む

14. マルクス『資本論』朗読(アリーナ)

15. グレン・リゴン(USA)《小さなバンド》

16. リクリット・ティーラワニット(タイ)《デモンストレーション・ドローイング》(1)(2)(3)(4)

17. 石田徹也 展示風景

18. 石田徹也《トヨタ・イプサム》 1996年

19. 石田徹也《回収》 1998年

20. 石田徹也《めばえ》 1998年

21. 石田徹也《起床》 1999年

22. 石田徹也《兵士》 1996年

23. 石田徹也《くらげの夢》 1997年


5.まとめ

 ・概要と企画コンセプト

―「世界のさまざまな未来のすべて」は全体を橋渡しするテーマではない
―3つのフィルターが展覧会の内容を組み直し続ける
―屋外展示の比重増、ライヴ・パフォーマンスの組み込み、『資本論』=社会理論

 ・3つのフィルター

―秩序を失った庭→規範を逃れ続ける現代美術の挑戦的側面
―ライヴであること→171日の会期中、常に何か新しいものを提示する展覧会(興業性)
―『資本論』再読→現代社会を見つめ直す