第九講 PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015


1.京都

鴨川 七条大橋より
鴨川大橋付近
京都の民家 大和大路通 豊国神社付近
河井寛次郎記念館のある小道
河井寛次郎記念館の中庭
平安神宮


2.PARASOPHIA

 ◆概要 <スライド>

会期: 3月7日〜5月10日(58日間)

会場:京都市美術館、京都文化博物館 別館、京都芸術センター、堀川団地、鴨川デルタ、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店、京都BAL河原町通面

主催:京都国際現代芸術祭組織委員会、一般社団法人京都経済同友会、京都府、京都市

アーティスティック・ディレクター:河本信治

 ◆PARASOPHIA

・京都国際現代芸術祭の呼称は、熟考の据えPARASOPHIAという造語を使うことに決めました1。PARASOPHIA(パラソフィア)は、向こう側の別の知性という意味です。この女性的で軽い音感が、この国際展の個性と固有色を自然に生み出していきました。PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015はその名前自体がコンセプトなのです。

・PARASOPHIAは市民と内外の関係者を巻き込む思考と創造のプラットフォームを、世界に開かれた形で京都に根付かせるプロジェクトであり、PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015は、その通過点なのです。

註1 大規模な国際展となる京都国際現代芸術祭2015を多くの人々に興味を持っていただくために、テーマタイトルは短くて覚えやすい単語を、その音感を重視して考えました。日本人にとっては覚え易さと若干の不思議さを感じさせるものを、そして海外の複数の文化圏の人々にも京都国際現代芸術祭2015の趣旨を感覚的に伝達可能な単語を探し、PARASOPHIAに行き着きました。

PARASOPHIAは、sophiaという女性的な音感とparaという軽い語感、さらにそれが暗示する図像イメージと世界地図での京都の位置をもとに着想しました。

sophiaは叡智や学問体系を意味し、paraは接頭辞で、パラドクス、パラソル、パラフレーズ、パラノイア、パラメーターなどのように、「別の、逆の、対抗的な」という意味合いで使われます。

…paraは六角形のベンゼン環で対面の関係を示しています。…(中略)…PARASOPHIAという言葉でイメージしたのは、「巨大な円卓の対面に位置する智恵子さん」といった感じ、互いに熱いアイコンタクトを交わしながらも直接手を繋ぐことが出来ない、しかし他者を介して同じ位相を共有し確実に繋がっている関係です。

河本信治「はじめに―プロジェクトPARASOPHIA2013-2015」、『PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015』(京都国際現代芸術祭組織委員会、2015年)、8-9頁。

  →「向こう側にある智恵」


 ◆作品紹介

  京都市美術館 <地図>

やなぎみわ(1967- )「日輪の翼」上演用移動舞台車

1. ジャン=リュック・ヴィルムート(フランス, 1952- )《カフェ・リトル・ボーイ》(1)(2)

2. ウィリアム・ケントリッジ(南アフリカ共和国, 1955- )《セカンドハンド・リーディング》のためのドローイング(1)(2)、 2013年

3. 美術館の誕生(1)(2)

4. アン・リスレゴー(ノルウェー, 1962- )《神託、フクロウ…ある動物は眠らない》 2012-14年

5. 蔡国強(ツァイ・グオチャン, 中国, 1957- )《京都ダ・ヴィンチ》

6. 蔡国強《子どもダ・ヴィンチ》(1)(2)(3)

7. グシュタヴォ・シュペリジョン(ブラジル, 1978- )《素晴らしき美術史》(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7) 2005-15年

眞島竜男 展示風景

8. 眞島竜男《〈美術館〉についてのダイアグラム》

9. 眞島竜男《2つのコンテンポラリー:15分(ずつ)のレクチャー・ビデオ》

10. 眞島竜男《〈アート〉についてのダイアグラム》

11. 石橋義正(1968- )《憧れのボディ/bodhi》(1)(2)(3)

12. ヘトヴィヒ・フーベン(オランダ, 1983- )《手と目、そしてそれ》 2013年

  鴨川デルタ <地図>

13. スーザン・フィリップス(イギリス, 1965- )《3つの歌》(1)(2)

  堀川団地 <地図> 外観

14. ピピロッティ・リスト(スイス, 1962- )《堀川―不安は消滅する》(1)(2) 2014/15年

  京都芸術センター <地図> 外観

15. アーノウト・ミック(オランダ, 1962- )《異言》 2013年

  大垣書店 <地図>

16. リサ・アン・アワーバック(USA, 1967- )《この織機を持って失せろ》 2009年

  京都市美術館 <地図>

17. やなぎみわ 「日輪の翼」バーレスク(1)(2)

  河原町塩小路 <地図>

18. フランツ・ヘフナー(ドイツ, 1970- )/ハリー・ザックス(ドイツ, 1974- )《Suujin Park》

19. ヘフナー/ザックス「再配置した石とポールによる日時計」

20. ヘフナー/ザックス「寄付された植木鉢と元・崇仁小学校で使用されていた遊具による、開かれた多目的立体庭園とコミュニティホール」

21. ヘフナー/ザックス「(壊れた)街頭を代替する、水力発電により点灯する自転車ライト」

22. ヘフナー/ザックス「門/鳥居の形に切り抜いたフェンス」

  京都文化博物館 <地図> 外観

23. 森村泰昌(1951- )「侍女たちは夜に甦る」シリーズ 2013年

24. 森村泰昌《侍女たちは夜に甦るIII:絵の深奥の扉を開ける》 2013年

25. 森村泰昌《侍女たちは夜に甦るVI:王国の絵画、絵画の王国》 2013年

26. 森村泰昌《エルミタージュ 1941-2014(レンブラント・ルーム) 2014年

27. ドミニク・ゴンザレス=フォレステル(フランス、1965- )《オテロ1887》


3.参加作家40組の出身国

・展覧会規模:京都市美術館全館と京都府京都文化博物館を中心に約10,000u以上の展示面積を有する本展ですが、参加作家40組という小さな枠組みに留めることは早い段階で決めていました。

・40組という数は私やスタッフが参加者の顔と名前をしっかりと記憶し誠実に対応できる程よい数だと思いました。

河本信治「はじめに―プロジェクトPARASOPHIA2013-2015」、『PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015』(京都国際現代芸術祭組織委員会、2015年)、8-9頁。


 ◆出身国別 作家リスト

1. ルイーズ・ローラー(USA, 1947- )
2. アラン・セクーラ(USA, 1951- )
3. ブラント・ジュンソー(USA, 1959- )
4. リサ・アン・アワーバック(USA, 1967- )
5. アレクサンダー・ザルテン(USA, 1973- )
6. スタン・ダグラス(カナダ, 1960- )
7. スーザン・フィリップス(イギリス, 1965- )
8. サイモン・フジワラ(イギリス, 1982- )
9. ハルーン・ファロッキ(旧ドイツ領チェコスロバキア, 1944- )
10. ローズマリー・トロッケル(ドイツ, 1952- )
11. ヘフナー(ドイツ, 1970- )/ザックス(ドイツ, 1974- )
12. アーノウト・ミック(オランダ, 1962- )
13. ヨースト・コナイン(オランダ, 1971- )
14. ヘトヴィヒ・フーベン(オランダ, 1983- )
15. ジャン=リュック・ヴィルムート(フランス, 1952- )
16. ドミニク・ゴンザレス=フォルステル(フランス, 1965- )
17. ピピロッティ・リスト(スイス, 1962- )
18. アナ・トーフ(ベルギー, 1963- )
19. フロリアン・プムヘスル(オーストリア, 1971- )
20. アン・リスレゴー(ノルウェー, 1962- )
21. ラグナル・キャルタンソン(アイスランド, 1976- )
22. グシュタヴォ・シュペリジョン(ブラジル, 1978- )
23. ウィリアム・ケントリッジ(南アフリカ共和国, 1955- )
24. ナイリー・バグラミアン(イラン, 1971- )
25. アフメド・マータル(サウジアラビア, 1979- )
26. ヤン・ヴォー(ベトナム, 1975- )
27. アリン・ルンジャーン(タイ, 1975- )
28. 蔡國強(ツァイ・グオチャン, 中国, 1957- )
29. 徐坦(シュー・タン, 中国, 1957- )
30. 王虹凱(ワン・ホンカイ, 台湾, 1971- )
31. 森村泰昌(1951- )
32. 倉智敬子(1957- )+高橋悟(1958- )
33. 笠原恵実子(1963- )
34. やなぎみわ(1967- )
35. 石橋義正(1968- )
36. 高嶺格(1968- )
37. 眞島竜男(1970- )
38. 田中功起(1975- )
39. 笹本晃(1980- )
40. セクーラを読む人


4.まとめ

 ・向こう側にある智恵

―PARASOPHIA=国際的なコミュニケション・ツールとしての造語
―毎回異なる(?)テーマタイトル
―“幸多き賢慮は、いたるところよりわれらに来たれ”(リグ・ヴェーダ 1.89.1)

 ・現代美術展の国際性

―40組中、日本10、北米5+1、欧州15、アジア5、中東2、南米1、アフリカ1
―欧米の作家で半数以上、国内の作家が1/4
―距離的、文化的には「近く」、同時代動向の情報入手経路から見ると「遠い」アジア
―「向こう側」にある智恵と「こちら側」にある智恵