第十講 神戸ビエンナーレ2007-2015


1.神戸ビエンナーレ2007-2013

 ◆神戸ビエンナーレ2007

会場入口

会場案内

メリケンパーク(1)

藤原洋次郎(兵庫)《粒子の集積箱》(1)(2)(3)

メリケンパーク(2)

いけばな野外展:嵯峨御流 吉田泰巳《神籬》

巖愛珠(グループ万華)(大坂)《憩い》(1)(2)

◆平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により、まちは壊滅的な被害を受けましたが、復興への過程で物資の面だけではなく、芸術や文化の力がいかに暮らしの中で支えになっているかということに改めて気づきました。そうした体験を踏まえ、神戸市は、平成16年12月4日、芸術文化の力で未来へ向かっていきいきと進化するまちをめざしていくため、「神戸文化創生都市宣言」を行いました。平成17年9月に策定した文化創生推進プログラムにより、現在、文化創生に向けた様々な取り組みを行っていますが、開港140年にもあたる2007年、芸術文化の更なる振興と、神戸のまちの賑わいや活性化につなげる新たな試みとして、「神戸ビエンナーレ2007」を開催いたしました。

矢田立郎(神戸市長)「あいさつ」、『神戸ビエンナーレ2007』(神戸ビエンナーレ組織委員会、2008年)、4頁。

 →震災からの精神的復興を目指した芸術祭

◆大森(正夫)「国際的な美術展の効果的政策上の意図は2つある。1つは、地域間の格差や各まちのアイデンティティの格差をなくすために行うもの。越後妻有は典型的にこれであり、越後妻有の地域の文化性、芸術性を高めていこうという形であった。もう1つの政策意図は、そのまちの持っているキャパシティ、包容力を示すこと。今回の神戸ビエンナーレはどちらかというと後者のほうだと思う。いわゆる地域間の格差をなくそうという必要がない。市民レベルは十分に高い。それよりは神戸がどれほどのものを受けて、また発信できるかという、街の文化的な器の大きさという神戸の持つ街の魅力として示すことではないかと思う。」

プレイベントシンポジウム「神戸ビエンナーレの目指すもの」、『神戸ビエンナーレ2007』(神戸ビエンナーレ組織委員会、2008年)、33頁。

 →街の魅力を発信する芸術祭


 ◆神戸ビエンナーレ2009

メリケンパーク会場西側 アートマーケット受付

アートマーケット

メリケンパーク

ラフレアチリンギート(アートカフェ)

文化庁メディア芸術祭会場

神戸港震災メモリアル・パークと海上アート鑑賞船ファンタジー号

船上パフォーマンス:鎌田牧子

船上パフォーマンス:きたまり、鎌田牧子、宮北裕美

神戸港・海上アート展

植松奎二《間のかたち2009》

野外特設ステージ関西 BATTLE JAZZ 2009

PEOPLE PURPLE「ORANGE」

◆…今回のビエンナーレの最大の特徴は、メリケンパークと兵庫県立美術館の両会場を船で結び、神戸港内に作品を展示する「海上アート展」を実施したことです。神戸が持つ最大の資源である港を活かした内容は、神戸の独自性を存分に発信できたのではないでしょうか。

矢田立郎(神戸市長)「ごあいさつ」、『港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2009』(美術出版社、2010年)、33頁。

 →神戸の「独自性」を発信


 ◆神戸ビエンナーレ2011

ファミリオ会場入口

ファミリオ

ファミリオ会場B2F アート イン コンテナ国際展

キム・テボム(韓国)《スモール・シティ》(1)(2)

神戸ハーバーアイランド(キャナルガーデン)会場

折戸朗子《盆栽リーゼント栽培キット―頭上緑化のすすめ―》

ポーアイしおさい公園

角野晃司《監視者》

東方悠平《神戸ゴミタワー》

モトコー7番街

戸矢崎満雄ほか《銀の雨・金の環》(1)(2)

◆今回、基本方針を「アートを活かしたまちづくり」として、アート作品を楽しんでいただくことはもちろん、作品鑑賞を通して神戸のまちの魅力を再認識、再評価してもらうことをねらいとしました。港町神戸を満喫できる神戸ハーバーランド、神戸の海・山・まちを一望できるポーアイしおさい公園、戦後から続き今なお独特の雰囲気を残す元町高架下と、それぞれ持ち味の異なった会場を新たに加えたことで、多くの方々にご来場いただくきっかけとなり、あらためてさまざまな神戸のまちの魅力に触れていただくことができたと思います。

矢田立郎(神戸市長)「ごあいさつ」、『港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2011』(美術出版社、2012年)、4頁。

 →神戸のまちの多様性や豊かさを再発見し発信する


 ◆神戸ビエンナーレ2013

メリケンパーク会場入口

石井公二《まちに咲く五本指》(1)(2)(3)

モトコー3番街

左:ニシムラマホ(愛知)《SAKURA―天と地をわけてさく》/右:朴龍俊(パク・ヨンジュン、奈良)《錆鋼な失望が眠ると忘却の追憶は目覚める、ワタシノイマサク》

中突堤中央ターミナル(かもめりあ):グリーンアート展会場

グリーンアート展会場風景

笠原由起子(神奈川)《ソフィアの本棚》(1)(2)

「現代のアート」の多様性


 ◆会期・テーマ・会場の変遷

第1回 2007年10月6日〜11月25日 出会い〜人・まち・芸術
 会場:メリケンパーク

第2回 2009年10月3日〜11月23日 わ wa
 会場:メリケンパーク、兵庫県立美術館ギャラリー棟、神戸港、三宮・元町商店街、ほか
 港を活かす「海上アート展」

第3回 2011年10月1日〜11月23日 きら kira
 会場:神戸ハーバーランド、ポーアイしおさい公園、兵庫県立美術館、元町高架下
 東日本大震災に配慮して野外展示を自粛。高架下展示開始

第4回 2013年10月1日〜12月1日 さく “saku”
 会場:メリケンパーク、神戸港エリア、兵庫県立美術館・ミュージアムロードエリア、三宮・元町エリア、ほか
 メリケンパーク、海上アート展復活。横尾忠則美術館、ミュージアムロードエリア、市内ギャラリー等も追加


2.神戸ビエンナーレ2015

テーマ スキ。[su:ki] <スライド>

神戸が、スキ。
新しいもの、優れたもの、愛らしいものに私たちは心惹かれます。好奇心は気持ちを弾ませ、さまざまな芸術文化を花咲かせます。好みは人それぞれの趣向ですが、この直感には素直なこころが現れています。そして、日本人は、この「好き」の語感も好み、日常に親しんできました。紙を漉き、土地を鋤き、髪を梳き、隔てを透く‥。櫛や鍬や柵などで、乱れたものを整えたり、余分なものを省いたり、空かせて通りを良くするのです。
この生気を吹き込む軽みと洒脱さは、多くの数寄者を生み、自身の感性を見極めるとともに、相手の好みを慮り、時にはスキを与える美徳さえも"もてなし文化"として育んできたのです。さまざまな価値や表現が「さく」今日、お洒落な都・神戸で、心おきなく大切な「スキ。」と出合い遊びましょう。

Source: http://www.kobe-biennale.jp/news/pdf/20150427154207-fb47a68b81ffdcc05ae984aefe73ca9738c8869f.pdf (2015/7/5)

1. アートインコンテナ国際コンペティション <スライド>
2. しつらいアート国際コンペティション
3. 創作玩具国際コンペティション
4. グリーンアートコンペティション
5. 現代陶芸コンペティション
6. ペインティングアートコンペティション
7. コミックイラスト国際コンペティション
8. 海外招待作家展
9. 国内招待作家展


3.今年国内で開催される芸術祭

3月7日〜5月10日 PARASOPHIA 京都国際現代芸術祭 <スライド>
http://www.parasophia.jp/

7月18日〜9月27日 別府現代芸術フェスティバル 混浴温泉世界 <スライド>
http://mixedbathingworld.com/ ※トリエンナーレ

7月18日〜10月12日 水と土の芸術祭(新潟) <スライド>
http://www.mizu-tsuchi.jp/ ※トリエンナーレ

7月25日〜8月30日 堂島リバービエンナーレ(大阪) <スライド>
http://biennale.dojimariver.com/

7月26日〜9月13日 大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ <スライド>
http://www.echigo-tsumari.jp/about/triennale_2015/

9月12日〜10月12日 中之条ビエンナーレ(群馬) <スライド>
http://nakanojo-biennale.com/ 温泉+故郷+アート(四万温泉、川中温泉、花敷温泉、小野上温泉、川古温泉、草津温泉)

9月19日〜11月23日 港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ <スライド>
http://www.kobe-biennale.jp/

10月4日〜11月29日 第26回UBEビエンナーレ 現代日本彫刻展 <スライド>
http://www.city.ube.yamaguchi.jp/kyouyou/choukoku/biennale/castellon.html
http://ubebiennale.com/


4.まとめ

 ・ビエンナーレの通史的理解

―テーマの変遷(と一貫性)、会場エリアの拡大
―街の魅力発信から、発掘と再発見へ
―他との差違化、アート・ツーリズム
―現代的課題の探求:エコロジーと文化的多様性

 ・幸多き賢慮

―公募展中心=市民参加と若手作家の登竜門
―招待作家展=「質」の維持
―プロ/アマを問わない「賢慮」の表現(=アート)
―「幸多き」=現代的課題への解決/文化的な成熟