第十二講 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ/総括
1.越後妻有アートトリエンナーレ
・イリヤ&エミリア・カバコフ(ロシア)《棚田》(1)、(2)、(3)、(4) 2000年
・まつだい雪国農耕文化センター「農舞台」とイリヤ&エミリア・カバコフ《棚田》
・ジャン=リュック・ヴィルムート(フランス)《カフェ・ルフレ》 /まつだい食堂
・休耕田
・ジャウマ・プレンサ(スペイン)《鳥たちの家》 2000年
・オル・オギュイベ(ナイジェリア)《いちばん長い川》(1)、(2)、(3)、(4)、(5) 2000年
・ジェームズ・タレル(USA)《光の館》(1)、(2)、(3)、(4) 2000年
・行武治美《再構築》(1)、(2)、(3) 2006年
・塩田千春《家の記憶》(1)、(2)、(3)、(4) 2009年
・原画一覧
市町村合併→「越後妻有」地域共同イベント
里山と現代アート cf. イリヤ&エミリア・カバコフ《棚田》2000年
中越大地震(2007年7月16日)
廃校、空家(限界集落)→現代アートの設置会場として活用
アートイベントとボランティア cf. こへび隊
その土地ならではの「食と風土」(アート・ツーリズム) cf. グリーン・ツーリズム、アグリツーリズモ
都市間競争時代(ハブ空港化、オリンピックの誘致)=開発型
「豊かさ」の見直し←現代アート
◆イリヤ&エミリア・カバコフ《棚田》、2000年
四月、輝く太陽。雪は消え、湿っぽい霞が空中を充たす。
ずんぐりした馬が、重い耕作用の鋤を懸命に引っ張る。
春のうちに、田んぼの準備を入念に。
新たな播種と種の植え付けのために。
五月の初め、太陽が照りつけ始める。
水に充たされた田の面が、暁の光に光る。
経験豊かな手が、暖まった大地に種を播いてゆく。
鋭く尖った芽が、大地から濃く生い立っていくように。
五月の太陽の下に木々は芽吹き、田の水はぬるんでくる。
大地から生えた茎は伸びてゆく。
植え付けられた植物が大地を着飾らせるように、
奇妙な木製の枠、タワクを転がして。
八月、暑さは頂点に達し、玉のような汗が滴り落ちる。
だが、休むいとまはなく、棚田から棚田へと刈ってゆく。
雑草が稲を覆ってしまわないように。
静かな稲。
人影は見えないほどに、高く成長した稲穂。
九月。鎌をふるい、一粒も残さず収穫を取り込み時だ。
田から、重い束をやっとのことで運び去る。
十月までにはすっかり乾燥させ、脱穀するためだ。
2.総括
◆今年海外で開催されるビエンナーレ
第12回シャルジャ・ビエンナーレ(3/5〜6/5)
第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ(5/9〜11/22)
第12回ハバナ・ビエンナーレ(5/22〜6/22)
第1回ウィーン・ビエンナーレ(6/11〜10/4)
アメリカズ・バイエニアル(7/14〜8/30)
第14回イスタンブール・ビエンナーレ(9/5〜11/1)
第13回リヨン・ビエンナーレ(9/14〜2016.1/3)
第10回フィレンツェ・ビエンナーレ(10/17〜25)
第13回ビエンナーレ・ジョグジャ(11/1〜12/10)
第8回アジア太平洋トリエンナーレ(11/21〜2016.4/10)
広州三年展(12/11〜2016.4/10)
◆今年国内で開催されるビエンナーレ
3月7日〜5月10日 PARASOPHIA 京都国際現代芸術祭
7月18日〜9月27日 別府現代芸術フェスティバル 混浴温泉世界
7月18日〜10月12日 水と土の芸術祭(新潟)
7月25日〜8月30日 堂島リバービエンナーレ(大阪)
7月26日〜9月13日 大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ
9月12日〜10月12日 中之条ビエンナーレ(群馬)
9月19日〜11月23日 港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ
10月4日〜11月29日 第26回UBEビエンナーレ 現代日本彫刻展
◆ビエンナーレの事例紹介
・海外:シャルジャ(中東)、ヴェネツィア(ヨーロッパ)
・国内:京都、神戸、宇部、越後妻有
・日本における現代美術展の国際性(京都)
・地域振興(市民参加)と若手作家の登竜門(公募展:神戸、宇部)
・市内展開(京都、神戸、シャルジャ、ヴェネツィア)、街づくり(宇部)
・ビエンナーレの認知度(京都、宇部)
・テーマ:「過去、現在、可能なもの」(シャルジャ)、「世界のさまざまの未来のすべて」(ヴェネツィア)、「PARASOPHIA(向こう側にある智恵)」(京都)、「スキ。[su:ki]」(神戸)
◆現代美術主題分類システム
・各現代美術作品の持つ情報内容に着目し、それらの共通性によって分類
・現代美術作品を、あらゆる知識が網羅された<知識の宇宙>の断片として捉え、各作品の「核となる内容」を主題として言語化する。
・「作品の数だけ項目が増える?」→一定数以上の事例の検証と蓄積が必要
3.まとめ
・越後妻有アートトリエンナーレ
―棚田、里山、限界集落
―美術と地域活性化
―高齢化社会と若者人口の争奪戦
―創造クラスター:都会志向/地方志向(自治体による誘致)
・総括
―海外2例、国内4例を紹介
―複数の会場を巡りながら現代社会の課題について考える
―ヴェネツィア・ビエンナーレを通して考えるアートの国際性(ツバル、ジンバブエ、フィリピン、非国家主体)
―私たち自身と現代アートとの関係を問い直す
―主題分類による傾向の把握