美学・美術史特殊講義二〇一五


期末試験問題概略告知

1.ビエンナーレや国際芸術祭について基礎的な知識を問う/○×問題/10問/各2点(20点)

2.ヴェネツィア・ビエンナーレ第56回国際美術展について解説した文の空欄に適切な用語を選んで文章を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/10問/各3点(30点)

3.神戸ビエンナーレとUBEビエンナーレについて、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/15点

4.現代の社会について述べた上で、授業で紹介された作品を3つ以上例に挙げて、社会とアートを関連づけて論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/35点


成績評価方法

試験:100点満点×0.7(計70点)

課題レポート:10点

出席:12回=12点(1欠席毎-1点 ex.欠席3回=出席点9点)

※最初の1回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者に+2点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに6〜10点の範囲で加算


美学・美術史特殊講義(前期)試験問題

実施日時 二〇一五年七月二十八日(火)
12時50分〜14時20分(90分)

 

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。なお、ヴェネツィア・ビエンナーレ第五十六回国際美術展については、「第五十六回ヴェネツィア・ビエンナーレ」と略記する。

(1)第十二回シャルジャ・ビエンナーレは、「過去、現在、可能なもの」をテーマとして韓国系アメリカ人のキュレーター、エウンジ・ジュによって企画された。

(2)AES+Fの映像作品《反転世界》は、第五十六回ヴェネツィア・ビエンナーレの国際企画展部門で紹介されている。

(3)第五十六回ヴェネツィア・ビエンナーレの銀獅子賞は、韓国のイム・ヒュンスンが受賞した。

(4)第五十六回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館の展示は、塩田千春の「掌の鍵」である。

(5)第五十六回ヴェネツィア・ビエンナーレの各国館のうち、ニュージーランドはマルチアーナ国立図書館の一室を借りて展示を行った。

(6)ヴェネツィア・ビエンナーレの主会場の一つ、ジャルディーニは、ヴェネツィア共和国時代に稼働していた造船所の跡地である。

(7)京都国際現代芸術祭の呼称PARASOPHIAは、女性的で軽い音感であることが理由の一つとなって選ばれた。

(8)東日本大震災が起こった二〇一一年の第三回神戸ビエンナーレは、主会場を神戸ハーバーランドに変更して開催された。メリケンパークで開催しなかった理由は、野外展示用の資材を復興に役立ててもらうためと説明されている。

(9)宇部市が野外彫刻展に取り組むようになったのは、花いっぱい運動で集めた募金の余剰金で購入した現代彫刻の設置がきっかけである、と言われている。

(10)大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレは、現在、十日町市と津南町を開催地としているが、二〇〇〇年当初は六市町村(十日町市、川西町、津南町、中里村、松代町、松之山町)でスタートした。

 

 

(各三点、計一五点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を1〜30の番号で記すこと。

 ヴェネツィア・ビエンナーレは、「ヴェネツィア市国際美術展」の名で一八九五年に開始され、今年で一二〇周年を迎えた。第五十六回展のキュレーターに抜擢されたナイジェリア出身の( A )は、ヴェネツィア・ビエンナーレと双璧とされ、( B )のカッセルで五年に一度開催されるドクメンタの総合監督を二〇〇二年に務めたほか、セビーリャ、( C )、パリなどのビエンナーレやトリエンナーレのディレクターも務めている。
 「世界のさまざまな未来のすべて(All the World’s Futures)」と題された( D )部門には、日本から石田徹也の作品が選出されたほか、サモアのレミ・ポニファシオ、タイのリクリット・ティーラワニット、ベルギーのカールステン・ヘラー、アメリカ合衆国のジェイソン・モランなど、五十三カ国、百三十六人以上の作家の作品が展示されている。「秩序を失った庭」、「ライヴであること―( E )的持続をめぐって」、「『資本論』を読む」という3つのフィルターが設定されており、これらのフィルターを重ね合わせながら、さまざまな切り口で展覧会を読み解いて欲しい、ということのようである。
 「秩序を失った庭」については、会場の各所に設置されている野外作品と関連づけて解釈されるべきであろう。十五分かけて一回転する超スローなメリー・ゴーランド、首や上半身のない彫像、廃材で組立てられた巨大な「不死鳥」など、現実社会とは異なる空間に足を踏み込んだ印象を強めていた。「ライヴであること」については、パフォーマンスや演奏、観客の参加を促す作品などが多く含まれていることが注目される。中でも、( F )の《世界投票》は、タブレット端末を介して回答されたアンケートの結果がリアル・タイムで集計され、観客に示される。アラブ首長国連邦の首都( G )で、グッゲンハイム美術館やルーヴル美術館の別館、ニューヨーク大学( G )校などの建設と維持に南アジアの移民労働者が劣悪な環境下で働かされている問題について、グッゲンハイム美術館等の倫理的責任を問うなど、啓発的な設問が多い。どのような集計結果が得られるか、世界各地から観客が訪れる国際美術展ならではの試みと言える。特に最後の「『資本論』を読む」については、主会場の一画に( H )と呼ばれるステージを設置して、会期中、一日三回、三〇分ずつの朗読が行われている。『資本論』は、ドイツの思想家( I )の著作で、三部から成る。「『資本論』を読む」は、この三部すべてを、七カ月の会期中に、男女二人によって聖譚曲(オラトリオ)のように読み上げるという企画である。また、( J )に選ばれたマッシニッサ・セルマニの《一、〇〇〇の村》は、一九七三年に行われたアルジェリアの農地改革の失敗による社会的影響を調査した作品である。こうした作品が果たして「アート」なのか、という疑問は海外の批評にも見られる。だが、より良い未来をたぐり寄せるのはアーティストや現代アートの役割ではなく、私たち自身が果たすべき仕事である。癒やしや悦びを与える展覧会の存在は否定されるべきものではないが、レジャーや娯楽に事欠かない現代社会で、私たちの社会の未来について、真面目な意見交換ができる場としてビエンナーレを機能させようというキュレーターの存在もまた、否定されるべきものではないだろう。

(1)エイドリアン・パイパー (2)オクウィ・エンウェゾー  (3)マシンバ・フワティ  (4)アリーナ  
(5)プラットフォーム  (6)アート・フォーラム  (7)インマヌエル・カント  
(8)マルティン・ハイデッガー  (9)カール・マルクス  (10)ハンス・ハーケ  (11)サラ・ジー  
(12)ハルン・ファロキ  (13)金獅子賞  (14)銀獅子賞  (15)特別表彰  (16)ドイツ  
(17)イギリス  (18)イタリア  (19)光州  (20)上海  (21)台北  (22)国際企画展  
(23)国別参加  (24)並行展  (25)叙事詩  (26)抒情詩  (27)新体詩  (28)ドバイ  
(29)シャルジャ  (30)アブダビ

 

 

(一五点)

三、神戸ビエンナーレとUBEビエンナーレについて、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ(字数制限なし)。なお、各用語の初出時には、傍線を引いて明示すること。

阪神・淡路大震災   いけばな   緑化運動   公募展   市民参加

 

(三五点)

四、現代の社会について述べた上で、授業で紹介された作品を三つ以上例に挙げて、社会とアートを関連づけて論述せよ(字数制限なし)。

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=九〇〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一、二の解答