第26回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)


1. 第26回UBEビエンナーレの概要 会場写真

公募展/彫刻展/単館開催
会期:2015年10月4日〜11月29日
会場:ときわミュージアム彫刻野外展示場
主催:宇部市、UBEビエンナーレ運営委員会、毎日新聞社
協賛:宇部興産株式会社
後援:文化庁、国際交流基金、山口県、山口県立美術館、秋吉台国際芸術村、山口情報芸術センター、島根県立石見美術館、下関市立美術館、北九州市立美術館、NHK山口放送、tysテレビ山口、yab山口朝日放送、KRY山口放送、C-able山口ケーブルビジョン
助成:公益財団法人 花王芸術・科学財団、平成27年度 文化庁 地域活性化・国際発信推進事業


主催・後援・協賛・助成・協力

主催は、展覧会全体に責任を持つ。美術館単独の場合もあれば、行政組織や企業などが名を連ねる場合もある。また、共催という位置づけで、中心的に責任を担う組織とは別立てで、同等の実施責任を担う場合もある。

後援は、展覧会の実施にあたり便宜をはかる。政府機関や地方自治体、教育委員会など。さまざまな認可手続きの際に、他の競合事業との調整を行う。

協賛は、物理的な支援や業務上の協力を行う企業等。

助成は、経済的支援を行う財団や基金。

協力は、そのほかさまざまな形での支援を行う機関や団体。個人も含む。


公募展

公募展は、展覧会の会場、開催時期、出品条件、出品方法等を関係各方面に告知することにより、展示作品を広く募集する展覧会。コンクールコンペティションとも呼ばれる。これに対し、企画展(テーマ展)は、企画者が展覧会のテーマ等を設定して出品作品や出品作家、展示構成を考え、作品借用や作家の招待等の出品交渉を行う。

・公募展の歴史は、フランスの王立絵画彫刻アカデミーの展覧会(=サロンに遡る。1748年の審査員制度導入後、入落選が画家の社会的成功を左右する大きな権威となった。

・日本では、日本画の新旧派、洋画の新旧派を統合して、1907年に文部省美術展覧会(=文展)が発足。だが、1913年には洋画の新派が分離独立して二科展を発足させるなど、国家が主宰する官展に対し、在野の公募団体展が増加した。


各賞

・大賞(宇部市賞) [買上げ賞]・・・500万円
・宇部興産株式会社賞 [買上げ賞]・・・400万円
・毎日新聞社賞・・・150万円
・宇部マテリアルズ賞 ・・・100万円
・緑と花と彫刻の博物館賞[模型作品買い上げ賞] ・ ・ ・50万円
・山口銀行賞 ・・・50万円(△40万円)
・宇部商工会議所賞 ・・・50万円(新設)
・山口県立美術館賞 ・・・20万円
・島根県立石見美術館賞 ・・・20万円
・下関市立美術館賞 ・・・20万円


第26回UBEビエンナーレ選考委員会

・酒井忠康(美術評論家・世田谷美術館長) ※委員長
・澄川喜一(彫刻家・島根県立石見美術館長)
・水沢勉(美術評論家・神奈川県立近代美術館長)
・逢坂恵理子(横浜美術館館長)
・河口龍夫(現代美術家・金沢美術工芸大学教授)
・斎藤郁夫(山口県立美術館副館長)
・藤原徹平(建築家・横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)
・南嶌宏(美術評論家・女子美術大学教授)
・岸桂子(毎日新聞社東京本社学芸部記者)
・久保田后子(宇部市長・緑と花と彫刻の博物館長)


UBEビエンナーレの歴史

第1回宇部市野外彫刻展 1961年7月18日〜9月17日
チャドウィック・アーミテージ彫刻展 1962年11月2日〜11月6日
第1回全国彫刻コンクール応募展 1963年9月10日〜11月5日
第1回現代日本彫刻展 1965年10月1日〜10月31日
   ↓
第22回現代日本彫刻展 2007年9月29日〜11月11日
第23回UBEビエンナーレ  2009年10月3日〜11月15日
第24回UBEビエンナーレ  2011年9月24日〜11月13日 ※野外彫刻展50周年記念(宇部市制施行90周年)
第25回UBEビエンナーレ  2013年9月29日〜11月24日
第26回UBEビエンナーレ  2015年10月3日〜11月15日 (※現代日本彫刻展50周年)


・宇部市は炭鉱の町としてスタートし、工業都市へと、順次転換しました。1951年の記録によりますと、まだ石炭もたくさん出ており、化学工業も最盛期という時代でしたので、1日の降灰量が、1平方キロメートル当たり約56トンというすさまじい公害を経験しました。…(中略)…市民と学者と企業と行政、この4者が協力して対策を講じ克服していったという歴史があります。…(中略)…企業は、灰が降らないように煙突に電気集塵機を取り付けました。また、市民は、そういう対策にあわせて灰や煙の量を少しでも減らそうと、街に木を植え緑化に努めたわけです。
・この運動が、市民の「緑化運動」へと発展し、あわせて「花いっぱい運動」へと展開しました。
・そうした緑と花の延長線上で、1960年、女性問題対策審議会から、“自然と人間の接点としての芸術”という提言を受け、この彫刻事業がスタートしたのです。
・この女性問題対策審議会は、女性を中心とした組織で、公害の問題だけでなく子供達の不良化問題にも取り組んでいました。ある時、花いっぱい運動で集めた募金に余剰金が出たため、彫刻のレプリカを購入し、駅前の広場に置いたところ、たくさんの子供たちが、写生を始めたそうです。これは教育上すばらしいことだということで、是非子供達に本物の芸術を見せようではないかという運動になり、これが彫刻を始める起点となったと聞いています。

藤田忠夫(宇部市長)「緑と花と彫刻のまち」、『第20回現代日本彫刻展記念シンポジウム報告書』(第20回現代日本彫刻展記念事業実行委員会、2003年)、22頁。


現代日本彫刻展からUBEビエンナーレへ

 第20回記念現代日本彫刻展 Ube city(2003)

主催:宇部市、現代日本彫刻展運営委員会、毎日新聞社
後援:文化庁
協賛:宇部興産株式会社
助成:芸術文化振興基金、花王芸術・科学財団


2. 受賞作品

1. 竹腰耕平(京都)《宇部の木》(別方向から) 大賞(宇部市賞)

2. 志賀政夫(茨城)《空をみんなで眺める》 宇部興産株式会社賞

3. プロジェクト・ムーン(チェ・ウンドォン/ウィ・セボク、韓国)《Transmigration》(別方向から) 毎日新聞社賞

4. 戸田裕介(埼玉)《水土の門-U/天地を巡るもの》(別方向から) 宇部マテリアルズ賞

5. 西澤利高(神奈川県)《UNTITLED》 山口銀行賞

6. ヴィンセント・オリネット(フランス)《Fantaisie à la crème de Pistache au thé vert et son chocolat acrylique》(部分) 宇部商工会議所賞

7. クオ・クオ・シャン(台湾)《迴響/Echoes》 山口県立美術館賞

8. 武田充生(東京)《跡》 島根県立石見美術館賞

9. 田中清隆(東京)《うしろの正面》(別方向から) 下関市立美術館賞


3. 入選作品

10. [gh/e](砂山太一・御幸朋寿・永田康祐、東京)《dazed by liquor》

 ・ [gh/e](御幸朋寿・永田康祐・砂山太一)《Ephemeral depth》 第25回展出品作

11. 三木俊治(東京)《殿敷侃へのオマージュ―タイヤ プラン]》

12. 浅野芳彦(東京)《いしずえ》

13. 田中毅(埼玉)《ともだち》

14. 谷口顕一郎(ドイツ)《宇部市のための凹みスタディ》

15. 浅野左倉(岐阜)《不安定な夜》(別方向から)

16. 晴芻K一(埼玉)《STORAGE》

17. 津村拓(兵庫)《orange》

18. 久村卓(東京)《STANDARD》(部分)


4. 会場風景

会場風景(1)(2)

19. 日大芸術学部 現代アートチーム モヤスブ《誘橋》

   ・TeamU《ときわの風浪》 第25回展 橋アートコンペティション

 冨長敦也(大阪)《Our Love》 第25回展 大賞

20. UBEビエンナーレライブラリー2015(10/4〜25)


5. コラボ・メニュー

21. 武田充生《跡》×焼きカレー

22. 浅野芳彦《いしずえ》×太巻き寿司

23. 三木俊治《殿敷侃へのオマージュ―タイヤ プラン]》×ワッフル

24. 津村拓《orange》×ケーキ


6. 第26回UBEビエンナーレ応募作品展 会場写真

会期:2014年9月29日〜11月3日
会場: ときわ湖水ホール
30カ国266点の応募作品の中から、40点の入選模型作品を選考後、18点の実物制作指定作品を決定
実物制作指定作品18+入選作品22

会場風景

竹腰耕平《宇部の木》

三木俊治《殿敷侃へのオマージュ―タイヤ プラン]》

戸田裕介《水土の門-U/天地を巡るもの》

津村拓《orange》

武田充生《跡》

久村卓《STANDARD》

25. 入選模型作品展


7. まとめ

 ・展覧会の開催組織

―美術館とメディア、行政との協力関係を読み解く

―助成団体、協賛企業に展覧会組織の特性が見えてくる

―展覧会の社会的意義の裏書き

―学芸員の構想力と組織構成力

 ・公募展

―登竜門(=若手作家の発表機会)

―授賞制度による奨励と権威づけ

―選考基準や審査過程に対する批判

―公募展と企画展/グループ展と個展

 ・地方自治体の文化行政

―地域の文化力の底上げ

―地域出身者の称揚と顕彰

―国際的視野での文化的貢献

―市民参加