障害(仮)


1. 障害(仮)

 ◆概要 会場写真

企画展/単館開催
会期:2015年9月12日〜12月13日
会場:鞆の津ミュージアム
主催:鞆の津ミュージアム企画展実行委員会
助成:日本財団
協力:ミヅマアートギャラリー、ポット出版、就労継続支援B型事業所ハーモニー、ナナクロ社、お食事処よしだや、関西学院大学漫画同好会、京都大学霊長類研究所、齋藤亜矢、林美里、松沢哲郎


 ◆企画趣旨

 今日、「障害者」についての理解および人権の尊重は、以前とくらべて格段に進展してきています。また、障害のある人が生み出した創作物は、展覧会などを介して広く知られるようになりました。その一方で、メディアを通じ、「頑張る」「純粋」「天才」などといったステレオタイプな障害者像が、相変わらず世の中に流布していることも疑いのない事実です。しかし、当然ながら、障害のある人たちの生き方は多様であり、そのような特定の障害者観にもとづいた語り方は、障害のある人たちの現実を適切に伝えているとはいえません。にもかかわらず、「障害者」に対する思い込みや期待、見るものを感動させ勇気づけようとするための誇張などに基づいた紋切型の障害者像は再生産され続けているのです。私たちは、こうした健常者中心の考え方に対して自覚的にならなければ、意に反して、障害のある人やその表現を排除することになってしまうでしょう。
 そもそも、人の「心」は他者から見えません。たとえば、コミュニケーションに障害のある人と出会った時などに、他者の心の見えなさは強く意識されます。そのため、私たちは常に他者の内面を想像するしかなく、同じ人やモノに対しても、それぞれ異なる想いを持つことはよくあることでしょう。その想いはどれも「本物」ですが、一方で、どこにも本当の正解がないという意味では、私たちの日常は「仮想」に満ちていると言えます。このように「仮想」と「現実」の関係は表裏一体であり、それが人々の衝突を引き起こすことも少なくありません。それでも私たちは、それぞれの本当の想いを排除することなく、お互いを認め合い、今とは別の方法で他者を受け入れることが求められているのではないでしょうか?
 そこで本展では、「仮想」と「現実」の間を往来しているような表現を一堂に展示します。私たちが「真実」とみなして疑わない日常の虚構性を明るみに出すことがねらいです。本展を通じて、仮想と現実の関係、ひいては障害/健常の境界に光が当てられ、新たな視点で日常が見つめ直されることを願います。

Source: http://abtm.jp/blog/323.html (2015/10/27)


企画展

他館や個人コレクター等より作品を借用し、ある一定の期間のみ開催される展覧会。特殊な例として、自館のコレクションの中からテーマ性を持たせて展示した「特集展示」や、「ベスト100」のような「コレクション選」展を、常設展示としては全点出品される機会はないという文脈で、企画展と位置づけることがある

・一般に日本の公立美術館には、常設展示室企画展示室市民ギャラリーの3種類の展示室が設けられている

・他館の常設展示で活用されている作品を借用する場合、展覧会の企画趣旨が借用許可の判断材料となる

美術館の活動方針と連動する企画テーマが立てられる


◆出品作家

01 伊勢田勝行(いせだ かつゆき, 1968年生まれ) 自作アニメ
02 小林一緒(こばやし いつお, 1962年生まれ) 自分が食べた料理の記録
03 高橋重美(たかはし しげみ, 1946年生まれ) 大学ノートに書きためられた夢想世界
04 福島尚(ふくしま ひさし, 1969年生まれ) 切符や路線図などのレプリカ
05 市原えつこ(いちはら えつこ, 1988年生まれ) パノラマ映像ヴュワー
06 幻聴妄想かるた 就労継続支援事業所の通所者たちの体験
07 三浦和香子(みうら わかこ, 1958年生まれ) フェルト製食品サンプル
08 西川正之(にしかわ まさゆき, 1945年生まれ) 立体凧
09 あそどっぐ(1978年生まれ) 自虐コメディー
10 武田憲昌(たけだ のりまさ, 1970年生まれ) 施設職員に関する品々のコレクション
11 会田誠(あいだ まこと, 1965年生まれ) 上野公園でのパフォーマンス
12 百瀬文(ももせ あや, 1988年生まれ) 視力検査のパロディ
13 滝本淳助(たきもと じゅんすけ, 1954年生まれ) 自分が見た夢の記録
14 チンパンジーのアイ(1976年生まれ) チンパンジーが描いた絵


展示作品

鞆の津ミュージアム

1. 伊勢田勝行《怪問 コックリゴ》

2. 市原えつこ《仮想現実の公園デート》

3. 幻聴妄想かるた(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)

4. 武田憲昌「好きな施設職員に関する品々」

5. 武田憲昌「引っ越し祝いの洗剤」「ママちゃんのポーチ」

6. 武田憲昌「最高級品」

7. 武田憲昌「メモ書き」「靴下」

8. あそどっぐ「ヒッチハイク」

9. あそどっぐ「婚活な男」(1)(2)

10. あそどっぐ「達人」

11. あそどっぐ「かんさつ日記」

会場風景(1)(2)

12. 小林一緒「食べたものの記録」(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)

13. 三浦和香子「食品サンプル」

14. 三浦和香子「鍋焼きうどん」

15. 三浦和香子「お子様ランチ」

16. 伊勢田勝行「怪問 シーラー関数」

17. 伊勢田勝行 展示風景(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)

18. 伊勢田勝行《怪問 BEド牛》

19. 会田誠《上野パンタロン日記》 1990年

20. 滝本淳助『滝本夢絵日記』 2015年

21. 滝本淳助《松坂慶子がついてくる》


2. アール・ブリュット

美術用語@ アール・ブリュット

美術用語A アウトサイダー・アート


3. 鞆の津ミュージアム

・極限芸術〜死刑囚の表現〜(2013.4/20〜7/21)

・ヤンキー人類学(2014. 4/26〜7/21) スライド

 ・参考図版:ちっご共道組合+アン・シヒュン《クレイジー・スペシャル(釜山ヴァージョン)》

・花咲くジイさん〜我が道を行く超経験者たち〜(2014. 8/16〜11/16)

・スピリチュアルからこんにちは(2015.4/30〜7/20) スライド

 ◆アクセス 地図

JR福山駅南口「5番」乗り場から「鞆港行き」バスで30分。「鞆の浦」下車。徒歩5分。


4. まとめ

 ・企画展

―美術館(=コレクション):収集方針≒企画テーマ

―地元ゆかりの作家(地域の文化的な記憶)=紹介と顕彰

―回顧展(生誕○○年、没後○○周年)

―地域の美術活動と現代的な(観客にアピールする)テーマ

 ・アウトサイダー・アート

―インサイド/アウトサイドの区分を決めているのは誰か

―美術教育の意義

―美術の評価システム(美術批評、美術市場、美術館、美術史)

―有名性と無名性