ピカソ、天才の秘密


1. 「ピカソ、天才の秘密」展の概要

企画展/巡回展/回顧展 会場写真
会期:2016年1月3日〜3月21日
会場:愛知県美術館
主催:愛知県美術館、中日新聞社
協賛:トヨタ自動車、日本写真印刷
協力:エールフランス航空、KLMオランダ航空、スイス・インターナショナル・エアラインズ、日本航空

 今後の巡回先

・あべのハルカス美術館 4/9〜7/3


章構成

第1章 少年時代|1894-1901年
第2章 青の時代|1901-1904年
第3章 バラ色の時代|1905-1906年
第4章 キュビスムとその後|1907-1920年


様式

・辞書的な語釈では、「文字の書体書き癖から発展した概念」を指す。そこから美術史では、「一群の作品が共有する造形上の特色(以上、『岩波 西洋美術用語辞典』)となる。

・作家の特徴を指す「個人様式」と、特定の時代の作品に共通する「時代様式」がある。また、特定の都市や地域に共通してみられる特徴に対しても「様式」と見なすことがある(cf. 地方様式)

・展覧会では、作品の実物を比較できることから、近い年代に制作された作品同士の細かな違いや、比較的長期にわたる作品群に共通する特徴などを観察できる。

・様式の特徴をよく体現している「基準作」を見つけることがポイントとなる。


2. 出品作品紹介

 第1章 少年時代|1894-1901年

1. パブロ・ピカソ《宝石》、1899-1900年、木炭、鉛筆、水彩・紙、46.3×27.4cm、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

2. パブロ・ピカソ《賢者》、1899-1900年、コンテ・クレヨン・紙、22.8×16.6cm、バルセロナ・ピカソ美術館

3. パブロ・ピカソ《宿屋の前のスペインの男女》、1900年、パステル・厚紙、40×50cm、DIC川村記念美術館

4. パブロ・ピカソ《ロマの女》、1900年、パステル、油彩・厚紙、44.5×59cm、三重県立美術館(三重県企業庁寄託)

5. パブロ・ピカソ《母と子》、1901年、油彩・厚紙、67.5×52cm、ベルン美術館

 第2章 青の時代|1901-1904年

6. パブロ・ピカソ《青い肩かけの女》、1902年、60.3×52.4cm、愛知県美術館

7. パブロ・ピカソ《スープ》、1902年、油彩・カンヴァス、38.5×46cm、アート・ギャラリー・オンタリオ

8. パブロ・ピカソ《海辺の人物》、1903年、油彩・カンヴァス、59.7×49.5cm、スミス・カレッジ美術館

9. パブロ・ピカソ《サバスティア・ジュニェンの肖像》、1903年頃、油彩・カンヴァス、73×60cm、バルセロナ・ピカソ美術館

10. パブロ・ピカソ《貧しき食事》、1904年、エッチング・紙、46.3×37.7cm、個人蔵

 第3章 バラ色の時代|1905-1906年

11. パブロ・ピカソ《サルタンバンク》、1905年、ドライポイント・紙、28.8×32.6cm、池田20世紀美術館

12. パブロ・ピカソ《サロメ》、1905年、ドライポイント・紙、40×34.8cm、池田20世紀美術館

13. パブロ・ピカソ《道化役者と子供》、1905年、グワッシュ、パステル・厚紙、70.5×52cm、国立国際美術館

14. パブロ・ピカソ《扇子を持つ女》、1905年、油彩・カンヴァス、100.3×81cm、ワシントン・ナショナル・ギャラリー

15. パブロ・ピカソ《女と裸の子供》、1905-06年、グワッシュ・紙、64.6×49.9cm、ポーラ美術館

16. パブロ・ピカソ《パンを頭にのせた女》、1906年、油彩・カンヴァス、99.5×69.8cm、フィラデルフィア美術館

17. パブロ・ピカソ《裸の少年》、1906年、油彩・カンヴァス、67×43cm、パリ国立ピカソ美術館

 第4章 キュビスムとその後|1907-1920年

18. パブロ・ピカソ《裸婦》、1909-10年、油彩・カンヴァス、99.1×78.1cm、オルブライト=ノックス・アート・ギャラリー

19. パブロ・ピカソ《ポスターのある風景》、1912年、油彩、エナメル・カンヴァス、46×61cm、国立国際美術館

20. パブロ・ピカソ《読書をするコルセットの女》、1914-17年、油彩、砂・カンヴァス、91.8×59.7cm、トリトン・コレクション財団

21. パブロ・ピカソ《オルガ・ピカソの像》、1918年、油彩・カンヴァス、35.2×27.3cm、メナード美術館

22. パブロ・ピカソ《四人の水浴する女》、1920年、パステル・厚紙、49.5×64.5cm、公益財団法人 ひろしま美術館

23. パブロ・ピカソ《母子像》、1921年、油彩・カンヴァス、101.8×83.5cm、ポーラ美術館

24. パブロ・ピカソ《魚、瓶、コンポート皿(小さなキッチン)、1922年、油彩・カンヴァス、81×99.5cm、群馬県立近代美術館


パブロ・ピカソ(1881-1973)略年譜

1881年 10月25日、スペインのマラガに生まれる 
1900年 19歳 10月、友人カサジェマスとパリ旅行。万博を見学
1901年 20歳 2月、カサジェマスがピストル自殺/カサジェマスの自殺の原因となったジェルメーヌと愛人関係になる/刑務所を訪問、女囚に関心を抱く
1904年 23歳 パリの集合アトリエ「洗濯船」に住み始める/マドレーヌと交際を始める/マドレーヌとの間の子を堕胎/フェルナンド・オリビエと交際を始める
1905年 24歳 サーカス通い。芸人たちとも夜通し交流
1906年 25歳 画商ヴォラール、「バラ色の時代」の作品をまとめ買い。初の経済的成功/エジプト、ギリシア、イベリアなどの古代彫刻に関心を寄せる/《アヴィニョンの娘たち》の素描を開始
1907年 26歳 トロカデロ民族誌博物館でアフリカ彫刻を見て刺激を受ける/セザンヌの回顧展が開催される
1908年 27歳 サロン・ドートンヌでブラックのキュビスム風の作品が展示拒否される/批評家のルイ・ヴォークセルがブラックの作品について「キューヴに還元」と評し、以後「キュビスム」という言葉が浸透/セザンヌへの関心を共有するピカソとブラック、それぞれの制作について緊密な意見交換
1913年 32歳 父ホセ死去
1918年 37歳 オルガと結婚
1921年 40歳 息子パウロ誕生
1922年 41歳 夏、家族3人でディナールに滞在
1924年 43歳 ジャック・ドゥーセが《アヴィニョンの娘たち》購入
1925年 44歳 オルガとの仲が悪化
1927年 46歳 マリー=テレーズ・ワルテルと交際を始める
1935年 54歳 オルガと別居。マリー=テレーズとの間にマリアが生まれる
1936年 55歳 ドラ・マールと交際を始める
1937年 56歳 《ゲルニカ》制作
1943年 62歳 フランソワーズ・ジローと交際を始める
1947年 66歳 フランソワーズとの間に息子クロードが生まれる
1949年 68歳 フランソワーズとの間に娘パロマが生まれる
1954年 73歳 ジャクリーヌ・ロックと交際を始める
1961年 80歳 ジャクリーヌと結婚
1973年 91歳 4月8日、ムージャンの自宅で死去

参照: 小野寺奈津編「年譜」『ピカソ、天才の秘密』展図録(中日新聞社、2016年): 161-171頁。


3. まとめ

 ・様式

―ピカソ作品の変遷とピカソの個人様式

―青の時代〜青を中心とした色使い、貧しい人びと

―バラ色の時代〜肌色やピンク、道化や裸体

―複数の「時代」に共通する母子像のモティーフ

―制作年が同じでも、さまざまな傾向の作品がある

 ・作品の主題

―テーブルの上の食材→満ち足りた家族の生活情景

―直接的なモティーフ(描かれたもの)と作品制作の動機(内的なモティーフ)

―画題(作品のタイトル)と主題(作品の内容)

―「画題から主題へ」が作品鑑賞を深める定石