美学・美術史特殊講義二〇一五


期末試験問題概略告知

一、講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う(但し、第十一講を除く)/○×問題/一〇問/各二点(二〇点)

二、美術館のコレクションについて述べた文章の空欄に適切な用語を選んで文を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/一〇問/各二点(二〇点)

三、巡回展について、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/二〇点

四、 美術展の収益(入場者収入、図録やグッズ等の販売収益など)と企画内容の相関関係について展覧会名等の具体例を挙げて論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/四〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.七(計七〇点)

課題レポート:一〇点

出席:一二回=一二点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点九点)

※最初の一回、および第十一講をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオン・シートの回答等をもとに六〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史特殊講義(後期)試験問題

実施日時 二〇一六年一月二十六日(火)
12時50分〜14時20分(90分)

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)山口県美術展覧会は、今年第七〇回を迎える。

(2)UBAビエンナーレは、炭鉱の町としてすさまじい公害を経験した宇部市民の「緑化運動」と、同市の女性問題対策審議会が取り組んでいた子供の不良化問題を背景に、「子供達に本物の芸術を」という考えのもとに開始された。

(3)神戸ビエンナーレ2015は、コンペティション部門と神戸力発信部門の二部門で開催された。

(4)「障害(仮)」展の企画者は、「頑張る」「純粋」「天才」といった紋切型の障害者像が、健常者中心の考え方であることを自覚することが先ず大切だ、と企画趣旨で述べている。

(5)レオナルド・ダ・ヴィンチの《アンギアーリの戦い》は、ミケランジェロの《カッシナの戦い》と共にフィレンツェ政庁舎の五百人大広間を飾るはずだったが、二作品とも完成されなかった。

(6)フェルメールやレンブラントが活躍した十六世紀のオランダは、絵画の「黄金時代」を迎えたと言われる。

(7)「クレオパトラとエジプトの王妃展」に出品された《死者の花嫁》は、副葬品である。

(8)モネは晩年、夫婦でヴェネツィアを訪れ、ヴェネツィアの風景を主題とした作品を制作した。フランスへ帰国する前に「もっと思い切りのよかった若い頃にここに来ていなかったのが本当に残念でなりません」と述べたという。

(9)ウォーカー・アート・ギャラリーは、十九世紀の後半に同時代の絵画を展示する会場として設立された。

(10)評論家のルイ・ヴォークセルが、ピカソの作品を見て「キューヴに還元している」と批評したことをきっかけに「キュビスム」という言葉が生まれた。

(各二点、計二〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を1〜30の番号で記すこと。

 2015年に開催されたドラッカー・コレクション展や、2016年の現在も巡回中のラファエル前派展、ヴェネツィア展、モネ展などをコレクション展と呼ぶことができる。

 マネジメントの父・ピーター・ドラッカーは、若い頃に雨宿りのつもりで駆け込んだ美術展で日本美術に触れて以来、日本美術に対する憧れを抱き続け、1959年の初来日時に2点の掛軸を購入した。それら2点は江戸時代の作品であったが、彼のコレクションの中核は( A )時代の水墨画である。夫婦でほぼ一年おきに来日し、講演やコンサルティングの仕事の合間に購入を続けて、( B )点以上を収集した。「家の中で共に暮らしたいと感じたもの」を選定基準にしたという。

 「英国の夢―ラファエル前派展」は、( C )国立美術館の所蔵品で構成された美術展である。( C )国立美術館は7つの文化施設の総称で、ラファエル前派展は、そのうちの3つ、ウォーカー・アート・ギャラリー、( D )、サドリー・ハウスの展示作品や収蔵品から借用されたものである。( D )のコレクションは、石鹸販売用の広告素材としての絵画購入から始まったが、後に定評のある有名画家の作品を購入するようになった。

 名古屋( E )美術館で開催中の「ヴェネツィア展」は、アメリカ合衆国の( E )美術館が所蔵する絵画や版画、ガラス工芸、ドレスや服飾品、写真等で構成されている。名古屋( E )美術館は、( E )美術館の姉妹館としてバブル崩壊前の1991年に計画され、1999年に開館した。その後、( F )の廃止と復活、運営契約の見直しなどの紆余曲折を経て、現在もさまざまな改善の努力が続けられているが、開館二〇周年を迎える2019年3月に契約期間の満了日を迎える予定となっている。

 「マルモッタン・モネ美術館所蔵―モネ展」は、二つのコレクションから成る。有名な《印象―日ノ出》が含まれるのは、( G )・コレクション。モネが十代の頃に描いたカリカチュアや、( H )が描いた《クロード・モネ夫人の肖像》などが含まれるのは、モネの次男ミシェル・モネから遺贈されたコレクションである。

 美術館のコレクションは、購入や寄贈、遺贈などによって豊かになっていく。山口県立美術館の建設計画の契機となったのは、香月泰男の「( I )・シリーズ」が県に一括寄贈されたことであった。また、同美術館では、日本戦後( J )史の検証を軸に、昭和二〇年から五〇年までの三〇年間を、一〇年ごとに区切って三回の企画展を開催し、出品作品を収蔵していった。こうした、企画展のテーマと美術館の収集方針との連動は、美術館活動の理想像の一つである。

 

(1)百  (2)二百  (3)三百  (4)絵画  (5)工芸  (6)写真  (7)鎌倉  
(8)室町  (9)桃山  (10)学芸部  (11)教育普及部  (12)ミュージアム・ショップ  
(13)ナホトカ  (14)ハルピン  (15)シベリア  (16)ボストン  (17)ヒューストン  
(18)チャールストン  (19)オックスフォード  (20)マンチェスター  (21)リバプール  
(22)スミス・カレッジ美術館  (23)レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー  
(24)オルブライト=ノックス・アート・ギャラリー  (25)ヨハン・バルトルト・ヨンキント  
(26)ジョルジュ・ド・ペリオ  (27)ウジェーヌ・ドラクロワ  (28)ポール・シニャック  
(29)ポール・ポーラン  (30)ピエール=オーギュスト・ルノワール 

 

(二〇点)

三、企画展について、次の五つの単語を適切に用いて論述せよ(字数制限なし)

企画展     常設展     海外コレクション     共通経費     実行委員会

 

(四〇点)

四、美術展の収益(入場者収入、図録やグッズ等の販売収益など)と企画内容の相関関係について展覧会名等の具体例を挙げて論述せよ(字数制限なし)

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一、二の解答