美学・美術史概論W 二〇一六


期末試験問題概略告知

一、 講義で紹介した美術家について、ヴァザーリの記述に即して基礎的な知識を問う。/○×問題/一五問/各二点(三〇点)

二、講義で紹介した美術用語について基礎的な理解を問う。/○×問題/一 五問/各二点(三〇点)

三、ヴァザーリが描き出したイタリア・ルネサンスの芸術家たちには、どのような特色が見られるか。 ヴァザーリ自身の芸術観と私たちの時代の芸術観との相違点に留意しながら論じなさい。/論述問題・課題あり/字数制限なし/ 四〇点


成績評価方法

試験:一〇〇点満点×〇.八(計八〇点)

出席:一二回=一二点(欠席毎マイナス一点 例:欠席三回=出席点九点)

※最初の一回をカウントしない

授業態度等の調整点:全回出席者にプラス二点

そのほか授業への参加度をオピニオンシートの回答等をもとに六〜一〇点の範囲で加算


美学・美術史概論W試験問題

実施日時 二〇一六年七月二十五日(月)
10時20分〜11時50分(90分)

 

(各二点、計三〇点)

一、次に示される(1)〜(15)の短文のうち、ヴァザーリの記述に即して正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

(1)チマブーエは、古代ギリシアの良き様式を手本にして、遠近法を開拓し、初期ルネサンスを開花させた。

(2)ジョットは、チマブーエに師事するとたちまちに師の手法を体得したため、ジョットの絵がチマブーエの作品と取り違えられることもあった。

(3)ウッチェルロは、自信作をドナテルロにけなされて意気阻喪して以来、家に閉じこもってしまい、不遇のうちに亡くなった。

(4)マザッチョは、視点をどこに据えてもちゃんと遠近感が出るような前人未踏の前縮法技巧に到達し、後世の画家に大きな影響を与えた。

(5)ピエーロ・デルラ・ フランチェスカは、ウルビーノ大公グイドバルド・モンテフェルトロに仕えて多くの作品を制作したが、その大部分は戦乱によって損なわれてしまった。

(6)フラ・アンジェリコは、世俗の世界で何不自由なく暮らせるほどの資産を所有していたが、心の安らぎと魂の救済を求めて修道生活に入った。

(7)フィリッポ・リッピは、色欲にとらわれやすいたちの画家で、そうした場合に、作品制作がまったく手に着かなくなることがたびたびあった。

(8)ジョヴァンニ・ベルリーニが肖像画を数多く手掛けたことは、ヴェネツィアの人びとが一族の肖像を屋敷に飾る風習の口火となった。

(9)ボッティチェルリ作《マギの礼拝》の第一の老王は、コージモ・ヴェッキオの肖像として描かれている。

(10)マンテーニャは、古代ギリシアの画家アペレスにも比肩しうる巨匠として大いに賞讃された。

(11)レオナルド・ダ・ヴィンチは、ミラノ公に招かれた際、金色の山羊の頭蓋骨の形をした自作の楽器を奏でて、人びとを驚かせた。

(12)ジョルジョーネは、恋人を介してペストに感染し、二十四歳の若さで亡くなった。

(13)ラファエルロは、《アテネの学堂》の中央に、議論するソクラテスとアリストテレスとして、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの肖像を描いた。

(14)ミケランジェロは孤独を愛していたが、都合のよいときには、多くの偉大な学者や、才能のある人々と交わった。

(15)ティツィアーノが描いた《ディアナ》や《エウロペ》の作品は、当時、カトリック王の手もとにあり、非常に高く評価されていた。

 

 

(各二点、計三〇点)

二、次に示される(ア)〜(ソ)の説明に適合する美術用語を、のちに記されている(a)〜(z)から選んで解答用紙の各欄に記せ。

(ア)聖母マリアが大天使ガブリエルに神の子を身ごもったことを告げられる場面。

(イ)占星術にたけた三人の賢者が、星の導きによって、降誕したイエスの馬小屋に達する場面。聖母子の前に三人はひれ伏し、黄金、乳香、没薬を贈った。

(ウ)人類の祖であるアダムとエヴァが犯した、神の言いつけに背いて知恵の実を食べた罪。

(エ)この世の終わりの日に、地上に再臨したキリストが、生者および蘇った死者たちを審判して天国と地獄に振り分ける場面。

(オ)イザヤ、エレミヤ、エゼキエル、ダニエルなど、旧約聖書に登場する、神のメッセージを人間に伝えるために選ばれた者。

(カ)旧約聖書の人物・事象に新約の人物・事象との共通性を認め、前者を後者の予告と考えるキリスト教神学思想。

(キ)知略をもって敵将ホロフェルネスを誘惑し、その首をはねてユダヤを救った寡婦。

(ク)古代ギリシアの美と愛と豊饒の女神。

(ケ)古代ローマやルネサンス美術に現われる裸体の幼児像。

(コ)ルネサンスおよび十八世紀に活躍した画家たちの総称。鮮やかな色彩と享楽的な主題解釈を特徴とする。

(サ)ある作品が誰の手になるかという意味。あるいは、人物(多くの場合聖人)を同定する標識となる小道具的なモティーフのこと。

(シ)聖なる人物の頭の周囲に円を描き、絵画であれば金に塗ることによって、その人物の聖性を記号的に表現するもの。

(ス)抽象概念や思想を、人物を中心とするイメージの組み合わせによって表現する方法。

(セ)ヴァザーリらが用いる十六世紀の美術批評用語としては、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロに代表される優雅で洗練された様式を指す。

(ソ)「像」と「説明、解釈する」という意味のギリシア語に由来する。二十世紀初頭にアビ・ヴァールブルクによって提唱され、エルヴィン・パノフスキーによって体系化された美術史上の方法論。

(a)アトリビュート  (b)アフロディテ  (c)アレゴリー  (d)イコノグラフィー  
(e)イコノロジー  (f)ヴェネツィア派  (g)遠近法  (h)クアトロチェント  (i)原罪  
(j)最後の審判  (k)サロメ  (l)三美神  (m)三位一体  (n)受胎告知  (o)スフマート  
(p)タイポロジー  (q)天地創造  (r)ニンブス  (s)パラゴーネ  (t)フィレンツェ派  
(u)プット  (v)マギの礼拝  (w)マニエラ  (x)ムーサ  (y)ユディト  (z)預言者

 

 

(四〇点)

三、ヴァザーリが描き出したイタリア・ルネサンスの芸術家たちには、どのような特色が見られるか。 ヴァザーリ自身の芸術観と私たちの時代の芸術観との相違点に留意しながら論じなさい。

 

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一、二の解答