<第五講>コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2012


1.ヨコハマトリエンナーレ報告書

リヤス・コム(Riyas Komu):コーチ・ビエンナーレ財団共同創設者、コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2014プログラム・ディレクター

“コーチ=ムジリス・ビエンナーレはさまざまな意味で、我が国の文化遺産や過去について多くの人々が無関心であることへの挑戦でした。コーチにおける過去の、そして現在の体験に根差した国際性と近代性の新たな言語を生み出そうとしており、視覚芸術を通じてあいまいな概念的アイデアを提示するのではなく、人間の想像力が何世紀にもわたる隔たりを乗り越えて羽ばたくことのできる現実の空間を目指しているのです。”(p.11) 〈スライド

“私たちが行った重要なことの一つに、コーチ=ムジリス・ビエンナーレ全体をオンラインでも見られるようにしたことがあります。このビエンナーレはデジタル的にアーカイブされた初のビエンナーレです。つまり、今日、ここにいる誰かがコーチ=ムジリス・ビエンナーレ訪問体験の一つのバージョンとしてオンラインで見ることができるというわけです。アーカイブ化はGoogleアートプロジェクトがおこないました。”(p.11) 〈スライド


2.コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2012

Kochi Muziris Biennale 2012 on the Google Art Project 〈スライド

http://www.kochimuzirisbiennale.org/kochi-muziris-biennale-2012-on-the-google-art-project/


コチ

日本→コーチン国際空港(ケーララ州) 〈スライド
福岡発、シンガポール経由
シンガポール航空:往復109,410円(航空券代金77,000円)/総移動時間15時間20分

2016/6/1出発、DeNA TRAVEL調べ

“実際、コーチは“アラビア海の女王”として知られ、いつの時代にも香辛料貿易の中心地でした。現在のコーチには600年以上の歴史があり、以前から世界のさまざまな地域と貿易関係をもっていました。しかし、ビエンナーレの非常に重要な要素はコーチだけでなく、コーチよりもさらに古い歴史をもつ伝説的な都市、ムジリスがあります。ムジリスは古代の港湾都市で3000年以上の歴史があり、かつてはローマ人、ギリシャ人、アラビア人、中国人と貿易していました。ムジリスがそのような貿易関係を通じて学んだのは、通商の価値だけではなく、新しいアイディアや異文化について知ることでコミュニティを作り上げることの価値でした。事実、私たちが胸を張って言えることですが、我が国は3000年前にすでにグローバル化していました。ですからコーチ=ムジリス・ビエンナーレは、この大いなる歴史と、悠久の時代から世界を理解していたという文脈から生まれてきたのです。
 14世紀に洪水があり、ムジリスは水沈してしまい、コーチが出現しました。ですから、その新都市にはまったく異質で強烈な国際的かつ多文化的な性質がありました。”

ヨコハマトリエンナーレ報告書 p.10


3.KMB2012 / Google Art Project 〈スライド

01 アスピンウォール・ハウス、フォート・コーチ(Aspinwall House, Fort Kochi)

02 デイヴィッド・ホール、フォート・コーチ、ケーララ(David Hall, Fort Kochi, Kerala)

03 カシ・アート・カフェ(Kashi Art Café)

04 ローズ・ストリート・バンガロー(Rose Street Bungalow)

05 ペッパー・ハウス(Pepper House)

06 ダーバー・ホール・アート・ギャラリー(Durbar Hall Art Gallery)

07 モイドゥズ・ヘリテージ(Moidu’s Heritage)

08 コーチン・クラブ(Cochin Club)

09 カブラル・ヤード(Cabral Yard)

10 カルヴァシー・ジェッティ(Calvathy Jetty)

11 ダッチ・ウェアハウス(Dutch Warehouse)


“第1回コーチ=ムジリス・ビエンナーレには23か国から89名の作家が参加し、114の作品が展示されました。香辛料の貿易やほかの活動に使われていた古い倉庫など14か所が会場となりました。”

“これは、2012年のビエンナーレでは作品の74%がサイトスペシフィックで、作家たちがコーチの文化、政治、歴史、神話、物語、人びとに直に触れて創り出したものだという事実を考えると良く分かります。

ヨコハマトリエンナーレ報告書p.11

※サイト・スペシフィック:「場の特性」という意味。アース・アートやインスタレーションで、作品が設置される特定の場所が、作品に対して何らかの積極的な意味を持つこと。(『岩波 西洋美術用語辞典』p.129)


内覧会ではまだ4割が作業中 〈スライド

“プレスコンファレンスの日は一応内覧会にもかかわらず、作品はまだ60%くらいしか完成しておらず、がんがんに作業中。翌日の展覧会オープンには70%、翌日は80%、と毎日変わっていき、それに合わせて作家リスト、会場マップ、と一日1つずつできていくので、何度も会場に足を運ばなくちゃいけなくて、ただでさえ風邪でふらふらなのに相当ぐるぐるさせられました。”

art blog VOID CHICKEN DAYS オキュパイしてけろ!「インド初のビエンナーレ、Kochi-Muziris Biennale〜その2〜」(http://voidchicke.exblog.jp/19664255)より


4.国際美術展とアーカイヴ

・ヨコハマトリエンナーレ 〈スライド
 http://www.yokohamatriennale.jp/archive/

・ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展
 1895年展覧会創設
 1928年アーカイヴ設置 〈スライド
 http://www.labiennale.org/it/asac/index.html

・ドクメンタ
 1955年展覧会創設
 1961年アーカイヴ設置 〈スライド
 http://www.documentaarchiv.de/home.html

・周期展の存在意義:M. ロシェ『メガ・イベントの近代性』(第三講 参照)


5.まとめ

 ・コーチ=ムジリス・ビエンナーレ

―3000年前からグローバル化していた伝説的な港湾都市
―異文化交流とコミュニティ形成(≒街おこし)
―その土地の歴史や文化と関わりの深いサイト・スペシフィックな作品群

 ・国際美術展とアーカイヴ

―コーチ=ムジリス・ビエンナーレ:展覧会風景のアーカイヴ
―ヨコハマトリエンナーレ:基本データと開催報告書等
―ヴェネツィア・ビエンナーレとドクメンタ:展覧会図録や関係資料→現代芸術の研究機関