<第六講>瀬戸内国際芸術祭


1.瀬戸内国際芸術祭2016 スライド

・春:3/20(日・春分の日)〜4/17(日) 29日間
・夏:7/18(月・海の日) 〜 9/4(日) 49日間
・秋:10/8(土) 〜 11/6(日) 30日間

・合計108日間

・開催地:直島 / 豊島 / 女木島 / 男木島 / 小豆島 / 大島 / 犬島
    沙弥島(春のみ)
    本島(秋のみ) / 高見島(秋のみ)/粟島(秋のみ) / 伊吹島(秋のみ)
    高松港・宇野港周辺 スライド1〉〈2

・主催:瀬戸内国際芸術祭実行委員会
・会長:浜田恵造(香川県知事)
・名誉会長:真鍋武紀(前香川県知事)
・副会長:竹ア克彦(香川県商工会議所連合会会長)、大西秀人(高松市長)
・総合プロデューサー:福武總一郎(公益財団法人福武財団理事長)
・総合ディレクター:北川フラム(アートディレクター)


海の復権 スライド

 古来より交通の大動脈として重要な役割を果たしてきた瀬戸内海。行き交う船は島々に立ち寄り、常に新しい文化や様式を伝えてきました。それらは、個々の島々の固有の文化とつながり、育まれ、美しい景観とともに伝統的な風習として今に残されています。
 今、世界のグローバル化・効率化・均質化の流れの中で、島々の人口は減少し、高齢化が進み、地域の活力の低下によって、島の固有性は失われつつあります。
 私たちは、美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の 『希望の海』 となることを目指し、瀬戸内国際芸術祭を開催します。

Source: http://setouchi-artfest.jp/about/ (2016/5/30)


2.瀬戸内国際芸術祭2010 スライド

・会期:7月19日(海の日)〜10月31日 ※調査日8月16〜18日
・会場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港周辺
・コンセプト:海の復権、島×生活×アート
・参加作家:18の国と地域から75組のアーティスト、プロジェクト、16 のイベント

※…継続作品 ◆…H23以降は未定(『瀬戸内国際芸術祭2010総括報告書』pp.4-8)

 ◆1日目:宇野→豊島→高松

  ・宇野港

JR宇野駅
1. 淀川テクニック《宇野のチヌ》(1)(2)(3)(4)(5) 
小豆島フェリー「せとしお」
瀬戸内の景色(1)(2)(3)(4)(5)(6)

   ・豊島

唐櫃港
2. ジョゼ・デ・ギマランイス(ポルトガル)《フラワー/ハッピースネーク》 
3. 森万里子《トムナフーリ》  
バス停:森万里子作品前
4. トビアス・レーベルガー(ドイツ)《あなたが愛するものは、あなたを泣かせもする(日本フランチャイズバージョン)》(1)(2)(3)(4) 
家浦港でみた空
豊島フェリー高速旅客船「まりんなつ1号」


 ◆2日目:高松→直島

四国汽船「あさひ」

  ・直島

地中美術館チケットセンター
地中美術館
5. 草間彌生《南瓜》(1)(2) 
6. ニキ・ド・サンファル(フランス)《猫》 
ベネッセハウス テラスレストラン
7. テレジータ・フェルナンデス(USA)《ブラインド・ブルー・ランドスケープ》(1)(2) 
ベネッセハウス ミュージアム
瀬戸大橋遠望
8. 大竹伸朗+graf《直島銭湯「I♥ 湯」》(1)(2)(3)(4) 
9. 草間彌生《赤かぼちゃ》(1)(2) 
瀬戸内の景色(1)(2)

高松港
高松シンボルタワーからの眺め


 ◆3日目:高松→女木島→男木島

  ・女木島

鬼ヶ島おにの館
鬼ヶ島大洞窟直行バス
鬼ヶ島大洞窟入口
10. サンジャ・サソ(ドイツ/クロアチア)《鬼合戦、あるいは裸の桃の勝利》(1)(2) 
鷲ヶ峰展望台付近からの眺め
福武ハウス2010
ボエス=リ・ギャラリー
12. エンライトメント《ラスト・カフェ》
13. レアンドロ・エルリッヒ(アルゼンチン)「不在の存在」プロジェクト 
レストラン・イアラ女木島のパエリア
14. 行武治美《均衡》(1)(2) 
15. 愛知県立芸術大学アートプロジェクトチーム《愛知芸大・瀬戸内アートプロジェクト》(1)(2) 
雌雄島海運「めおん」

  ・男木島

男木港
16. ジャウメ・プレンサ(スペイン)「男木交流館」(1)(2) 
男木港周辺
17. 大岩オスカール《大岩島》
18. 眞壁陸二《男木島 路地壁画プロジェクト》 
19. 中西中井《海と空と石垣の街》(1)(2)
20. 谷山恭子《雨の路地》(1)(2)(3)
21. 北山善夫《誕生―産殿―性―死―墓―男木島伝説》(1)(2)(3)(4)


瀬戸内国際シンポジウム2010:ほんとうの豊かさとは何だろう〜21世紀文明の再定義〜 スライド

日程:2010年8月6日(金)、7日(土)、8日(日)
会場:香川県直島、豊島、小豆島、高松市、岡山県犬島
主催:瀬戸内国際シンポジウム実行委員会、財団法人文化・芸術による福武地域振興財団

第1日:基調講演/基調シンポジウム
第2日:分科会
  直島〈アート〉:地域の未来をアートがひらく
  犬島〈海〉:里海から多島海へ
  豊島〈食〉:“食”と“農”―地域の新しい豊かな生き方
  小豆島〈ツーリズム〉:ツーリズムの可能性
第3日:総括シンポジウム(分科会報告/総括討議)

・北川フラム「ゆっくり歩けば、よく見える」

・カトリーヌ・グルー「多様な可能性に対しオープンであり続ける姿勢を持続すること」

・ヴィト・アコンチ「第1に、誰もが長生きできること。2つ目には、お金の心配をしなくてもよいということ。そして3つ目は、戦争のない世界です。」

・山出淳也「『豊かさ』は日常の中にある。ありふれた当り前のことが重要になっていく」

・森谷裕美子「それぞれの地域に暮らす人々が自分の文化に誇りを持ち、生きがいをもって生きること」

・シンティア・ネリ・ヤザス「『心地のよい人生・生活』の私のイメージは、午後、ハンモックに揺られながら昼寝をすることです。」

・清水博「自分が地球のために働いて、地球を豊かにして、地球からも受け取る」


北川フラム『希望の美術・協働の夢』

“20世紀は都市の時代だった。それゆえ、美術も都市の美術だった。しかし都市が病み、痛むにつれて、美術も病み、その病状を報告するようになってしまった。美術は、自らの病状を語ることによって、弱いささやかなものと呼応するのだが、その非力さは覆うべくもない。しかしこの文明のなかにあって、ささやかさはひとつの希望でもある。自然の、生理の、人間の震え……。
  東京で日々開かれている「大地の芸術祭」の部会を、一度覗いてみればよい。どうして人々は遠く離れた場所のために、これだけ一生懸命になれるのだろうかと不思議に思うことだろう。地域[この場合、越後妻有]は、そこに通う都会人や若者にとって、自らの再生にとって必要な場所なのだ。それはまた、越後妻有の人々にも、わずかずつであるが伝わっていき、人々を元気づけ、動かしていく。”

北川フラム『希望の美術・協働の夢―北川フラムの40年 1965-2004』(角川学芸出版、2005年)、10頁。


福武總一郎「瀬戸内国際芸術祭を終えて」

“我が国における「近代化」は「都市化」です。東京に代表される大都会は物があふれた魅力的な空間ですが、過度な欲望と競争の渦であり、そこに住む人々は「自己実現」と称し、他人よりも多くの幸せを得ようと努力します。大量生産と大量販売、過度な物質的豊かさや娯楽や情報は果たして本当に人を幸せにしているのでしょうか。
 瀬戸内海の島々には、「近代化」や高度成長に伴う負の遺産を背負わされてきたという歴史的背景を持ちながらも、脈々と受け継がれてきた島固有の文化や歴史、日本の原風景とも呼ぶべき美しい風景が残されています。芸術祭においては、アーティストがそれらの独自の風景を生かした、そこでしか表現できない作品を展開することで新しい価値を生み出します。そして、島外の人たちは作品に出合うため、海を渡って島々を巡り、ゆっくりと時間を過ごす――こうした動きが島の人との交流を生み、よいコミュニティが形成され、ひいては、島のお年寄りの方々が誇りを取り戻し、生き生きとしてくるのです。”

『瀬戸内国際芸術祭2013』(美術出版社、2014年)、18-19頁。


北川フラム「瀬戸内国際芸術祭の目的と現状、そして役割」

 ・瀬戸内海を地球環境時代における希望の場所にする

“アート作品といっても、それは社会的、政治的な時代精神と深い関わりをもっているし、多くの場合、それへの疑問、将来への不安を内に秘めている。作品の根本にあるのは人間一人ひとりの五感をひらくものであるからだ。地球環境への展望は暗い。頑張っている組織は人は多いがなかなかうまくいっていない。第三世界の空気を買って責任を逃れるという何ら本質的でない手段がまかり通っているし、市場原理主義によって資本主義はその倫理性を失ってしまったかに見える。日本の国も将来のビジョンが見えない。都市偏重と地域の落差、貧富の差、地方切り捨て、マスコミによる世論の迎合的操作。こうした近代化と合理化によって省みられることのなくなった地域固有の地形と気象と食事は生活文化の深層に深く降りている。この列島にやって来た祖先に思いを馳せれば植民地主義的、記号・情報・市場などのグローバリゼーションではない、フェイス・トゥ・フェイスでつながる方法を考えなくてはいけなくなっている。”

『瀬戸内国際芸術祭2013』(美術出版社、2014年)、20-25頁。


3.まとめ

 ・アート・フィールドのアーカイヴ化

―サイト・スペシフィックな作品の設置と維持
―3年に1回のペースで作品が増加
―恒久設置と時限的展示の組み合わせ
―再訪による作品鑑賞体験の「上書き」

 ・ほんとうの豊かさ

―都会の豊かさ/地方の豊かさ
―自然、食、人びととの交流やつながり
―フェイス・トゥ・フェイス