<第二講>ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の歴史


1.日本館

ヴェネツィア本島の東端にあるジャルディーニ
約30の国別パヴィリオン
イギリス館へ通じる並木道


 ◆ジャルディーニの各国館建設の歴史

1895 美術宮(1)建設
 …
1907 ベルギー館(2)建設
1909 ハンガリー館(3)、イギリス館(4)、バイエルン館(5)建設
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1912 フランス館(6)、スウェーデン館(7)建設
1914 ロシア館(8)建設
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1922 スペイン館(9)建設
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1926 チェコスロバキア館(10)建設
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1930 アメリカ館(11)建設
1932 デンマーク館(12)、ヴェネツィア工芸館(13)建設。同館両脇にスイス館(14)、ポーランド館(15)開館
1934 オーストリア館(16)、ギリシア館(17)建設
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1938 工芸館両翼を拡張してユーゴスラビア館(18)、ルーマニア館(19)開館
 …
1952 新スイス館(20)、イスラエル館(21)建設
1954 ベネズエラ館(22)建設
1956 フィンランド館(23)、日本館(24)建設
1958 カナダ館(25)、ウルグアイ館(26)建設
 …
1962 北欧館(27)建設
1964 ブラジル館(28)建設
 …
1988 オーストラリア館(29)建設
 …
1995 韓国館(30)建設


・日本館:塩田千春《掌の鍵》(1), (2) 2015年

・日本館:田中功起「抽象的に話すこと―不確かなものの共有とコレクティヴ・アクト」 2013年

1. 田中功起《公衆への絵画》 2012年

ヴェネチア・ビエンナーレ日本館 1階平面図 1983年(再制作)/正方形のプランに、風車状に配置された4枚の仕切り壁

吉阪隆正(1917-1980)
1950年、第1回フランス政府給付留学生として渡仏。ル・コルビュジエのアトリエに勤務。1959年、早稲田大学教授。1973年、日本建築学会会長。

「吉阪の設計はあたえられた小さな丘地を生かして、高さ3メートルのピロティを彫刻室とし、その上に立方体の絵画室をのぞかせている。外壁は大理石の粉と石灰をまぜたマルモリーノで、ちょうど漆喰のように白堊の壁面が上下一筋ずつ黒い縁でくぎられる。内部はガラス天井の下に太い木の梁が縦横に走って、やわらかい自然光が存分に入り、4つのコンクリート梯形のつきでた衝立で壁面は4つにくぎられ、床は人造大理石で白黒の帯状を描き、その中央にピロティをみおろす大きな方形の穴があけられ、低い大理石の手すりに囲まれている。この箱型白堊のピロティつき建物が木立を背景に浮び、…(中略)…十分日本的特徴を発揮している。だが、上層の壁はつきだした4つの衝立にくぎられながら、中央に大きな穴があって別々の部屋に仕切ることができず、床の文様は色がつよすぎるし、ピロティの部分は暗すぎて、いずれも展示のためには不便さが残る(わたしは1968年、コミッショナーになったとき、設計者吉阪隆正が了解すれば改修してもいいという国際文化振興会の意向をうけて吉阪と交渉したが、「要するに、建築に敗けない作品を出せばいいのではないか」と、一蹴されてしまった)。」

針生一郎「ヴェネチア・ビエンナーレを通して見る日本の美術―1952-68年」『ヴェネチア・ビエンナーレ―日本参加の40年』(国際交流基金ほか、1995年)、17-18頁。

・「ヘテロトピア」展 未活用の1Fピロティ部分

・石内都「Mother's」展示風景 液晶ディスプレイ設置(1), (2)

・岡部昌生「わたしたちの過去に、未来はあるのか」展示風景 中央の開口部を完全に塞ぐ

・田中功起「抽象的に話すこと」展示風景 雑然とした中に紛れさせる

・やなぎみわ「老少女劇団」展示風景 4つの衝立の活用例


2.コミッショナー/キュレーター

逆さにすれば、森―Turned Upside Down, It's a Forest ―:岩崎貴宏と鷲田めるろ

・コミッショナーとは…

ヴェネツィア・ビエンナーレの国別展示部門における各国館の展示責任者。
美術評論家や学芸員(キュレーター)が務める。

cf. コミッショナー【commissioner】プロ野球・ボクシングなどで、その統制をとる最高権威者。

(『広辞苑』第六版、1055頁)


 ◆歴代の参加作家とコミッショナー/キュレーター

2017 岩崎貴宏「逆さにすれば、森」/鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター)
2015 塩田千春「掌の鍵」/中野仁詞(神奈川芸術文化財団学芸員)
2013 田中功起「抽象的に話すこと―不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」/蔵屋美香(東京国立近代美術館美術課長)
2011 束芋「てれこスープ」/植松由佳(国立国際美術館主任研究員)
2009 やなぎみわ「老少女劇団」/南嶌宏 (美術評論家・女子美術大学教授)
2007 岡部昌生「わたしたちの過去に、未来はあるのか」/港千尋(写真家・多摩美術大学教授)
2005 石内都「Mother’s」/笠原美智子(東京都現代美術館学芸員)
2003 曽根裕、小谷元彦「ヘテロトピア」/長谷川祐子氏(金沢21世紀美術館建設事務局学芸課長)
2001 畠山直哉、中村政人、藤本由起夫「ファースト&スロウ」/逢坂恵理子(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
1999 宮島達男、「時の蘇生」柿の木プロジェクト実行委員会/塩田純一(東京都現代美術館学芸部長)
1997 内藤礼/南條史生(美術評論家)
1995 日比野克彦、河口洋一郎、崔在銀、千住博/伊東順二(美術評論家)
1993 草間彌生/建畠晢(美術評論家・多摩美術大学助教授)
1990 遠藤利克、村岡三郎/建畠晢(美術評論家・国立国際美術館主任研究官)
1988 戸谷成雄、植松奎二、舟越桂 /酒井忠康(美術評論家)
1986 若林奮、眞坂雅文 / 酒井忠康(美術評論家)
1984 伊藤公象、田窪恭治、堀浩哉/たにあらた(美術評論家)
1982 彦坂尚嘉、北山善夫、川俣正/たにあらた(美術評論家)
1980 榎倉康二、小清水漸、若林奮/岡田隆彦(美術評論家)
1978 榎倉康二、菅木志雄/中原佑介(美術評論家)
1976 篠山紀信/中原佑介(美術評論家)
1972 宇佐美圭司、田中信太郎/東野芳明(美術評論家)
1970 荒川修作、関根伸夫/東野芳明(美術評論家)
1968 三木富雄、菅井汲、高松次郎、山口勝弘/針生一郎(美術評論家)
1966 オノサト・トシノブ、池田満寿夫、篠田守男、靉嘔/久保貞次郎(美術評論家)
1964 斎藤義重、オノサト・トシノブ、堂本尚郎、豊福知徳/嘉門安雄(美術評論家)
1962 江見絹子、川端実、菅井汲、杉全直、向井良吉/今泉篤男(美術評論家)
1960 今井俊満、斎藤義重、佐藤敬、山口薫、小野忠弘、豊福知徳、柳原義達、浜口陽三/富永惣一(美術評論家)
1958 福沢一郎、川端龍子、前田青邨、岡田謙三、木内克、辻晋堂/瀧口修造(美術評論家・詩人)
1956 須田国太郎、脇田和、山口長男、植木茂、山本豊市、棟方志功/石橋正二郎(ブリヂストンタイヤ代表取締役)、富永惣一(美術評論家)、伊原宇三郎(洋画家)
1954 坂本繁二郎、岡本太郎/土方定一(美術評論家)
1952 横山大観、小林古径、鏑木清方、福田平八郎、山本丘人、吉岡堅二、安井曽太郎、徳岡神泉、梅原龍三郎、福沢一郎、川口軌外/梅原龍三郎(洋画家)


3.展示作品 1952-2015

 ◆第2回展(1897年) 〈スライド

2. 荒木寛畝《秋草野雉圖》/3. 鈴木松年《雪中枯木鳶豆圖》/4. 久保田桃水《游鯉図》

『ヴェネチア・ビエンナーレ 日本参加の40年』(国際交流基金ほか、1995年)

 ◆1950年代 〈スライド

1952 横山大観、小林古径、鏑木清方、福田平八郎、山本丘人、吉岡堅二、安井曽太郎、徳岡神泉、梅原龍三郎、福沢一郎、川口軌外
1954 坂本繁二郎、岡本太郎
1956 須田国太郎、脇田和、山口長男、植木茂、山本豊市、棟方志功
1958 福沢一郎、川端龍子、前田青邨、岡田謙三、木内克、辻晋堂

 ◆1960年代 〈スライド

1960 今井俊満、斎藤義重、佐藤敬、山口薫、小野忠弘、豊福知徳、柳原義達、浜口陽三
1962 江見絹子、川端実、菅井汲、杉全直、向井良吉
1964 斎藤義重、オノサト・トシノブ、堂本尚郎、豊福知徳
1966 オノサト・トシノブ、池田満寿夫、篠田守男、靉嘔
1968 三木富雄、菅井汲、高松次郎、山口勝弘

 ◆1970年代 〈スライド

1970 荒川修作、関根伸夫
1972 宇佐美圭司、田中信太郎
(1974:休止)
1976 篠山紀信
1978 榎倉康二、菅木志雄

 ◆1980年代 〈スライド

1980 榎倉康二、小清水漸、若林奮
1982 彦坂尚嘉、北山善夫、川俣正
1984 伊藤公象、田窪恭治、堀浩哉
1986 若林奮、眞坂雅文
1988 戸谷成雄、植松奎二、舟越桂

 ◆1990年代 〈スライド

1990 遠藤利克、村岡三郎
1993 草間彌生
1995 日比野克彦、河口洋一郎、崔在銀、千住博
1997 内藤礼
1999 宮島達男、「時の蘇生」柿の木プロジェクト実行委員会

 ◆2000年代 〈スライド

2001 畠山直哉、中村政人、藤本由起夫「ファースト&スロウ」
2003 曽根裕、小谷元彦「ヘテロトピア」
2005 石内都「Mother's」
2007 岡部昌生「わたしたちの過去に、未来はあるのか」
2009 やなぎみわ「老少女劇団」

 ◆2010年代 〈スライド

2011 束芋「てれこスープ」
2013 田中功起「抽象的に話すこと」
2015 塩田千春「掌の鍵」
2017 岩崎貴宏「逆さにすれば、森」


4−1. ヘテロトピア(2003年)―曽根裕/小谷元彦

・「ヘテロトピア」展示風景/曽根裕(1), (2)
・「ヘテロトピア」展示風景/小谷元彦(1), (2), (3), (4)

4−2. Mother’s(2005年)―石内都

石内都「Mother's」展示風景(1), (2), (3), (4)

4−3. わたしたちの過去に未来にはあるのか?(2007年)―岡部昌生

岡部昌生「わたしたちの過去に、未来はあるのか」展示風景(1), (2), (3), (4), (5), (6)

4−4. 老少女劇団(2009年)―やなぎみわ

改装前の日本館(1), (2), (3)
やなぎみわ「老少女劇団」展示風景(1), (2), (3), (4), (5), (6)

4−5. てれこスープ(2011年)―束芋

改装後の日本館
束芋《てれこスープ》展示風景(1), (2), (3), (4), (5), (6), (7)

4−6. 抽象的に話すこと―不確かなものの共有とコレクティブ・アクト(2013年)―田中功起

5. 田中功起《9人の美容師でひとりの髪を切る》 2010年
6. 田中功起《ひとつの陶器を5名の陶芸家でつくる》 2013年
田中功起「抽象的に話すこと」展示風景
日本館入口
2012年の建築ビエンナーレ「ここに、建築は、可能か」(金獅子賞受賞)

4−7. 掌の鍵(2015年)―塩田千春

塩田千春《掌の鍵》(1), (2), (3), (4)

4−8. 逆さにすれば、森(2017年)―岩崎貴宏

7. 岩崎貴宏《Reflection Model (Perfect Bliss) 2010-12年、檜、ワイヤー、150×280×194 cm、クイーンズランド州立美術館
8. 岩崎貴宏《Out of Disorder (Cony Island) 2012年、ビーチタオル、40×160×130 cm


5.まとめ

 ・日本の現代美術の変遷

―横山大観(1952年)から岩崎貴宏(2017年)まで
―日本画、油彩画(抽象画)、メディア・アート、写真、インスタレーションへ
―グループ展から個展へ
―「ヒロシマ」と「フクシマ」

 ・現代美術の「時代性」

―東日本大震災と人々の絆(コレクティヴ・アクト、無数の鍵)
―「同時代」的表現を25年、50年の期間を通して振り返る
―「年輪」のようなイベントとしてのビエンナーレ(周期展)