第71回山口県美術展覧会
1. 第71回山口県美術展覧会の概要 スライド
公募展/単館開催
会期: 9月16日~10月1日
会場:山口県立美術館
主催:山口県
出品数:396点(△6点)
入選数:61点(△82点)
審査員:島敦彦、椿昇、三潴末雄
※1979年の山口県立美術館の開館を機に改革に着手
1993年の第47回展以降、ノンジャンル化
◆公募展について
・公募展は、展覧会の会場、開催時期、出品条件、出品方法等を関係各方面に告知することにより、展示作品を広く募集する展覧会。コンクール、コンペティションとも呼ばれる。これに対し、企画展(テーマ展)は、企画者が展覧会のテーマ等を設定して出品作品や出品作家、展示構成を考え、作品借用や作家の招待等の出品交渉を行う。
・公募展の歴史は、フランスの王立絵画彫刻アカデミーの展覧会(=サロン)に遡る。1748年の審査員制度導入後、入落選が画家の社会的成功を左右する大きな権威となった。
・日本では、日本画の新旧派、洋画の新旧派を統合して、1907年に文部省美術展覧会(=文展)が発足。だが、1913年には洋画の新派が分離独立して二科展を発足させるなど、国家が主宰する官展に対し、在野の公募団体展が増加した。
◆文部省美術展覧会の規定にみる日本の公募展の特徴
「美術展覧会規程」(1907年6月8日告示)
・日本画・西洋画・彫刻の三科制
・鑑査を経たものに限り陳列(審査委員の作品は無鑑査)
・出品作品は本人が制作したものに限る
・風教に害ある作品は出品できない
・額あるいは軸などの装飾設備を備える
・優秀作品には褒賞の授与あるいは買上を行う
→“日本の「美術」の近代制度が形式的のみならず、内容的に確立するための基準となった”
出典: 飯尾由貴子「日本における官設美術展覧会について」、『官展にみる近代美術』展図録(福岡アジア美術館ほか、2014年): 12-13.
◆振り返って分かること…年々、開催時期が早まっている スライド
第71回 2017年9月16日~10月1日
第70回 2016年9月23日~10月10日
第69回 2015年9月26日~10月12日
第68回 2014年10月2日~10月19日
(第67回 2014年3月13日~3月30日) ※授業で扱わず
第66回 2012年10月4日~10月21日
◆「出品作品リスト」の活用 ~作品名の横に☆印を書き込む~
☆ 記憶に残しておきたい
☆☆ 誰かに伝えたい
☆☆☆ 感動した/自分が高められた気がする
☆☆☆☆ 世界観や価値観がひっくり返された
※美術館ではボールペン、シャープペン等は使用できないが、会場監視や入口の係員に希望を伝えると鉛筆を貸してくれる
2. 大賞作品と特別展示
・大賞 1点
山根秀信(山口市)《食卓の上の廃墟2017》
“これを見出した時に作者の明解なメッセージが伝わって来た。放射能や農薬汚染、排気ガスによる大気汚染、オゾン層破壊、地球温暖化問題など、私たちを取り巻く環境は危険な状態だ。平和で楽しい毎日の食卓が危機に瀕していては、子供たちの未来が心配だ。こうしたことをあらためて考えさせられる作品だった。”(三潴末雄)
・優秀賞 5点
・佳作 16点(△15点)
・特別展示:前年度県美展の大賞受賞者が、1F奥の展示室で1年間の活動の成果を発表する
1. 山根秀信(山口市)《食卓の上の廃墟2017》,
(部分1),
(2),
(3)大賞
2. 特別展示 保手濱拓(山口市)「memento(グンバイナズナ)」,
(部分1),
(2),
(3),
(4)
3. 保手濱拓(山口市)《memento(グンバイナズナ)》,
(部分) 第70回大賞
3. 会場風景
4. 優秀賞・佳作・入選作品
4. 牛尾篤(山口市)《電波探知姫》,
(部分1),
(2),
(3) 優秀賞
5. 伊藤恒夫(下関市)《「hula」を始めた妻》 優秀賞
6. 吉見健太郎(山口市)《植物幻視》 優秀賞
7. 谷本篤(周南市)《Chiku Chiku Animals 2017》 優秀賞
8. 太田晃貴(山口市)《liberty》,
(部分) 優秀賞
9. 佐藤和成・久保田祐樹・チームTAO(光市)《海の幸―オレたちの仕事》 佳作
10. こだままこと(上関市)《漁民のうた》
11. 國本ゆうじ(萩市)《林檎を食べないで~Adiós Kuro-chan》,
(部分) 佳作
12. 石井誠(岩国市)《未来への橋》
13. 西林美奈子(山口市)《萩御本手窯変彩壺》,
(同)
14. 伊賀晶子(山口市)《いのちのゆくえ》
15. 竹内久美子(宇部市)《コスモス》,
(部分)
16. 石井直美(下関市)《水鏡》 佳作
17. 山口功(山口市)《箱町》
18. 浜桐陽子(岩国市)《SHADES OF GREEN》 佳作
19. 徳田和幸(下松市)《海獣》
20. 梅田綾香(広島県)《千秋万古》
21. 上本ひとし(下松市)《「遠い記憶」昨今より》
22. 新井正義(周南市)《氷解模様》
23. 大村洋二朗(広島県)《OKOSAMA MADE》,
(部分1),
(2),
(3) 佳作
24. 白藤さえ子(神奈川県)《いだく》 佳作
25. ソにゃ~ル☆ホエゴ(宇部市)《横綱四天王、新弟子の頃》
26. 亀岡早百合(岩国市)《病窓からのパノラマ》
5. 過去の出品作品との比較
(1. 山根秀信《食卓の上の廃墟2017》第71回大賞)
27. 山根秀信《ふるさと》 第70回入選
28. 山根秀信《COMPOSITION(食の風景)》第69回佳作
29. 山根秀信《食卓の上の廃墟》第68回優秀賞
30. 山根秀信《無題》第66回佳作
31. 特別展示 山根秀信《神殿》第66回展
(4. 牛尾篤《電波探知姫》第71回優秀賞)
32. 牛尾篤《森のパンケーキ》第70回入選
33. 牛尾篤《森のバター》第69回入選
(12. 石井誠《未来への橋》 第71回入選)
34. 石井誠《遠い記憶》第69回入選
(23. 大村洋二朗《OKOSAMA MADE》第71回佳作)
35. 大村洋二朗《ぬけがらのぬけがら》第69回優秀賞
(24. 白藤さえ子《いだく》第71回佳作)
36. 白藤さえ子《Happy Birthday》(左), 《Milky way》(右)第69回入選
6. まとめ
・公募展
―登竜門(=若手作家の発表機会)
―授賞制度による奨励と権威づけ
―選考基準や審査過程の公開性
―継続性=作風の変化・展開を追う
・地元の公立美術館
―地域の文化活動の成果を共有する場(公共性/公募展)
―芸術的な遺産を継承する場(継続性/コレクション・調査・研究)
―地域の文化活動を活性化する場(企画展・講演会・ワークショップ)
―文化活動の交流拠点(研究会・シンポジウム)