ターナー 風景の詩
1. ターナー 風景の詩の概要 スライド
企画展/巡回展/回顧展/リニューアル・オープン記念展
会期:2017年11月3日~2018年2月4日
会場:北九州市立美術館
主催:ターナー展実行委員会(北九州市立美術館、毎日新聞社、RKB毎日放送)、スコットランド国立美術館群
後援:ブリティッシュ・カウンシル、毎日メディアサービス・サンデー新聞、九州旅客鉄道株式会社、北九州モノレール、筑豊電気鉄道株式会社、株式会社スターフライヤー、北九州市、北九州市教育委員会
協賛:北九州銀行、大日本印刷
協力:日本航空
◆展覧会図録
・展覧会図録は、企画展の開催に合わせて刊行される。出品作品の図版をカラー等で掲載したカタログ部分のほか、企画趣旨について述べた論文、出品作品リスト、作家略歴や年譜、作品解説、参考文献リスト、謝辞などから成る。
・企画趣旨について述べた論文は、開催館の展覧会担当学芸員が執筆するほか、大学の研究者や他館の学芸員、エッセイストなど外部の専門家に依頼して、複数の論文が掲載されることもある。巡回展の場合、巡回各館の学芸員がそれぞれ章立てやテーマ毎に論文を寄稿する。
・出品作品リストは、制作年、サイズ、素材と技法、所蔵先など、個々の作品の基本情報一覧である。回顧展の場合、出品歴や図版の掲載歴も記載され、作品研究の基礎情報となる。
・通常、展覧会会期の初日から開催美術館のミュージアムショップで販売され、会期中に売り切ることを目指す。発行部数は1,000部程度から10,000部以上まで、展覧会の集客数見込みに応じてさまざまある。観客総数の7%程度が購入すると見込まれている(約15人に1人が購入)。
・会期中に完売しない場合、巡回展であれば、次の会場で売られ、単館開催であれば、開催館で会期終了後も販売される。完売した時点で「品切れ」となり、増刷や復刊はされない(海外の美術館の企画展に復刊の事例有り)。 現代美術展の場合、会期途中や終了後に刊行される場合もある。
・公立美術館で開催される展覧会の図録の場合、利益は見込まれていない(制作費÷部数=価格)ことが多い。
◆「ターナー 風景の詩」展図録の構成
謝辞
ごあいさつ 主催者
ごあいさつ スコットランド国立美術館群総館長, スコットランド・ナショナル・ポートレート・ギャラリー館長
メッセージ 駐日英国大使
目次
ターナー 風景の詩/クリストファー・ベーカー (巻頭論文)
Turner and the Poetics of Landscape / Christopher Baker
1 地誌的風景画
[Column] ターナー水彩画技法用語集|編:新田量子
2 海景―海洋国家に生きて
[Column] トマス・キャンベル『詩集』(1837)|編:富岡進一
3 イタリア―古代への憧れ
4 山岳―あらたな景観美をさがして
5 ターナーの版画作品
ターナーと旅/シャーロット・トップスフィールド (論文2)
描かれた労働/富岡進一 (論文3)
関連地図 イギリス/ヨーロッパ
ターナーの生涯と同時代の出来事
主な展覧会歴(日本国内)
Chapter introductions / Christopher Baker
Turner and his Tours / Chalotte Topsfield
Turner’s Image of Industory [Summary] / Shinichi Tomioka
主要参考文献
出品作品リスト
◆「ターナー 風景の詩」展の章構成
1. 地誌的風景画
2. 海景―海洋国家に生きて
3. イタリア―古代への憧れ
4. 山岳―あらたな景観美をさがして
5. ターナーの版画作品
2. 作品紹介
2-1. 地誌的風景画
1.
《ハイ・グリーン、ウルヴァーハンプトン》、1795年、水彩・紙、31.7×41.9cm、ウルヴァーハンプトン・アート・ギャラリー
2. 《アベルディライス水車、グラモーガンシャー》、1796-97年頃、水彩、鉛筆、スクレイピングアウト、ストッピングアウト・厚紙、37.6×48.8cm、ウェールズ国立図書館
3. 《コールトン・ヒルから見たエディンバラ》、1819年頃、水彩、鉛筆、グワッシュ、スクレイピングアウト・網目紙、16.8×24.9cm、スコットランド国立美術館群
4. 《ヘリオット養育院、エディンバラ》、1819年頃、水彩、鉛筆、スクレイピングアウト・網目紙、16.6×25cm、スコットランド国立美術館群
2-2. 海景―海洋国家に生きて
5.
《嵐の近づく海景》、1803-04年頃、油彩・カンヴァス、45.7×60.9cm、東京富士美術館
6. 《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》、1802年展示、油彩・カンヴァス、91.5×122cm、サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリー
2-3. イタリア―古代への憧れ
7.
《キリスト教の黎明「エジプトへの逃避」》、1841年展示、油彩・カンヴァス、直径78.5cm、北アイルランド国立美術館群
8. 《マインヘッドとダンスター城、サマセット》、1818年頃、水彩、アラビアゴム・紙、15.2×22.2cm、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー
9. 《20ヴィニエットのうちの1点―死んだ鷲》、1835年頃、水彩、鉛筆・紙、12×10cm、スコットランド国立美術館群
10. 《風景―タンバリンを持つ女》、1840-50年頃、油彩・カンヴァス、88.5×118cm、栃木県立美術館
2-4. 山岳―あらたな景観美をさがして
11.
《キルカーン城、クラチャン・ベン山―真昼》、1801年頃、水彩・紙、53.3×77.2cm、プリマス・シティ・カウンシル(アーツ・アンド・ヘリテージ)
12.
《サン・ゴタール山の峠、悪魔の橋の中央からの眺め、スイス》、1804年展示、水彩、スクレイピングアウト・紙、98.5×68.5cm、ケンダル、アボット・ホール・アート・ギャラリー
13. 《ローレライ、ドイツ》、1817年、水彩、グワッシュ、グラファイト、スクラッチングアウト・紙、19.7×30.5cm、マンチェスター大学
2-5. ターナーの版画作品
14.
《死んだ鷲―オラン》、1837年、ライン・エングレーヴィング、29.1×15.2cm、郡山市立美術館
・9. 《20ヴィニエットのうちの1点―死んだ鷲》と14.
《死んだ鷲―オラン》
15. 《ネッカー川対岸から見たハイデルベルク》、1846年、エッチング、ライン・エングレーヴィング、36.6×54.1cm、郡山市立美術館
◆ターナーの生涯
1775年 4月23日(?)、ロンドンに生まれる
1789年 見習期間を経て、ロイヤル・アカデミー附属学校に入学
1802年 ロイヤル・アカデミー正会員に選ばれる
1804年 ターナー・ギャラリーを開設、20~30点の自作を展示
1807年 ロイヤル・アカデミーの遠近法教授に任命される
1819年 初のイタリア旅行、主にローマに滞在。ほか、トリノ、コモ、ヴェネツィア、ナポリ、フィレンツェなどを訪問
1823年 ジョージ4世の注文により、《トラファルガーの海戦》の制作に着手。ターナー最大の作品となる
1828年 ローマへの2度目の旅行
1837年 遠近法教授の職を辞す
1844年 《雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道》を含む7点をロイヤル・アカデミー展に出品。ラスキンの『近代画家論』(1843年)の影響もあり、ターナー称賛者が増える
1851年 12月19日、チェルシーの自宅で死去、享年76歳
参照: 富岡進一、新田量子編「ターナーの生涯と同時代の出来事」、『ターナー 風景の詩』展図録(毎日新聞社、2017年)、244-254頁。
◆日本で開催されたターナー展
1963年 「ターナー展」/ブリヂストン美術館、ほか
1979年 「ウィリアム・ターナー 水彩・デッサン展」/東京近鉄百貨店6階画廊
1985年 「マンチェスター市美術館所蔵 ターナー展」/新宿・小田急グランドギャラリー、ほか
1986年 「ターナー展」/国立西洋美術館、ほか
1989年 「ターナー水彩画展」/そごう美術館
1997年 「テート・ギャラリー所蔵 ターナー展」/横浜美術館、ほか
2001年 「名作と旅の風景 ターナー版画展」 /美術館「えき」KYOTO
2011年 「ターナー銅版画展」/海の見える杜美術館
2013年 「ターナー展」/東京都美術館、ほか
2017年 「ターナー 風景の詩」/北九州市立美術館、ほか
出典: 富岡進一編「主な展覧会歴(日本国内)」、『ターナー 風景の詩』展図録(毎日新聞社、2017年)、255頁。
3. まとめ
・展覧会図録
―美術館の企画力の表現と記録
―研究資料としての学術的な有用性
―過去に開催された展覧会の図録の積み上げの上に新しい展覧会が企画される
―映画監督や俳優に注目して映画を見るように、企画者や参加作家に着目して美術展を見る
・美術館の研究的機能
―美術館(博物館)の4つの機能=1. 収集、2. 保存、3. 展示、4. 研究
―研究成果の社会への還元=企画展、常設展示(コレクションの形成)
―コレクション⇔学芸員=専門性⇔企画展のテーマの有機的連関
―巡回展=学芸員同士の横の連携/1つの美術館に複数の専門性