長沢芦雪展 京のエンターテイナー


1. 長沢芦雪展の概要 スライド

企画展/回顧展/開館25周年記念展
会期:2017年10月6日~11月19日
会場:愛知県美術館
主催:愛知県美術館、中日新聞社、日本経済新聞、テレビ愛知
協賛:損保ジャパン日本興亜、トヨタ自動車、野崎印刷紙業
協力:日本航空、JR東海、近畿日本鉄道


出品作品の所蔵先=借用先

・企画展の場合、通常、他館からの借用作品で構成されることから、①国内所蔵作を中心とする展覧会、②海外の単館コレクションに基づく展覧会、③海外の複数の美術館から借用された展覧会、④海外でしかもヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアやアジアなど大陸をまたがって複数の美術館から借用された展覧会の順に、主催者側の経費負担は増加する

複数の美術館から借用された展覧会ほど、「一堂に集めた展覧会」としてはより一層貴重な機会と言える

・一緒に並べられる機会の少ない作品同士を比較して見ることは、実証的な研究の観点から意義が大きい


長沢芦雪展の章構成

第1章 氷中の魚―応挙門下に龍の片鱗を現す
第2章 大海を得た魚―南紀で筆を揮う
第3章 芦雪の気質と奇質
第4章 充実と円熟―寛政前・中期
第5章 画境の深化―寛政後期


2. 作品紹介

 2-1. 氷中の魚―応挙門下に龍の片鱗を現す

1. 長沢芦雪《牡丹孔雀図》、天明前期(1781-85)頃、絹本着色、130.2×55.4cm、京都、下御霊神社
2. 円山応挙《牡丹孔雀図》、安永3年(1774)、絹本着色、140×99.5cm、京都、嵯峨嵐山日本美術研究所
長沢芦雪《牡丹孔雀図》と円山応挙《牡丹孔雀図》の比較
3. 円山応挙《楚蓮香図》、寛政6年(1794)、絹本着色、106.9×38.4cm、個人蔵
4. 長沢芦雪《楚蓮香図》、天明6年(1786)以前、絹本着色、122.5×40.8cm、個人蔵
長沢芦雪《楚蓮香図》と円山応挙《楚蓮香図》の比較
5. 長沢芦雪《花鳥図》、天明前期(1781-85)頃、絹本着色、140×55cm、個人蔵
6. 長沢芦雪《牡丹雀図》、天明6年(1786)以前、絹本着色、158×67.3cm、和歌山、無量寺・串本応挙芦雪館

 2-2. 大海を得た魚―南紀で筆を揮う

7. 長沢芦雪《群猿図屏風》、天明7年(1787)、紙本墨画、各159×361cm、和歌山、草堂寺
8. 長沢芦雪《朝顔に蛙図襖》、天明7年(1787)、紙本墨画、各176.9×108.7cm(左4面)、各176.9×85.9cm(右2面)、和歌山、高山寺

 2-3. 芦雪の気質と奇質

9. 円山応挙《狗之子図》、安永年間(1772-81)、紙本着色、107.1×42.8cm、京都、一般財団法人高津古文化会館
10. 長沢芦雪《薔薇蝶狗子図》、寛政後期(1794-99)頃、絹本着色、127.4×50.2cm、愛知県美術館(木村定三コレクション)
長沢芦雪《薔薇蝶狗子図》と円山応挙《狗之子図》の比較
11. 長沢芦雪《鶏図》、天明年間(1781-89)、紙本着色、37×52.6cm、個人蔵
12. 長沢芦雪《なめくじ図》、寛政年間(1794-99)頃、紙本着色、29.3×28.6cm、個人蔵
13. 円山応挙《元旦図》、紙本着色、32.3×48.9cm、個人蔵

 2-4. 充実と円熟―寛政前・中期

14. 長沢芦雪《唐美人図》、寛政前期(1789-93)頃、絹本着色、119×95cm、個人蔵
15. 長沢芦雪《富士越鶴図》、寛政6年(1794)、絹本墨画淡彩、157×70.5cm、個人蔵
16. 長沢芦雪、長沢芦洲、呉春、吉村蘭洲、円山応端(合作)《花鳥図》、寛政年間(1789-99)か、絹本着色、106×51.7cm、個人蔵

 2-5. 画境の深化―寛政後期

17. 長沢芦雪《大原女図》、寛政後期(1794-99)頃、絹本着色、130.3×83.2cm、静岡県立美術館
18. 長沢芦雪《幽魂の図》、寛政後期(1794-99)頃、絹本着色、96.4×38.9cm、奈良県立美術館
19. 長沢芦雪《瀧に鶴亀図屏風》、寛政後期(1794-99)頃、六曲一双、紙本墨画淡彩、各172×381cm、個人蔵


長沢芦雪の生涯

1754年 丹波国篠山藩藩士・上杉彦右衛門の子として育つ
1778年 この頃、《東山名所図屏風》を制作。応挙門にいた
1781年 この頃、《猛虎図》を制作。すでに京都に住む
1782年 『平安人物志』画家の部に載る
1783年 大阪の直指庵の白壁に龍を描く
1786年 多忙な応挙に代わり、無量寺の愚海文保とともに南紀に向かう。翌年2月まで滞在
1787年 京都へ帰る途中、高山寺(和歌山県田辺史)に滞在。
1789年 12月まで半年ほど奈良に滞在
1790年 応挙一門として御所の襖絵を制作
1794年 冬、広島に滞在し、《宮島八景図》、《富士越鶴図》など制作
1795年 7月17日、応挙没
1797年 《山姥図》が厳島神社に奉納される
1799年 6月8日、大阪で客死、享年46歳

参照: 「略年譜」、『長沢芦雪展 京のエンターテイナー』展図録(長沢芦雪展 実行委員会、2017年)、212-213頁。


3. まとめ

 ・所蔵先

―企画展の充実度を計る指標
―借用元の都市を確認
―将来自分でも訪ねる機会がありそうな都市/一生行くことがなさそうな都市

 ・芸術鑑賞における「一期一会」

―一期一会:一生に一度の貴重な出会い(茶道に由来)
―何度も来日する海外の有名作品
―旅先で再会可能な有名美術館の常設展示作品
―有名美術館所蔵のマイナー作品やマイナーな美術館の所蔵品