<第六講>フェルメール展


1. 展覧会の概要

フェルメール展概要 スライド
企画展/巡回展
会期:2018年10月5日~2019年2月3日
会場:上野の森美術館
主催:産経新聞社、フジテレビジョン、博報堂DYメディアパートナーズ、上野の森美術館
後援:オランダ王国大使館
企画:ハタステフティング
特別協賛:大和ハウス工業株式会社、ノーリツ鋼機株式会社
協賛:第一生命グループ、株式会社リコー
特別協力:NISSHA株式会社
協力:ANA、KLMオランダ航空、日本貨物航空、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン

巡回スケジュール

大阪市立美術館 2/16~5/12


フェルメール(1632―1675) スライド

・17世紀オランダを代表する画家の1人
・真作は33点~37点とされ、近年の人気上昇を受けて全点踏破を試みる人もいる(フェルメール巡礼)
・師匠不明。素描も自画像も手紙もなく画家の人物像について手掛かりはほとんどない
・聖ルカ組合への加入、理事に選ばれたり再任された等の記録、婚姻や借金に関する記録等が知られている
・42-43歳で亡くなる
・年記のある作品は《取り持ち女》1656年、《天文学者》1668年、《地理学者》1669年の3点のみで、他の30点近くについては、これらの3点を基準に制作年が推定されている


展覧会の章立て

・展覧会におけるコーナー分け。鑑賞者の展覧会理解に資するよう、作品をグループ毎にまとめて展示する手法
・公募展の場合はジャンル毎、回顧展の場合は時代毎あるいは主題毎、テーマ展の場合は時代毎あるいはサブテーマ毎に分類される。常設展にも適用される。
・章立ては、展覧会会場と展覧会図録の双方の構成に反映される。会場では解説パネルが、図録内では短い解説文あるいは、詳細な論文が章の冒頭におかれる。
・通常、3~5章立てにまとめられるが、広領域にわたる時代や地域を調査対象とした展覧会の場合、10章を超える場合もある。


フェルメール展の章立て

1. オランダ人との出会い:肖像画
2. 遠い昔の物語:神話画と宗教画
3. 戸外の画家たち:風景画
4. 命なきものの美:静物画
5. 日々の生活:風俗画
6. 光と影:フェルメール


2. 作品紹介

  2-1. オランダ人との出会い:肖像画

1. フランス・ハルス《ルカス・デ・クレルクの肖像》、1635年頃、126.5×93cm、油彩・カンヴァス、アムステルダム国立美術館/《フェインチェ・ファン・ステーンキステの肖像》、1635年、123×93cm、油彩・カンヴァス、アムステルダム国立美術館
2. ヤン・デ・ブライ《ハールレム聖ルカ組合の理事たち》、1675年、油彩・カンヴァス、130×184 cm、アムステルダム国立美術館

 2-2. 遠い昔の物語:神話画と宗教画

3. ヘンドリック・テル・ブリュッヘン《東方三博士の礼拝》、1619年、油彩・カンヴァス、132.5×160.5 cm、アムステルダム国立美術館
4. レンブラント周辺の画家《洗礼者ヨハネの斬首》、1640-45年、油彩・カンヴァス、149×121 cm、アムステルダム国立美術館
5. ヤン・デ・フライ《ユーディトとホロフェルネス》、1659年、油彩・板、56×48 cm、アムステルダム国立美術館

 2-3. 戸外の画家たち:風景画

6. アブラハム・ブルーマールト《トビアと天使のいる風景》、1610-20年、油彩・カンヴァス、65.3×54.5 cm、ユトレヒト中央美術館
7. コルネリス・ファン・ウィーリンヘン《港町近くの武装商船と船舶》、1620-25年頃、油彩・板、42.5×80.7 cm、ロッテルダム海洋博物館
8. エマニュエル・デ・ウィッテ《ゴシック様式のプロテスタントの教会》、1680-85年頃、油彩・カンヴァス、122×104 cm、アムステルダム国立美術館

 2-4. 命なきものの美:静物画

9. ヤン・デ・ボント《海辺の見える魚の静物》、1643年、油彩・カンヴァス、135×151.5 cm、ユトレヒト中央美術館
10. ヤン・ウェーニクス《野ウサギと狩りの獲物》、1697年、油彩・カンヴァス、114.5×96 cm、アムステルダム国立美術館

 2-5. 日々の生活:風俗画

11. ニコラス・マース《糸を紡ぐ女》、1657年頃、油彩・板、41.5×33.5 cm、アムステルダム国立美術館
12. クヴィリング・ファン・ブレーケレンカム《仕立て屋の仕事場》、1661年、油彩・カンヴァス、66×53.5 cm、アムステルダム国立美術館
13. ハブリエル・メツー《手紙を読む女》、1664-66年頃、油彩・板、52.5×53.5 cm、アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン
14. ハブリエル・メツー《手紙を書く男》、1664-66年頃、油彩・板、52.5×40.2 cm、アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン

 2-6. 光と影:フェルメール

15. ヨハネス・フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》、1654-55年頃、油彩・カンヴァス、158.5×141.5 cm、スコットランド・ナショナル・ギャラリー、エディンバラ
16. ヨハネス・フェルメール《取り持ち女》、1656年、油彩・カンヴァス、143×130 cm、ドレスデン国立古典絵画館  ※日本初公開/東京展1/9から展示/大阪展にも出品
17. ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》、1658-60年頃、油彩・カンヴァス、45.5×41 cm、アムステルダム国立美術館
18. ヨハネス・フェルメール《ワイングラス》、1660-62年頃、油彩・カンヴァス、67.7×79.6 cm、ベルリン国立美術館  ※日本初公開
19. ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》、1662-63年頃、油彩・カンヴァス、51.4×45.7 cm、メトロポリタン美術館、ニューヨーク
20. ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの女》、1662-65年頃、油彩・カンヴァス、56.1×47.4 cm、ベルリン国立美術館
21. ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》、1665年頃、油彩・カンヴァス、45×39.9 cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー
22. ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》、1665-66年頃、油彩・カンヴァス、23.2×18.1 cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー  ※日本初公開/東京展で12/20まで展示
23. ヨハネス・フェルメール《恋文》、1669-70年頃、油彩・カンヴァス、44×38 cm、アムステルダム国立美術館
24. ヨハネス・フェルメール《手紙を書く婦人と召使い》、1670-71年頃、油彩・カンヴァス、71.1×60.5 cm、アイルランド、ナショナル・ギャラリー、ダブリン


フェルメール関連年表

1632年 10月31日、ヨハネス・フェルメール生まれる
1641年 オランダ商館が平戸から長崎の出島に移され、鎖国が完成する
1648年 スペインがネーデルラント連邦共和国を承認(80年戦争終結)
1652年 第1次英蘭戦争(~56年)
1653年 12月29日、聖ルカ組合に親方として加入
1656年 《取り持ち女》に署名と年記を記入
1657年 ピーテル・クラース・ファン・ラウフェンがフェルメールに200ギルダーを貸す。ファン・ラウフェンは絵のコレクターでフェルメールが制作した作品の約半分を所有した
1672年 第3次英蘭戦争(~74年)、第2次仏蘭戦争(~78年)によりオランダ経済は大打撃を受ける
1674年 パトロンのファン・ラウフェン死去
1675年 12月15日、フェルメール死去(43歳)
1676年 1月27日、未亡人カタリーナ・ボルネスが、未払いのパン代金のかたに《手紙を書く婦人と召使い》と《ギターを弾く女》を手放す
1677年 3月13日、フェルメールの負債を清算するために作品が競売にかけられる
1687年 カタリーナ死去

出典: 岡里崇編「関連年表」、『フェルメール展』図録(産経新聞社ほか、 2018年)、198-199頁。


3. まとめ

  ・展覧会の章立て

―「展覧会」理解の手掛かり
―作品を鑑賞する/展覧会構成を読み解く
―休憩コーナーに置いてある図録を活用する
―独自に章構成を組み直す可能性を探る

 ・展覧会の集客

―キラー・コンテンツ(=日本初公開)による客寄せ
―ブロックバスター(広告戦略による大量動員)
―文化施設の収支バランス
―美術鑑賞の満足度(世間が注目しているものを私も見に行った/人気はなくとも私は好きだ)