<第九講>第28回UBEビエンナーレ応募作品展


1. 展覧会の概要

第28回UBEビエンナーレ応募作品展概要 スライド
公募展/彫刻展/単館開催
会期:2018年10月1日~11月4日
会場:ときわ湖水ホール
42カ国318点の応募作品の中から、40点の入選模型作品を選考後、15点の実物制作指定作品を決定

 ◆第28回UBEビエンナーレ選考委員会

酒井忠康(美術評論家・世田谷美術館長) ※委員長
澄川喜一(彫刻家・島根県立石見美術館長)
水沢勉(美術評論家・神奈川県立近代美術館長)
河口龍夫(現代美術家・金沢美術工芸大学教授)
斎藤郁夫(山口県立美術館副館長)
不動美里(姫路市立美術館副館長)
藤原徹平(建築家・横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)
日沼禎子(女子美術大学准教授)
永田晶子(毎日新聞社東京学芸部編集委員)
久保田后子(宇部市長・緑と花と彫刻の博物館長)

 ◆公募展について

公募展は、展覧会の会場、開催時期、出品条件、出品方法等を関係各方面に告知することにより、展示作品を広く募集する展覧会。コンクールコンペティションとも呼ばれる。これに対し、企画展(テーマ展)は、企画者が展覧会のテーマ等を設定して出品作品や出品作家、展示構成を考え、作品借用や作家の招待等の出品交渉を行う。
・公募展の歴史は、フランスの王立絵画彫刻アカデミーの展覧会(=サロンに遡る。1748年の審査員制度導入後、入落選が画家の社会的成功を左右する大きな権威となった。
・日本では、日本画の新旧派、洋画の新旧派を統合して、1907年に文部省美術展覧会(=文展)が発足。だが、1913年には洋画の新派が分離独立して二科展を発足させるなど、国家が主宰する官展に対し、在野の公募団体展が増加した。


2. 作品紹介

  実物制作指定作品

実物制作指定作品15点
1. 平田茂(三重)《夢枕》
2. 四方謙一(東京)《collecting view in the well》(1), (2)
3. 戸田裕介(埼玉)《天地を巡るもの/大気循環》
4. 田辺武(山口)《Origin 19-1》
5. 関玄達(東京)《雲の上にあるもの》
6. 三宅之功(兵庫)《はじまりのはじまり》
7. 仲田守(千葉)《ク・ラ・ゲ・だぞー》
8. レオナルド・クンボ(イタリア)《STAR FISHERMAN》
9. 岡健太郎(神奈川)《Plantronica Ube》
10. 川村秀彦(鹿児島)《風路》
11. 佐藤慈男(愛知)《重力推進―石舟》
12. 志賀政夫(茨城)《みんなで微笑む(虹色の椅子)
13. 加藤淳(兵庫)《曲率のシンフォニー》(1), (2)
14. ジョン・デイブ・シエロ(フィリピン)《DO NOT POP !》(1), (2)
15. ユ・チョン・フアン(台湾)《Dream Catcher》(1), (2)


3. 彫刻の見方

1-1. 素材ごとに見る―石 スライド
西洋の伝統的な彫刻素材である大理石のほか、耐久性のある御影石などが利用される

1-2. 素材ごとに見る―金属(鉄、スチール、ステンレス、銅) スライド
鏡面仕上げ、塗装のほか、銅の場合はパティナ(緑青)によって腐食を防止する

1-3. 素材ごとに見る―その他(ポリエステル樹脂、ガラス) スライド
ポリエステル樹脂:自由度の高い造形表現を追求できる
ガラス:周囲の風景を透かし見ることができる

2-1. 表現の傾向ごとに見る―抽象性 スライド
幾何学的形態、生物的形態など形の面白さを味わう

2-2. 表現の傾向ごとに見る―具象性・キャラクター性 スライド
親しみやすさ、ランド・マーク的存在

2-3. 表現の傾向ごとに見る―遊具性・装置性 スライド
設置環境における人との関わりを意識


4. 入選模型作品

入選模型作品25点の展示(1), (2)
16. イ・ボンユ(韓国)《LIFE》
17. 藤島明範(茨城)《宇宙への門―北極星との交信 VII》
18. クラジミル・メトディエフ(ブラジル)《Last King of Unicorns》


5. 応募作品

19. ハンス・ショール(ドイツ)《COMMUNICATION》
20. 杉村孝(静岡)《平成の落し物》
21. チーキョン・エオ(シンガポール)《Triangle Relationship》
22. フランセスコ・ブラクシ(コスタリカ)《The Solar Disc》
23. キース・オウェンス(メキシコ)《Safeguards of Memory》
24. 原田悠輔《静寂な情景》
25. 大栗克博《地動説Ⅲ》
26. 俣野彰一《Baobab baby》
27. チェ・ソドン(韓国)《Permanency 2150》


6. その他

28. パーティシペトリー テキスタイル みんなの織物(1), (2), (3)
・ アーティスト・トーク:エレナ・レダエリ(ノルウェー, 1981- )


7. まとめ

 ・公募展

―登竜門(=若手作家の発表機会)
―授賞制度による奨励と権威づけ
―選考基準や審査過程に対する批判
―公募展と企画展/グループ展と個展

 ・現代彫刻の見方

―木、石(自然素材)/合金、金属/FRP(新素材)
―抽象/具象・キャラクター/遊具・装置
―「素材別」に「傾向」を見る
―UBEビエンナーレは、模型→実制作の比較も見どころ
―周期展としての面白さ


8. 公募展の継続的楽しみ

29. 武荒信顕(千葉)《あなたと…(わすれてしまったこと)》(1), (2), (3), (4), (5)