<第十三講>シドニー・ビエンナーレ2018
◆山口→シドニー スライド
シドニー=東経151度(東京=139度/山口=131度)
時差:+1時間
東京-シドニー間:所要時間9時間45分
人口:492万人(2015年)
通貨:1オーストラリアドル≒84円
調査:5/9(水)-15(火)
4泊5日(機内2泊)
1. シドニー・ビエンナーレの歴史 スライド
◆アンソニー・ウィンザーボザム「シドニー・ビエンナーレの誕生」、『シドニー・ビエンナーレ』図録(1973年)
・シドニー・ビエンナーレは美術に飢えた不死鳥としてトランスフィールド美術賞の灰から蘇り、発展していくだろう…
・1961年以来、「トランスフィールド」は、知られる通り、あらゆる現代美術を取り巻く議論の健全な雰囲気の中で発展していった。その発展のすべてが理想的ではなかったし、さまざまな要素において批判にも直面した。美術賞の繁栄と成長は、唯一外部からの批判を糧とすることは言を俟たないとはいえ、1970年には、美術そのものが転換期にさしかかり、もはや美術賞が彼らが考えていたような理想を実現しえないということが、トランスフィールドの設立者たちにとって明かになっていた。
・いくつかの要素が負荷をかけた。
・今日の美術家たちは、これまで以上に創造性という概念に関心を持ち、さまざまな表現手段に挑戦している。様式や技術に関するかつて必須条件そのものが、その動機に適合しなければならない。そこで、共通基盤そのものが考案され議論されているために、ある美術作品を他の美術作品に対して判断することが徐々に困難になった。いかに本物であったとはいえ、明白な企業支援は、賞の対価に見合った最大限の宣伝効果を達成するべく意図されたからくりと見なされ、美術家たちは経営戦略の駒と化しているように感じていた。
・このようにして、うまく発展してきたオーストラリアの美術大賞から、ビエンナーレの企画が育ってきた。その誕生と成長は、1956年に、カリオ・サルテリと共同でトランスフィールド・グループを設立した、フランコ・ベルジョルノ=ネッティスの倦むことのない意志から湧き出てきた。
・ビエンナーレの将来展望は、他の世界の中心地と同じく、オーストラリアを拠点としつつ、拡張しつつある太平洋海盆に対する文化的な注目を内包することである。
◆シドニー・ビエンナーレにおけるテーマの変遷史
第1回展(1973年) <副題なし>
第2回展(1976年)近年の美術の国際形式(Recent
International Forms in Art)
第3回展(1979年)ヨーロッパ的対話(European
Dialogue)
第4回展(1982年)不信の展望(Vision
in Disbelief)
第5回展(1984年)個人的な象徴/社会的な隠喩(Private
Symbol: Social Metaphor)
第6回展(1986年)起源、独自性+その先(Origins
Originality + Beyond)
第7回展(1988年)南十字星から―世界美術概観
(From the Southern Cross: A View of World Art)
※入植200周年
第8回展(1990年)レディメイド・ブーメラン―20世紀美術の関係(The
Readymade Boomerang: Certain Relations in 20th Century Art)
第9回展(1992/93年)牧場監視人(The
Boundary Rider)
第10回展(1996年)ジュラ紀の技術の再来(Jurassic
Technologies Revenant)
第11回展(1998年)日々(every
day)
第12回展(2000年)<副題なし>
第13回展(2002年)(世界は多分)素晴らしい((The
World May Be) Fantastic)
第14回展(2004年)理性と感情について(On
Reason and Emotion)
第15回展(2006年)接触域(Zones
of Contact)
第16回展(2008年)革命―倒立するかたち(Revolutions
- Forms That Turn)
第17回展(2012年)距離の美―不安定な時代を生き抜くための歌(THE
BEAUTY OF DISTANCE: Songs of Survival in a Precarious Age)
第18回展(2014年)あらゆる私たちの関係(all
our relations)
第19回展(2016年)未来はすでにここに―均等配分されていないだけ(The
future is already here ? it’s just not evenly distributed)
第21回展(2018年)重ね合わせ―均衡と関与(SUPERPOSITION:
Equilibrium & Engagement)
第22回展(2020年)
2. シドニー・ビエンナーレ2018
テーマ:重ね合わせ―均衡と関与 スライド
会期:2018年3月16日-6月11日
芸術監督:片岡真実(森美術館チーフキュレーター)
参加国数:35カ国
参加作家数:69作家・組
cf. 第16回(2008年)=42カ国/175作家
◆7つの会場 スライド
1. ニューサウスウェールズ美術館(AGNSW)
2. コッカトゥー島
3. アートスペース(Artspace)
4. オーストラリア現代美術館(MCA)
5. シドニー・オペラハウス
6. 4A現代アジア美術センター(4A Centre for Contemporary Asian Art)
7. キャリッジワークス(Carriageworks, 鉄道車両工場跡地)
2-1. アーカイヴ展示
◆ニューサウスウェールズ美術館(AGNSW)
・アーカイヴ展示:シドニー・ビエンナーレ
1973-2016(1), (2)
・アーカイヴ展示:展覧会図録
・アーカイヴ展示:トランスフィールド美術賞1961-1971
・アーカイヴ展示:第3回展に向けた要望書等
2-2. アボリジナル・アート
1. ロイ・ウィガン(1930-2015 オーストラリア)
展示風景(1),
(2)
1. ロイ・ウィガン《イルマ》(部分)、1994年
2. マーレン・ギルソン(1944- オーストラリア)《到着》、2017年
2. マーレン・ギルソン《クリン族の交流行事》、2012年
2. マーレン・ギルソン 展示風景
◆オーストラリア現代美術館(MCA)
3. イヴォンヌ・クールマトリー(1944- オーストラリア)《埋葬用籠》
4. ヤーレニティ・アールテレ・アーティスツ(2000年結成 オーストラリア)《私たちの手の中に》(1),
(2)
5. エスメ・ティンベリー(1931- オーストラリア)《貝殻飾りのスリッパ》(1),
(2)
6. ブルック・アンドリュー(1970- オーストラリア)+シラー・ベイジョー《思考の墓
I(風)》ほか
6. ブルック・アンドリュー《鏡 VIII》(部分)
7. ブルック・アンドリュー+マユン・キキ《思考の墓 V(金属)》(部分)
8. ジョージ・ジュングライ(c.1943- オーストラリア)展示風景
8. ジョージ・ジュングライ《無題》
2-3. 移民・植民
9. 艾未未(アイ・ウェイウェイ, 1957- 中国)《旅の掟》(1),
(2) 台座引用文
9. 艾未未《艾未未―漂流中》ほか、展示風景
9. 艾未未《艾未未―漂流中》、2017年
10. ティファニー・チュン(1969- ベトナム)《移動史の再構築―ボートの航路、最初の亡命国と入植国の港》(1),
(2),
展示風景
10.ティファニー・チュン《水の夢風景―ジャッキーという名のチンピラ、眠る人々、亡命者》(部分)
◆オーストラリア現代美術館(MCA)
11.トム・ニコルソン(1973- オーストラリア)《無題の壁面素描》(1), (2)
12. ジュン・ヤン(1975- 中国)《ヨーロッパ人になること、あるいは私がヴィーナーシュニッツェルとともに育った経緯》(1),
(2),
(3),
(4),
(5),
(6)
13. 高山明(1969- )《私たちの歌―シドニー歌舞伎プロジェクト》(1),
(2),
(3),
(4)
2-4. 不確実性の時代
◆コッカトゥー島(鸚鵡島)
14. 柳幸典(1959- )《イカロス・コンテナ》(1), (2), (3), (4)
15. オリヴァー・ビア(1985- イギリス)《建築空間を調律するための作曲》
◆ニューサウスウェールズ美術館(AGNSW)
16. エイヤ=リーサ・アハティラ(1959- フィンランド)《愛の潜在的可能性》(部分)(1), (2)
◆「盗まれた世代」に関する映画 スライド
オーストラリア映画「裸足の1500マイル」(2002年公開) Rabbit-Proof Fence
3. まとめ
・シドニー・ビエンナーレの45年
―1970年代、アートに対する考え方に変化
―美術賞→国際動向の紹介と動向への参入
―自国作家と海外作家、男性作家と女性作家のバランス、アボリジニ作家の紹介
―欧米志向からアジア重視へ
・移民・植民
―盗まれた世代=アボリジニに対する隔離・同化政策(1869-1969)
―先住民文化に対する保護と研究
―アイヌ差別、沖縄差別
―入管法改正(2018年11月27日衆院通過)
◆シドニー・ビエンナーレ2018 展覧会図録 On Line版
◆旅のお供
村上春樹『Sydney![シドニー!]』(文藝春秋、2001年)