第28回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)


1. UBEビエンナーレの開催趣旨と歴史

“緑と花と彫刻のまちとして知られる山口県宇部市。UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)は、戦後のまちの美化と心の豊かさを求める市民運動をきっかけとして、1961年にはじまった日本初の大規模な野外彫刻展です。湖を望む緑豊かなときわ公園を舞台に、2年一度開催されています。出品作品の一部は、宇部市のコレクションとして市内各所に恒久設置される仕組みで、まちづくりにアートを取り入れた先駆的な試みとして、歴史的にも高く評価されています。2006年からは、国際コンクールとして海外作品も積極的に募集し、国内外の文化拠点との交流にも力を入れています。
2019年秋開催の第28回展では、42カ国318件の応募のなかから選ばれたイタリア、フィリピン、台湾、日本の4カ国15名のアーティストによる野外彫刻がときわ公園を彩ります。また同時期に市内全域で開催されるUBEビエンナーレ×まちじゅうアートフェスタ(UBEアートフェスタ 2019)では、多彩なアートや食のイベントをお楽しみいただけます。”

出典:UBEビエンナーレ公式サイト <https://ubebiennale.com/sculptures/28th-2019> (2019/10/8)

  ※「文化の薫る街づくり」に野外彫刻を活用

・ハード面:彫刻設置=都市景観の整備・構築
・ソフト面:彫刻清掃ボランティア、解説ボランティア=市民活動の活性化


・宇部市は炭鉱の町としてスタートし、工業都市へと、順次転換しました。1951年の記録によりますと、まだ石炭もたくさん出ており、化学工業も最盛期という時代でしたので、1日の降灰量が、1平方キロメートル当たり約56トンというすさまじい公害を経験しました。…(中略)…市民と学者と企業と行政、この4者が協力して対策を講じ克服していったという歴史があります。…(中略)…企業は、灰が降らないように煙突に電気集塵機を取り付けました。また、市民は、そういう対策にあわせて灰や煙の量を少しでも減らそうと、街に木を植え緑化に努めたわけです。
・この運動が、市民の「緑化運動」へと発展し、あわせて「花いっぱい運動」へと展開しました。
・そうした緑と花の延長線上で、1960年、女性問題対策審議会から、“自然と人間の接点としての芸術”という提言を受け、この彫刻事業がスタートしたのです。
・この女性問題対策審議会は、女性を中心とした組織で、公害の問題だけでなく子供達の不良化問題にも取り組んでいました。ある時、花いっぱい運動で集めた募金に余剰金が出たため、彫刻のレプリカを購入し、駅前の広場に置いたところ、たくさんの子供たちが、写生を始めたそうです。これは教育上すばらしいことだということで、是非子供達に本物の芸術を見せようではないかという運動になり、これが彫刻を始める起点となったと聞いています。

藤田忠夫(宇部市長)「緑と花と彫刻のまち」、『第20回現代日本彫刻展記念シンポジウム報告書』(第20回現代日本彫刻展記念事業実行委員会、2003年)、22頁。

・ファルコネ《ゆあみする女》(レプリカ)


第1回宇部市野外彫刻展 1961年7月18日~9月17日
チャドウィック・アーミテージ彫刻展 1962年11月2日~11月6日
第1回全国彫刻コンクール応募展 1963年9月10日~11月5日
第1回現代日本彫刻展 1965年10月1日~10月31日 
        ↓
第22回現代日本彫刻展 2007年9月29日~11月11日
第23回UBEビエンナーレ  2009年10月3日~11月15日
第24回UBEビエンナーレ  2011年9月24日~11月13日 ※野外彫刻展50周年記念(宇部市制施行90周年)
第25回UBEビエンナーレ  2013年9月29日~11月24日
第26回UBEビエンナーレ  2015年10月3日~11月15日
第27回UBEビエンナーレ  2017年10月1日~11月26日
第28回UBEビエンナーレ  2019年9月29日~11月24日


2. 第28回UBEビエンナーレの概要 スライド

公募展彫刻展単館開催周期展
会期:2019年9月29日~11月24日
会場:UBEビエンナーレ彫刻の丘、UBEビエンナーレライブラリー
主催:宇部市、UBEビエンナーレ運営委員会、毎日新聞社
特別協賛:宇部興産株式会社
後援:国際交流基金、山口県、九州国立博物館、山口県立美術館、秋吉台国際芸術村、山口情報芸術センター、下関市立美術館、島根県立石見美術館、北九州市立美術館、NHK山口放送、tysテレビ山口、KRY山口放送、 yab山口朝日放送、 山口ケーブルビジョン株式会社、FMY エフエム山口、エフエムきらら
令和元年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業


公募展について

公募展は、展覧会の会場、開催時期、出品条件、出品方法等を関係各方面に告知することにより、展示作品を広く募集する展覧会。コンクールコンペティションとも呼ばれる。これに対し、企画展(テーマ展)は、企画者が展覧会のテーマ等を設定して出品作品や出品作家、展示構成を考え、作品借用や作家の招待等の出品交渉を行う。
・公募展の歴史は、フランスの王立絵画彫刻アカデミーの展覧会(=サロンに遡る。1748年の審査員制度導入後、入落選が画家の社会的成功を左右する大きな権威となった。
・日本では、日本画の新旧派、洋画の新旧派を統合して、1907年に文部省美術展覧会(=文展)が発足。だが、1913年には洋画の新派が分離独立して二科展を発足させるなど、国家が主宰する官展に対し、在野の公募団体展が増加した。
・県内では、第28回UBEビエンナーレ(9/29~11/24)のほか、第73回山口県美術展覧会(1/19〆切, 展示:2/13~3/1)、第29回林忠彦賞(12/31〆切, 展覧会: 4月=東京, 5月=周南市美術博物館)などが開催されている。


第28回UBEビエンナーレ選考委員会

酒井忠康(美術評論家・世田谷美術館長) ※委員長
澄川喜一(彫刻家・島根県立石見美術館長)
水沢勉(美術評論家・神奈川県立近代美術館長)
河口龍夫(現代美術家・金沢美術工芸大学教授)
斎藤郁夫(山口県立美術館副館長)
日沼禎子(女子美術大学准教授)
藤原徹平(建築家・横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)
不動美里(姫路市立美術館副館長)
永田晶子(毎日新聞社東京学芸部編集委員)
久保田后子(宇部市長・緑と花と彫刻の博物館長)


第28回UBEビエンナーレの賞と賞金

大賞(宇部市賞)[実物・模型プラン買上げ賞]・・・・・500万円
宇部興産株式会社賞[実物・模型プラン買上げ賞]・・・400万円
毎日新聞社賞[模型プラン買上げ賞] ・・・・・・・・150万円
山口銀行賞・・・・・・・・・・・・・・・・・・100万円
宇部商工会議所賞・・・・・・・・・・・・・・・50万円
緑と花と彫刻の博物館賞[模型作品買い上げ賞] ・・・・50万円
島根県吉賀町賞・・・・・・・・・・・・・・・・20万円
山口県立美術館賞・・・・・・・・・・・・・・・20万円
島根県立石見美術館賞・・・・・・・・・・・・・20万円


3. 作品紹介

1. 三宅之功(兵庫)《はじまりのはじまり》 大賞(宇部市賞) (模型)
2. 岡健太郎(神奈川)《Plantronica Ube》 宇部興産株式会社賞 (別角度) (模型)
3. 仲田守(千葉)《ク・ラ・ゲ・だぞー》 毎日新聞社賞 (模型)
4. 四方謙一(東京)《collecting view in the well》 山口銀行賞 (別角度) (模型)
5. 加藤淳(兵庫)《曲率のシンフォニー》 宇部商工会議所賞 (別角度) (模型)
6. 川村秀彦(鹿児島)《風路》 島根県吉賀町賞 (模型)
7. 関玄達(東京)《雲の上にあるもの》 山口県立美術館賞 (模型)
8. 志賀政夫(茨城)《みんなで微笑む(虹色の椅子) 島根県立石見美術館賞
9. 平田茂(三重)《夢枕》
10. 戸田裕介(埼玉)《天地を巡るもの/大気循環》 (模型と実物の比較)
11. 田辺武(山口)《Origin 19-1》 (模型と実物の比較)
12. レオナルド・クンボ(イタリア)《STAR FISHERMAN》
13. 佐藤慈男(愛知)《重力推進―石舟》
14. ジョン・デイブ・シエロ(フィリピン)《DO NOT POP !》 (構想図)
15. ユ・チョン・フアン(台湾)《Dream Catcher》 (構想図)

・UBEビエンナーレライブラリー 実物制作指定模型作品展/入選模型作品展


4. 素材と形態―彫刻の見方

 1-1. 素材ごとに見る―

西洋の伝統的な彫刻素材である大理石のほか、耐久性のある御影石などが利用される

 1-2. 素材ごとに見る―金属(鉄、スチール、ステンレス、銅)

鏡面仕上げ、塗装のほか、銅の場合はパティナ(緑青)によって腐食を防止する

 1-3. 素材ごとに見る―その他(ポリエステル樹脂、ガラス)

ポリエステル樹脂:自由度の高い造形表現を追求できる

ガラス:周囲の風景を透かし見ることができる

 2-1. 表現の傾向ごとに見る―抽象性

幾何学的形態、生物的形態など形の面白さを味わう

 2-2. 表現の傾向ごとに見る―具象性・キャラクター性

親しみやすさ、ランド・マーク的存在

 2-3. 表現の傾向ごとに見る―遊具性・装置性

設置環境における人との関わりを意識


5. 市内の彫刻

16. 澄川喜一《そりのあるかたち》 1981年 第9回現代日本彫刻展 毎日新聞社賞
17. 伊藤憲太郎《SEED 増殖》 1999年 第18回現代日本彫刻展 宇部興産株式会社賞
18. 大井秀規《Gravitation》 2009年 第23回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)宇部興産株式会社賞・市民賞


6. その他

彫刻×踊る・舞う2019
開会式
・UBEアートフェスタ:アンノヒデアキノセカイ×海洋堂エヴァンゲリオンフィギュアワールド
  常盤町1丁目スマイルマーケット2階(旧井筒屋宇部店) 9/14~11/24


7. まとめ

 ・公募展

―登竜門(=若手作家の発表機会)
―授賞制度による奨励と権威づけ
―選考基準や審査過程に対する批判
―公募展と企画展/グループ展と個展

 ・現代彫刻の見方

―木、石(自然素材)/合金、金属/FRP(新素材)
―抽象/具象・キャラクター/遊具・装置
―「素材別」に「傾向」を見る
―UBEビエンナーレは、模型→実制作の比較も見どころ
―周期展としての面白さ


◆鑑賞のポイント

 1. 彫刻の鑑賞

1. 360度ぐるりと回って様々な角度から鑑賞できる→自分が歩き回ることで、美しく見える視点を見つけ出す。
2. 素材と造形の関わりを分析→木/石/ブロンズ/鉄/新素材、具象/抽象/プロジェクト型

 2. 野外彫刻の鑑賞

1. 天気(光)によって見え方が変わる(晴れ/曇り、朝/昼/夕暮れ時/夜のライトアップ)
2. 周りの風景との調和(公園で見る彫刻/通りで見る彫刻)

 3. UBEビエンナーレの鑑賞

1. 2年に1度開催される周期展なので、継続的に鑑賞して各回ごとの違いや推移を追いかける
2. 偶数年の「模型展」、奇数年の「本展」の両方を見て、模型が実物制作された際の変化や出来栄えを感じ取る
3. 彫刻の丘における「配置の妙」(どの作品がどこに設置されているか)について思いを巡らす
4. 彫刻の丘での展示の様子と街なかに設置された際の作品の雰囲気の違いを味わう
5. 「彫刻のまち宇部」の発展の様子を、約60年に渡る彫刻史の展開と重ねて味わう