あいちトリエンナーレ2019 情の時代(豊田)


1. あいちトリエンナーレ2019 スライド

会期: 2019年8月1日~10月14日(75日間)
会場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、豊田市美術館、名古屋・豊田市内のまちなか
主催:あいちトリエンナーレ実行委員会
テーマ:情の時代(Taming Y/Our Passion) スライド
芸術監督:津田大介(ジャーナリスト、早稲田大学教授)


2. 豊田市美術館・豊田市駅周辺

1. スタジオ・ドリフト(オランダ, 2007設立- )《Shylight》 (部分)
2. レニエール・レイバ・ノボ(キューバ, 1983- )《革命は抽象である》 (部分)
3. 高嶺格(1968- )《反歌:見上げたる 空を悲しも その色に 染まり果てにき 我ならぬまで》
4. 和田唯奈(しんかぞく)(1989- )《レンタルあかちゃん》 (部分)


3. 「表現の不自由展、その後」をめぐる経緯

中止に到るまでの経緯

7月31日 トリエンナーレ内覧会とオープニング・セレモニー
     この日から事務局に抗議電話が来る
8月1日 トリエンナーレ初日=主に事務局に抗議電話、メール、ファックスが殺到
  2日 殺到が続き、県美術館にガソリンテロ予告の脅迫ファックスが届く
    芸術監督から不自由展の実行委員会に中止の提案を伝達
  3日 現場の状況を見て、会長と芸術監督の判断で展示が中止される
メディア型ソフト・テロの件数:電話3,936件、メール6,050件、Fax393件(8月31日まで、大部分が1~3日に集中)

10/5開催の国際フォーラム、山梨俊夫氏の発表スライドより


問題視された作品

5. キム・ソギョン(韓国, 1965- )/キム・ウンソン(韓国, 1964- )《平和の少女像》
6. 大浦信行(1947- )《遠近を抱えて》


中止後と検証委員会の立ち上げ

8月6日 トリエンナーレ参加作家からの声明が続く(9月25日現在88組)
 展示中止、展示変更をする作家が増える(現在、海外作家13名、国内作家2名)
8月9日 愛知県が「愛知トリエンナーレのあり方検証委員会」を立ち上げる

10/5開催の国際フォーラム、山梨俊夫氏の発表スライドより


展示変更の様子

・閉鎖された「表現の不自由展、その後」会場
愛知芸術文化センター前
・藤井光(1976- )《無情》(展示休止)
・モニカ・メイヤー(メキシコ, 1954- )《The Clothesline》 (展示変更)
・閉鎖された「表現の不自由展、その後」会場のその後
・モニカ・メイヤーによる応答


あいちトリエンナーレのあり方検証委員会

8月16日 第1回検証委員会で委員会の役割を表明(それまでの事実経過の検証と将来への提案、提言)
9月17日 第2回検証委員会
  21日 検証委員会の一環で、出品作家と県民の意見を聞く場として国内フォーラムを開く
  25日 第3回検証委員会 検証結果を報告する「中間報告」を発表
     検証委員会は今後の方策に向けて検討委員会と改称

10/5開催の国際フォーラム、山梨俊夫氏の発表スライドより


現状[10/5時点での]

現在、トリエンナーレのキュレーター・チームを中心に、「表現の不自由展、その後」実行委員会とともに、
 *原則もとのままの形で再開する
 *警備と電凸対策として、鑑賞者は申し込み制のガイドツアー方式で見る
 *理解を深めるための教育プログラムの充実
・以上の方向で再開を探っている。

・「SNS上の拡散防止のために展示空間は撮影禁止とする」は、現在協議中
・「県美術館内の無料ゾーンに検証結果の抜粋を情報公開として掲示する」トリエンナーレ事務局が進めている

10/5開催の国際フォーラム、山梨俊夫氏の発表スライドより


あいち宣言(プロトコル)の作成

・今回生じた一部中断に鑑み、あいちトリエンナーレは、この事態を反省し、将来に資するよう、あいち宣言を発表することを画している
・現在、作家たちとキュレーター・チームが中心になり創案を検討中で、会期末までに整えることを目指している
・多様化が進む世界を分断から救い、互いの人権を尊重し合う社会の根幹をなす「表現の自由」を保証し、自由な意見交換が確保される場としてのトリエンナーレを掲げる
・美術が、そして芸術が、そうした社会を作り上げる基本的な力を内包するものであることを謳うことを趣旨とする

10/5開催の国際フォーラム、山梨俊夫氏の発表スライドより


10/8(火)展示再開(66日ぶり)

・1回につき30人の2回、鑑賞はツアー形式
・1回目709人、2回目649人が抽選に参加。20倍超の倍率だった
・10/9以降、定員は増やされたが、撮影写真のSNSへの投稿禁止を約束する同意書の提出が求められた
・10/8午後、河村たかし名古屋市長は、愛知芸術文化センター前の広場で抗議の座り込みを行った(約5~10分)
・出品作家でもある高山明がJ アート・コールセンターを開設し、10/8~14の7日間、12時から20時まで抗議電話に対する、アーティストらによる対応を行った

     https://www.refreedomaichi.net/j-art-call-center

・岡山芸術交流クロージングイベント02ラウンドテーブル(2019/11/24)


5. まとめ

 ・「表現の不自由展、その後」をめぐる経緯

―SNSでの拡散と電凸
―開催組織内部の複雑な人間模様
―連帯、支援、継続的な対話
―状況を「前」へ、よりしなやかな運営体制へ

 ・「萎縮」と「自己検閲」

―「対話」に必要な時間的、人的コスト
―分断と平行線
―表現の自由/不自由→表現に対する責任/無責任
―「一隅を照らす」=自分の持ち場で堅実な仕事をする