岡山芸術交流2019


1. 岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2019 概要 スライド

周期展

タイトル:IF THE SNAKE もし蛇が

会期:2019年9月27日〜11月24日(51日間)

会場:旧内山下小学校、旧福岡醤油建物、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、岡山城、シネマ・クレール丸の内、林原美術館、岡山市内各所

主催:岡山芸術交流実行委員会

総合プロデューサー:石川康晴(石川文化振興財団理事長)

総合ディレクター:那須太郎(TARO NASU 代表/ギャラリスト)

アーティスティック・ディレクター:ピエール・ユイグ(アーティスト)


周期展としての岡山芸術交流

・第1回(2016年)開発 Development
  アーティスティック・ディレクター:リアム・ギリック(イギリス, 1964- )

・第2回(2019年)IF THE SNAKE もし蛇が
  アーティスティック・ディレクター:ピエール・ユイグ(フランス, 1962- )

※トリエンナーレ


あいさつ2019 大森雅夫(岡山芸術交流実行委員会 会長・岡山市長)

・岡山市の中心市街地は、岡山城や岡山後楽園の一帯を中心とする旧城下町とJR岡山駅周辺の2つのエリアを核として長年発展を続けてきました。とりわけ旧城下町エリアは、戦国末期の岡山城開府以来400年以上の歴史を誇る岡山の顔とも言うべきエリアであり、その地で培われてきた文化が今日の岡山らしさや岡山の魅力のルーツとなっています。
・私たちはこの岡山の歴史・文化と芸術の持つ力に着目し、両者を融合させ、新たな価値を創造させるべく、3年前、旧城下町エリアに最先端のコンセプチュアルアートを集結した、国際現代美術展「岡山芸術交流2016」を開催しました。その結果、国内外から延23万4千人もの来場者があり、現代アートには、国境・地域・性別・世代の違いを超えて人と人、まちと人をつなぐ力があることを強く感じました。
・そして、このたび2回目となる「岡山芸術交流2019」を開催します。…(中略)…多くの方に非日常的な現代アートと歴史・文化の魅力が融合した岡山のまち歩きを楽しみながら、新たな視点や気付きを発見していただきたいと考えております。文化・芸術の力が岡山のまちに新たな魅力や価値を創り出していくと確信しています。

出典:『岡山芸術交流2019』プレスリリース、5頁。


あいさつ2016 大森雅夫(岡山芸術交流実行委員会 会長・岡山市長)

・自然災害が少なく、温暖な気候で晴れる日が年間7割を超える岡山は、山陽と山陰、中国と四国、関西と九州を繋ぐ西日本の交通結節点に位置し、その利便性の高さから近年、大都市圏からの移住先としても注目されています。
・岡山城や日本三名園の一つに数えられる岡山後楽園を中心とする旧城下町エリアには、多くの歴史・文化施設が立地し、岡山らしさを感じさせ、アートの香り漂う雰囲気を醸し出しています。
・こうした魅力あふれる岡山の情報発信をさらに進めるとともに、中心市街地の回遊性を高め、街全体の魅力アップを図るため、「芸術」の持つ創造性をいかして、旧城下町エリアをメイン会場とする現代アートの国際展「岡山芸術交流2016」を初めて開催することにしました。
・この展覧会では、開催テーマを「開発」と定めており、現代アートの魅力に触れながら街を歩き、岡山の歴史・文化を再発見し、その素晴らしさを再認識する中で、人と人、街、芸術がそれぞれに出会い、広く「交流」することを通じて、岡山の新たな魅力と賑わいの創出につながっていくことを期待しています。

出典:『岡山芸術交流2016 開発』(岡山芸術交流実行委員会、2016年)、6頁。


あいさつ2016 石川康晴(岡山芸術交流実行委員会 総合プロデューサー)

・岡山は私が生まれ育った故郷であり、会社創業の地でもあります。今まで自分を育て、支えてくれた岡山になんとか恩返しをしていきたい、その思いが今回の岡山芸術交流の原点になっています。
・岡山には、大原美術館の大原孫三郎氏、ベネッセアートサイト直島の福武總一郎氏など、代々企業家が芸術を支援してきた文化があります。これはかなり珍しいことではないでしょうか。僭越ながら私も、次世代としてその大事なバトンを受け継ぎ、先達の功績に恥じることのないよう走り続けたいと考えています。
・この岡山芸術交流で、多様な作品に出会い、それぞれに考えたり、想像力を働かせたりすることは、新しい価値を産み出す「創造力」を育むことになると信じています。自由な想像力と創造力を持った人が集まると、きっと岡山はより魅力的な都市になるでしょう。
・岡山がアートで世界から注目を集める瀬戸内の玄関口として、世界に向けた強い発進力を持つ都市になっていくことを楽しみに、一歩ずつ歩みを進めていきます。

出典:『岡山芸術交流2016 開発』(岡山芸術交流実行委員会、2016年)、7頁。


「あいさつ」から読み取る岡山芸術交流開催のねらいと背景

・税収に直結する「人口」増または維持:交流人口(交通結節点)と定住人口(移住先)
・中心市街地の空洞化対策(回遊性と賑わい創出)⇔自家用車依存社会と郊外型生活
・企業家による芸術庇護の伝統:大原孫三郎、福武總一郎
・芸術=創造力→新しい「価値」の創出


「文化芸術創造クラスター」

“国内外の諸都市で、アートや文化の創造力を活かして都市再生を図る「創造都市」の取り組みが進められている。創造都市の実現にともなう波及効果は、美術館や芸術祭への来訪者増加にともなう交流人口拡大という短期的効果に加えて、創造的な人材の育成・誘致、創造的産業の振興、地域の教育・福祉への貢献、市民活動の活発化など多岐にわたる。”

出典:『文化芸術創造クラスターの形成に向けて』(株式会社日本政策投資銀行 大分事務所、2011年)
http://www.dbj.jp/pdf/investigate/area/kyusyu/pdf_all/kyusyu1105_01.pdf(2016/11/29)


◆もし蛇が

・展覧会「もし蛇が」は、独立した一つの生命体である。それは異なる種類の知的生命形態や化学的、生物学的、アルゴリズム的過程の異種混交に添うように航行する。この特定の設定の存在がもつ一つ一つの特徴は、それぞれの共存状況の条件ゆえに先天的にダイナミックな性質を備えており、偶発的な連続性のモードとして果てし無く成長していく。
・この幼いが複雑なシステムは絶えず自身の適応力を変更しながら、いかなる潜在的な目撃者に対しても無関心を貫く。そして自然発生的な秩序や自己生成、意識を有する素材、意味の置き換えに迅速に反応する。この展覧会はその存在についての数多く存在する仮説の一つとして立ちあらわれるにすぎない。
・「もし蛇が」は、多様な相からなる肖像画ではない。機械のなかの幽霊でもなく、人間の属性や価値観にのみ認識されるアミニズムでもない。それは自らを表現しながらもなお表現することを避ける。奇異なもの、人工的な他者性の帰化、ある奇妙な主体の形成形態。
・「既知」に束縛された合意形成に依拠する現実から旅立つためには、フィクションのもつ不確かな要素が必要だ。不可能と考えられていた世界に手を伸ばすために、それらがどのような世界になりうるか、遊び心を持って想像し、具体的に現実のものとするために。無目的なこのトポロジーは多孔性のフィクションの一種の氾濫であり、ある不確実性の状態へと入り込むクロスフェード、可能性の不安定な形式化の一個の連続体なのだ。

出典:『岡山芸術交流2019』, 9頁


2. 作品紹介

 ◆旧内山下小学校 スライド

1. タレク・アトウィ(レバノン, 1980- )《ワイルドなシンセ》 (部分)
校庭に点在する作品
2. エティエンヌ・シャンボー(フランス, 1980- )《微積分/石》
3. パメラ・ローゼンクランツ(スイス, 1979- )《皮膜のプール(オロモム) (部分)
4. パメラ・ローゼンクランツ《癒すもの(水域) (部分)


 ◆岡山市立オリエント美術館 スライド

5. ライアン・ガンダー(イギリス, 1976- )《摂氏マイナス261度 あらゆる種類の零下》
6. ポール・チャン(香港, 1973-)《トライサゴリアン・ホーガ》
7. ミカ・タジマ(USA, 1975- )《ネガティブ・エントロピー(黒住教の神社、日拝、赤、シングル)》, 《ネガティブ・エントロピー (ストライプインターナショナル、経理部、ミント、シングル)
8. メリッサ・ダビン&アーロン・ダヴィッドソン《磁心(岡山のために) (部分)


 ◆岡山県天神山文化プラザ スライド

9. ミカ・タジマ《フォース・タッチ(からだ)》, 《ニュー・ヒューマンズ》
10. ミカ・タジマ《ニュー・ヒューマンズ》
11. ジョン・ジェラード(アイルランド, 1974-)《アフリカツメガエル(宇宙実験室) 2017年 (部分)


 ◆林原美術館 スライド

12. ピエール・ユイグ(フランス, 1962-)《2分、時を離れて》 2000年
13. ヤン・ヴォー(ベトナム, 1975-)《我ら人民は(部分) 2011-13年


 ◆市内

14. ミカ・タジマ《ヒューマン・シンス(岡山)


3. 第1回展のレガシー

15. ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス《より良く働くために》 1991/2016年
16. ローレンス・ウィナー《あっしゅくされた こくえんのかたまり / このようなほうほうで / ぼうがいにかんして / ちゅうせいしの ながれとともに / あちら こちらに》 2019年
ローレンス・ウィナー作品の比較:左=2019年, 右=2016年
17. ライアン・ガンダー《編集は高くつくので》 (部分)
ライアン・ガンダーの作品があった駐車場


4. まとめ

 ・芸術祭開催のねらい

―人口減(=税収減)対策としての交流・定住人口誘引
―中心市街地の再活性化
―複数会場による回遊性
―文化芸術創造クラスターによる都市の活性化

 ・作品解釈の「余地」

―現代アートの楽しみ方の1つとしての創造的な解釈
―正解はないが妥当性は必要
―解釈が固定される作品は「つまらない」
―創造的な解釈方法のレパートリーを多く持つことが心の豊さにつながる(やわらか頭を作る)