美学・美術史特殊講義二〇一九


期末試験問題概略告知

1.講義で紹介した展覧会について基礎的な知識を問う/○×問題/10問/各2点(20点)

2.ヴェネツィア・ビエンナーレについて解説した文の空欄に適切な用語を選んで文章を完成させよ/穴埋め問題・選択肢あり/10問/各2点(20点)

3.企画展について、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ/論述問題・用語指定/字数制限なし/20点

4.「ヨーロッパ絵画 美の400年」展の出品作品を二つ選び、それぞれ作者名、作品名、制作年を明記した上で、両者を関連づけて論述せよ/論述問題・自由形式/字数制限なし/40点


成績評価方法

試験:100点満点×0.9(計90点)

授業への参加度をオピニオンシートへの記述等をもとに加算(10点程度)


美学・美術史特殊講義(美術史)試験問題

実施日時 二〇二〇年一月二十八日(火)
12時50分〜14時20分(90分)

 

(各二点、計二〇点)

一、次に示される(1)〜(10)の短文のうち、内容の正しいものに○印を、誤ったものに×印をそれぞれ解答用紙の各欄に記せ。

 (1) 第二十八回UBEビエンナーレの大賞作品は、三宅之功の《はじまりのはじまり》であり、実物・模型プラン買上げ賞として賞金七百万円が贈られた。

 (2) 「ヨーロッパ絵画 美の四〇〇年」展は、東京富士美術館のコレクションによって構成された巡回展で、山口会場ののち、茨城、富山、大分、宮崎、沖縄の各県立美術館で開催される。

 (3) 岸田劉生の《道路と土手と塀(切通之写生)》、《麗子微笑》はどちらも重要文化財の指定を受けており、東京国立近代美術館に所蔵されている。

 (4) ミヤギフトシの映像作品《花の名前》は、「星とめぐる美術」展において、情熱・戦闘・荒々しさを司る「火星」の章に展示された。

 (5) あいちトリエンナーレ2019は、ジャーナリストの津田大介を芸術監督に迎え、「情報の時代」をテーマとして七十五日間、開催された。

 (6) あいちトリエンナーレ2019の一部として実現され、開幕三日で中止となった「表現の不自由展、その後」は、警備と電凸対策を整え、教育プログラムを充実させて、一〇月八日から会期終了日の十四日まで再開された。

 (7) ヴェネツィア市国際美術展の第三回展では、ジャポニスムの流行を背景に、日本美術が特集展示された。

 (8) 「刃先」を意味するカッティング・エッジは、転じて「最先端」や「過激な」といった意味でファッションやアートに対しても用いられている。

 (9) ベネズエラは、ヴェネツィア・ビエンナーレの主会場ジャルディーニに国別パヴィリオンを持つ国であるが、その国名はヴェネツィアにちなんでいるという説がある。

 (10) 岡山には、大原美術館の大原孫三郎、ベネッセアートサイト直島の福武總一郎など、企業家が芸術支援を行ってきた文化的風土がある。

(各二点、計二〇点)

二、次の文を読み、空欄となっている( A )〜( J )に、のちに記されている(1)〜(30)のうち最も適当と思われる言葉を補い、文を完成せよ。解答用紙には、( A )〜( J )の各欄に該当する言葉を1〜30の番号で記すこと。

 ビエンナーレは( A )年に一度開催される美術展を指す。日本でもあいちトリエンナーレやヨコハマトリエンナーレなど、( B )年に一度開催される美術展が話題を呼ぶようになってきたが、こうした美術展の原型となったヴェネツィア・ビエンナーレは、一八( C )五年、イタリア国王( D )一世と王妃マルゲリータの成婚二十五周年を記念する事業として始まった。当初、ヴェネツィア市国際美術展の名称で始まったが、一九二〇年代にヴェネツィア・ビエンナーレの呼称が一般化した。さらに、一九二八年の歴史資料館の開設を皮切りに、一九三〇年代には、音楽祭、映画祭、演劇祭も新設するなど、ジャンルの幅を広げていった。その後、さらに建築展(一九八〇年開始)、舞踊祭(一九九八年開始)を追加して、現在は七部門となっている。
 ヴェネツィア・ビエンナーレは、右に紹介した通り歴史資料館も含めた七部門からなるが、そのうちの一つである国際美術展もまた、三つの部門を持っている。国際企画展部門、国別参加部門、そして( E )部門である。国際企画展部門では、毎回異なるキュレーターが抜擢され、独自のコンセプトのもとで作家や作品が選定される。二〇一九年に開催された第五十八回展のキュレーターは、ロンドンのヘイワード・ギャラリーのディレクターを務める( F )で、中国の言葉の誤った英訳から生まれた「数奇な時代を生きられますように」というフレーズをタイトルとした。国別参加部門では、各国のキュレーターが独自の企画展を企画するが、日本では、秋田公立美術大学大学准教授の( G )がキュレーターを務め、「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」と題して、美術家、作曲家、人類学者、建築家という異なるジャンルで活躍する人々の共異体(共同体のもじり)の提案を行った。( E )部門は、ビエンナーレ事務局から認定された参加企画展からなる。かつて台湾館として国別参加部門に参加していた企画が、中国の正式参加に伴って、台北市立美術館の企画として( E )部門の枠組みに参加する形をとっているといった事例も見られる。
 これら三部門のうち、国際企画展と国別参加の二部門が、授賞制度の対象となっている。最高賞である金獅子賞は、第五十八回展の国際企画展部門では( H )に、国別参加部門では( I )館に贈られた。( H )の映像作品《ホワイト・アルバム》は、人種問題をめぐる詩的、エッセイ的、人間描写的な内容と表現を評価された。( I )の《太陽と海(マリーナ)》は、オペラを素材とした実験的な表現と、建物の斬新な使用法を評価された。そのほか、ベテランのアーティストに贈られる栄誉金獅子賞、若手作家に贈られる銀獅子賞、そしてトロフィーなしの特別表彰がある。金獅子賞、銀獅子賞のトロフィーは、ヴェネツィアの守護聖人( J )を象徴する有翼の獅子をかたどったものになっている。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展が「美術のオリンピック」になぞらえられるのは、こうした授賞制度のうち、国別に賞を競う点に着目したものであるが、近年では、一九九九年に開始された国際企画展部門への注目度が大きくなっていることから、こうした比喩も実態に合わなくなってきていると言える。

(1)一 (2)二  (3)三  (4)四  (5)五  (6)六  (7)七  (8)八  (9)九
(10)アーサー・ジャファ  (11)ヴィットーリオ・エマヌエーレ  (12)ウンベルト  
(13)オーストラリア  (14)オトボング・ンカンガ  (15)公募展  (16)下道基行  
(17)ジミー・ダーラム  (18)聖マタイ  (19)聖マルコ  (20)聖ヨハネ  
(21)テレサ・マルゴレス  (22)特別展  (23)服部浩之  (24)ハリス・エパミノンダ  
(25)並行展  (26)ベルギー  (27)安野太郎  
(28)ラルフ・ルゴフ  (29)リトアニア  (30)ルドヴィーコ  

 

 

(二〇点)

三、企画展について、指定される五つの用語を適切に用いて論述せよ。なお、各語の初出時には傍線を引くこと(字数制限なし)。

コレクション     テーマ     借用     研究成果     ミッション

 

 

(四〇点)

四、「ヨーロッパ絵画 美の四〇〇年」展の出品作品を二つ選び、それぞれ作者名、作品名、制作年を明記した上で、両者を関連づけて論述せよ(字数制限なし)。

 

 

評価基準は、秀=一〇〇〜九〇、優=八九〜八〇、良=七九〜七〇、可=六九〜六〇、不可=五九〜〇である。本試験の結果をもとに各自の出席数による調整点等を加算したものを評点とする。また、三、四の解答のうち優れたものは、試験問題を蓄積し、今期以後の学生の参考に供するため、ウェブ上で公開する予定である。


一、二の解答