美学・美術史概論(美術史) 二〇二一


<第十三講> マドリード、プラド美術館ほか

ヨーロッパ地図

◆太陽の国の都―マドリード

かつてのスペイン帝国(太陽の沈まない国)の首都

16-17世紀=「黄金の世紀」

プラド美術館=スペイン王家の美術品蒐集。 1819年開館(王立美術館として)1868年国立美術館化、1872年国内の修道院の絵画を集約。

英・仏・独など政治的・宗教的に敵対関係にあった国の美術品は少なく、スペイン絵画の体系的展示と、フランドル、ヴェネツィア派の収集に特徴がある。

◆スペイン王家

  ハプスブルク(アブスブルゴ)

・カルロス1世(1516年 - 1556年) (兼神聖ローマ皇帝カール5世、1519年 - 1556年)

フェリペ2世(1556年 - 1598年) (兼ポルトガル王フィリペ1世、1581年 - 1598年)

・フェリペ3世(1598年 - 1621年) (兼ポルトガル王フィリペ2世、1598年 - 1621年)

フェリペ4世(1621年 - 1665年) (兼ポルトガル王フィリペ3世、1621年 - 1640年)

・カルロス2世(1665年 - 1700年)

マドリード主要部地図


プラド美術館(内部)

111. カンピン《寄進者ヴェルルと洗礼者ヨハネ》《聖バルバラ》、1438年、油彩・板、各101×47cm、プラド美術館

111. カンピン《聖バルバラ》(部分:塔)

111. カンピン《寄進者ヴェルルと洗礼者ヨハネ》(部分:凸面鏡)

美術用語(55) ヨハネ(洗礼者)

112. ボス《快楽の園》、1500-05年、油彩・板、中央パネル、220×195cm、左右各220×97cm、プラド美術館

112. ボス《快楽の園》(扉外側) ※天地創造3日目:大地、海、草木の創造

112. ボス《快楽の園》(部分:左パネル)

112. ボス《快楽の園》(部分:エヴァの創造)

112. ボス《快楽の園》(部分:楽園の動物たち)

112. ボス《快楽の園》(部分:中央パネル)

112. ボス《快楽の園》(部分:左下)

112. ボス《快楽の園》(部分:右中段)

112. ボス《快楽の園》(部分:動物にまたがった男たちが泉の周囲を巡る)

112. ボス《快楽の園》(部分:右パネル)

112. ボス《快楽の園》(部分:楽器の拷問具)

112. ボス《快楽の園》(部分: 樹幹人間:自画像?)

美術用語(56) 北方ルネサンス美術


美術史の方法論I 写真図版の活用:

・作品比較
  →分割して所蔵されている作品を再構成
  →真贋、工房作等の検討

・細部の研究=拡大写真の活用

・X線写真=下書きや修正箇所の発見

・美術史研究の成果→美術全集や展覧会図録に結実


113. エル・グレコ《受胎告知》、1597-1600年、油彩・カンヴァス、315×174cm、プラド美術館

113. エル・グレコ《受胎告知》(部分:燃える柴)

113. エル・グレコ《受胎告知》(部分:マリアと天使)

113. エル・グレコ《受胎告知》(部分:奏楽の天使)

113. エル・グレコ《受胎告知》 、同一主題作品との比較

114. ベラスケス《ラス・メニーナス(フェリペW世の家族)、1656年頃、油彩・カンヴァス、318×276cm、プラド美術館

114. ベラスケス《ラス・メニーナス》(部分:王女マルガリータと付き人)

114. ベラスケス《ラス・メニーナス》 と35. 《青い服のマルガリータ》

114. ベラスケス《ラス・メニーナス》(部分:ベラスケス)

114. ベラスケス《ラス・メニーナス》(部分:矮人)

115. ベラスケス《織女たち(アラクネの寓話)、1657年頃、油彩・カンヴァス、220×289cm、プラド美術館

115. ベラスケス《織女たち(アラクネの寓話)》 、火災で損傷した後追補された部分

115. ベラスケス《織女たち》(部分:むちを振り下ろすミネルウァ)

116. ムリーリョ《聖ベルナルドゥスに顕現した聖女》、1660年頃、油彩・カンヴァス、311×249cm、プラド美術館

116. ムリーリョ《聖ベルナルドゥスに顕現した聖母》(部分:聖母の乳を受ける聖ベルナルドゥス)

117. ゴヤ《裸のマハ》、1795年、油彩・カンヴァス、98×191cm、プラド美術館

117. ゴヤ《裸のマハ》/《着衣のマハ》(全体図)

117. ゴヤ《裸のマハ》/《着衣のマハ》(上半身)

118. ゴヤ《1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺》、1814年、油彩・カンヴァス、268×347cm、プラド美術館

118. ゴヤ《1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺》(部分:銃殺される市民)

119. ゴヤ《わが子を食うサトゥルヌス》、1821-23年、油彩・カンヴァス、143×81cm、プラド美術館

119. ゴヤ《わが子を食うサトゥルヌス》(部分:顔)

119. ゴヤ《わが子を食うサトゥルヌス》 「聾者の家」における配置の再現案

美術用語(57) クロノス


国立ソフィア王妃芸術センター

120. ピカソ《ゲルニカ》、1937年5月1日〜6月4日、油彩・カンヴァス、349.3×776.6cm、国立ソフィア王妃芸術センター

《ゲルニカ》の帰還

卒論のヒントJ 戦争と芸術


 ◆まとめ

・マドリード=スペイン帝国の首都

・16-17世紀=黄金の世紀:カルロス1世〜2世

・フェリペ4世=美術コレクター

・プラド美術館

・国立ソフィア王妃美術センター

・美術用語:ヨハネ(洗礼者)、北方ルネサンス美術、クロノス

・美術史の方法論:写真図版の活用


作家一覧

1.ロベルト・カンピン(1375頃-1444)Robert Campin

2.ヒエロニムス・ボス(1450-1516)Hieronymus Bosch

3.エル・グレコ(1541-1614)El Greco

4.ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)Diego Velázquez

5.バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1617-1682)Bartolomé Esteban Perez Murillo

6.フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)Francisco José de Goya y Lucientes

7.パブロ・ピカソ(1881-1973)Pablo Picasso


総括

「5W 1H」

 =When, Where, Who, What, Why, How. いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、いかに

美術史学の「5W 1H」

 When + Who いつ(時代、制作年)+誰が(作者、批評家、パトロン、コレクター)

 What + Where 何が(作品)+どこに(美術館、都市、国、地域)

 Why + How なぜ(時代背景、社会的事件、個人史上の出来事)+いかに(様式や革新的表現)

「5W1H」に着目して4つの作品を掘り下げる

パリ、ルーヴル美術館と《モナ・リザ》、1503-06年

ミュンヘン、アルテ・ピナコテークとブーシェ《ポンパドゥール夫人の肖像》、1756年

ロンドン、テート・ブリテンとミレイ《オフィーリア》、1851-52年

※シェイクスピア『ハムレット』第4幕第7場

ガートルード「一本の大きな柳の木が、川面にせり出しています。そこでは、澄んだ水が鏡のように銀の葉裏を映していました。その柳の幹のところで、オフィーリアは美しい花冠を編んでいたのです。キンポウゲ、イラクサ、ひな菊、それにシラン、口の悪い羊飼いたちはいやらしい名で呼びますが、汚れを知らぬ乙女たちは死人の指と呼ぶ、あの紫色の蘭の花です。そうして作った花冠を小枝にかけようと、よじ登った瞬間に、木は折れました。オフィーリアの美しさを羨んだ川が、花冠と共に、彼女を迎え入れたのです。しばらくの間、ドレスはいっぱいに広がって、せせらぎの中を、オフィーリアは人魚のようにただよってゆきました。古い讃美歌の一節を口ずさみ、死も恐れず、生まれながらの水の乙女のように、静かに流されていったのです。しかし、ドレスが水を吸い、その重さで川の中へと引きずりこまれるまでに、長い時間はかかりませんでした。美しい歌声は、川底の泥の中へと消えていったのです。」

西洋比較演劇研究会編『ベスト・プレイズ』(論創社、2011年)p.200


 自分で美術史を学び続けるために

  (1)読書案内

1. 高階秀爾『名画を見る眼』

 (2)展覧会指南

 1. 国内で開催される企画展について

※地方都市で安めに暮らし、お金を貯めて海外へ出かける

 2. 展覧会図録/絵葉書について

 3. インターネット・サイトについて

 4. 事典類