<第十三講> マドリード、プラド美術館ほか
◆太陽の国の都―マドリード
かつてのスペイン帝国(太陽の沈まない国)の首都
16-17世紀=「黄金の世紀」
プラド美術館=スペイン王家の美術品蒐集。 1819年開館(王立美術館として)、1868年に国立美術館化、1872年国内の修道院の絵画を集約。
英・仏・独など政治的・宗教的に敵対関係にあった国の美術品は少なく、スペイン絵画の体系的展示と、フランドル、ヴェネツィア派の収集に特徴がある。
◆スペイン王家
ハプスブルク(アブスブルゴ)朝
・カルロス1世(1516年 - 1556年) (兼神聖ローマ皇帝カール5世、1519年 - 1556年)
・フェリペ2世(1556年 - 1598年) (兼ポルトガル王フィリペ1世、1581年 - 1598年)
・フェリペ3世(1598年 - 1621年) (兼ポルトガル王フィリペ2世、1598年 - 1621年)
・フェリペ4世(1621年 - 1665年) (兼ポルトガル王フィリペ3世、1621年 - 1640年)
・カルロス2世(1665年 - 1700年)
111. カンピン《寄進者ヴェルルと洗礼者ヨハネ》《聖バルバラ》、1438年、油彩・板、各101×47cm、プラド美術館
111. カンピン《聖バルバラ》(部分:塔)
111. カンピン《寄進者ヴェルルと洗礼者ヨハネ》(部分:凸面鏡)
112. ボス《快楽の園》、1500-05年、油彩・板、中央パネル、220×195cm、左右各220×97cm、プラド美術館
112. ボス《快楽の園》(扉外側) ※天地創造3日目:大地、海、草木の創造
112. ボス《快楽の園》(部分:左パネル)
112. ボス《快楽の園》(部分:エヴァの創造)
112. ボス《快楽の園》(部分:楽園の動物たち)
112. ボス《快楽の園》(部分:中央パネル)
112. ボス《快楽の園》(部分:左下)
112. ボス《快楽の園》(部分:右中段)
112. ボス《快楽の園》(部分:動物にまたがった男たちが泉の周囲を巡る)
112. ボス《快楽の園》(部分:右パネル)
112. ボス《快楽の園》(部分:楽器の拷問具)
◆美術史の方法論I 写真図版の活用:
・作品比較
→分割して所蔵されている作品を再構成
→真贋、工房作等の検討・細部の研究=拡大写真の活用
・X線写真=下書きや修正箇所の発見
・美術史研究の成果→美術全集や展覧会図録に結実
113. エル・グレコ《受胎告知》、1597-1600年、油彩・カンヴァス、315×174cm、プラド美術館
114. ベラスケス《ラス・メニーナス(フェリペW世の家族)》、1656年頃、油彩・カンヴァス、318×276cm、プラド美術館
114. ベラスケス《ラス・メニーナス》(部分:王女マルガリータと付き人)
114. ベラスケス《ラス・メニーナス》 と35. 《青い服のマルガリータ》
114. ベラスケス《ラス・メニーナス》(部分:ベラスケス)
115. ベラスケス《織女たち(アラクネの寓話)》、1657年頃、油彩・カンヴァス、220×289cm、プラド美術館
115. ベラスケス《織女たち(アラクネの寓話)》 、火災で損傷した後追補された部分
115. ベラスケス《織女たち》(部分:むちを振り下ろすミネルウァ)
116. ムリーリョ《聖ベルナルドゥスに顕現した聖女》、1660年頃、油彩・カンヴァス、311×249cm、プラド美術館
116. ムリーリョ《聖ベルナルドゥスに顕現した聖母》(部分:聖母の乳を受ける聖ベルナルドゥス)
117. ゴヤ《裸のマハ》、1795年、油彩・カンヴァス、98×191cm、プラド美術館
117. ゴヤ《裸のマハ》/《着衣のマハ》(全体図)
117. ゴヤ《裸のマハ》/《着衣のマハ》(上半身)
118. ゴヤ《1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺》、1814年、油彩・カンヴァス、268×347cm、プラド美術館
118. ゴヤ《1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺》(部分:銃殺される市民)
119. ゴヤ《わが子を食うサトゥルヌス》、1821-23年、油彩・カンヴァス、143×81cm、プラド美術館
119. ゴヤ《わが子を食うサトゥルヌス》 「聾者の家」における配置の再現案
・国立ソフィア王妃芸術センター
120. ピカソ《ゲルニカ》、1937年5月1日〜6月4日、油彩・カンヴァス、349.3×776.6cm、国立ソフィア王妃芸術センター
◆まとめ
・マドリード=スペイン帝国の首都
・16-17世紀=黄金の世紀:カルロス1世〜2世
・フェリペ4世=美術コレクター
・プラド美術館
・国立ソフィア王妃美術センター
・美術用語:ヨハネ(洗礼者)、北方ルネサンス美術、クロノス
・美術史の方法論:写真図版の活用
作家一覧
1.ロベルト・カンピン(1375頃-1444)Robert Campin
2.ヒエロニムス・ボス(1450-1516)Hieronymus Bosch
3.エル・グレコ(1541-1614)El Greco
4.ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)Diego Velázquez
5.バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1617-1682)Bartolomé Esteban Perez Murillo
6.フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)Francisco José de Goya y Lucientes
7.パブロ・ピカソ(1881-1973)Pablo Picasso
総括
「5W 1H」
=When, Where, Who, What, Why, How. いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、いかに
美術史学の「5W 1H」
When + Who いつ(時代、制作年)+誰が(作者、批評家、パトロン、コレクター)
What + Where 何が(作品)+どこに(美術館、都市、国、地域)
Why + How なぜ(時代背景、社会的事件、個人史上の出来事)+いかに(様式や革新的表現)
「5W1H」に着目して4つの作品を掘り下げる
・ミュンヘン、アルテ・ピナコテークとブーシェ《ポンパドゥール夫人の肖像》、1756年
・ロンドン、テート・ブリテンとミレイ《オフィーリア》、1851-52年
※シェイクスピア『ハムレット』第4幕第7場
ガートルード「一本の大きな柳の木が、川面にせり出しています。そこでは、澄んだ水が鏡のように銀の葉裏を映していました。その柳の幹のところで、オフィーリアは美しい花冠を編んでいたのです。キンポウゲ、イラクサ、ひな菊、それにシラン、口の悪い羊飼いたちはいやらしい名で呼びますが、汚れを知らぬ乙女たちは死人の指と呼ぶ、あの紫色の蘭の花です。そうして作った花冠を小枝にかけようと、よじ登った瞬間に、木は折れました。オフィーリアの美しさを羨んだ川が、花冠と共に、彼女を迎え入れたのです。しばらくの間、ドレスはいっぱいに広がって、せせらぎの中を、オフィーリアは人魚のようにただよってゆきました。古い讃美歌の一節を口ずさみ、死も恐れず、生まれながらの水の乙女のように、静かに流されていったのです。しかし、ドレスが水を吸い、その重さで川の中へと引きずりこまれるまでに、長い時間はかかりませんでした。美しい歌声は、川底の泥の中へと消えていったのです。」
西洋比較演劇研究会編『ベスト・プレイズ』(論創社、2011年)p.200
自分で美術史を学び続けるために
(1)読書案内
1. 高階秀爾『名画を見る眼』
(2)展覧会指南
1. 国内で開催される企画展について
ルーヴル美術館展、メトロポリタン美術館展、正倉院展など有名コレクションを紹介する展覧会の開催情報をチェックする(artscapeなどの専門サイトや情報誌、新聞など)
地元の美術館の企画展を見続ける
東京、名古屋、京都、大阪、福岡、兵庫、広島など都市部の美術館で開催される巡回展に出掛ける
※地方都市で安めに暮らし、お金を貯めて海外へ出かける
2. 展覧会図録/絵葉書について
展覧会図録は書店で買えないことが多い。古書かその場で
自分が気になる作品の絵葉書を複数買っておいてお礼状などに使用
3. インターネット・サイトについて
Google Arts & Cultureやルーヴル美術館公式サイトなど、高精細画像がどんどんネットで閲覧できるようになっている
Wikipediaは左のメニューにある英語版、フランス語版、イタリア語版等の内容も確認するのがお勧め(より詳しい解説や多くの図版が見られる場合が多い)
4. 事典類
Jane Turner ed. Dictionary of Art, New York: Grove, 1996. 総図703.3/T875