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「精細管を含む卵巣」――31年前の症例を国際誌 Theriogenologyの総説で再考


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今から31年前の1995年、角川博哉教授らは、単子として生まれた雌牛の卵巣に精細管に似た構造を発見し国際誌 Theriogenologyで発表しました。 胚移植から出生までの経過を記録した単子キメラとして、世界で初めて報告した症例です。その症例を31年後、現在の研究成果と照らして再検討した角川教授の総説「Singleton Freemartinism in Cattle: A Structured Narrative Review and Historical Case Reappraisal」が、国際学術誌 Theriogenology として採択されました。

ウシのフリーマーチンは、一般に雄と雌の双子が胎内で血流を共有することで生じます。しかし、雌1頭だけが生まれた場合、出生時の姿から妊娠中の経過を知ることはできません。今回の総説は、こうした単子の症例について、雄由来のDNAの検出と生殖器の発達に関する所見を区別し、既存の研究を整理しながら診断上の課題を検討しています。

1995年の原著論文は、角川教授が筆頭著者として発表した最初の国際論文でした。ウシの全ゲノム情報がまだ利用できない時代に、PCR法によって、通常の染色体検査では確認できなかった雄由来のDNAを検出しました(ウシゲノムの解読成果は『Science』誌の2009年4月24日号に発表され、同号の表紙でも取り上げられました)。その牛の生殖器は外見上、大きな異常が見られなかった一方、卵巣の一部に精細管に似た構造が観察されました。

角川教授は当時、この珍しい現象をウシ繁殖研究の「ストライクゾーンの隅をつく変化球」のように感じていたと振り返ります。その後は、分娩後の乳牛における栄養と内分泌という、繁殖研究の中心的な課題に取り組んできました。長年の研究を経て、最初の国際論文の症例に立ち返り、一つの症例を超えて単子フリーマーチンの研究全体を見渡す総説にまとめました。

当時の論文は、顕微鏡写真を印刷用の台紙に貼り、原稿とともに国際郵便で出版社へ送って制作されました。後年PDF化された論文では写真が黒くつぶれ、組織の細部を確認しにくくなっていました。そのため、角川教授は保管していた原版や未掲載写真を、まず山口大学学術機関リポジトリで公開し、症例を再び検討できる資料として残しました。次に、Theriogenology編集部に、Supplemntとしてウェブに画像を追加できないかと相談しました。回答は、いかなる理由であれ、審査を経ていない画像を追加できないというものでした。ただし、審査を経た上でなら総説としてアクセプトしてもよいという回答を得ました。そのため総説の投稿として、挑戦していました。医学系文献データベースのPubmedやScopusの他、農業系文献データベースのAGRISでの、合計数百の古今東西の論文を確認して、約60ページの原稿としてまとめました。


若手時代の観察と写真が、31年後に国際誌の総説へとつながりました。 過去の症例を保存するだけでなく、現在の知見で問い直し、次の研究に引き継ぐ成果です。


関連資料のリンク先
1995年の原著論文(図は黒くつぶれている) リンク    
写真資料アーカイブ 山口大学共同リポジトリ リンク




 
長年 保存していたフィルムやプリント。保存状態が良かったのでスキャンして国際的に日の目をみました。