アスラフンさんの研究成果が、国際ジャーナルであるReproduction, Fertility, and Develoipmentに発表され、表紙の写真にも。



バングラデシュからの留学生のアスラフンさんの論文が、世界中の繁殖や産婦人科の研究者が読むReproduction, Fertility, and Development誌に発表されます。しかも表紙(Issue 6)の写真にも採用されることになりましたので、とても高い評価です。

卵管は、新たな生命の誕生の場という大切な臓器です。すなわち、卵巣から排卵された未受精卵が下降し、その卵子をめざして射出された精子が卵管をのぼります。卵管の状態が良好で、優れた舞台として働いていて、タイミングよく精子と卵子が出会えれば、受精という生命誕生のためのイベントが起こり、受精卵になり、分割をしながら発生を開始し、胚へと発達していきます。

ところが婦人を含め、削痩状態や肥満状態の雌動物では、卵管における受精や受精後の胚発生で障害が生じ、その結果、正常状態と比較すると産子率が低下することが知られています。しかしメカニズムは長らく不明でした。アスラフンさんはこのメカニズムの解明に取り組みました。そして、

(1)卵管の膨大部や狭部の最も内側の層で、精子、卵子、受精卵に促進物質を送り届けやすい粘膜層において、MIFという受精や発生を促進するタンパクが発現していることを発見しました。

(2)さらに肥満状態や削痩状態のウシの卵管では、正常なウシの卵管よりも有意に、MIFのmRNAやタンパクの発現量が低下していることも発見しました。

Reproduction, Fertility, and Development誌のエディターやレフェリーからは、論文を非常に高く評価され、特に次のような評価を得ています:

(A)未だ改良が求められている、受精卵移植のための体外受精・体外培養用の培養液の改良に大きく貢献する

(B)日本の和牛以外にも、世界中の乳牛やヒツジなどの動物、さらに婦人にとっても極めて重要な発見である


なお表紙の写真はMIFの発現量を示す免疫染色の写真で、上段は削痩状態、中段は正常状態、下段は肥満状態の卵管の切片です。左列は低倍率、中央列は中倍率、右列は高倍率です。また矢印は、粘膜層でMIFを発現している細胞を示しています。

英語アブストラクトは次の通りです。

Suppressed expression of macrophage migration inhibitory factor in the oviducts of lean and obese cows.
Nahar A, Kadokawa H.

Oviducts synthesise macrophage migration inhibitory factor (MIF) to promote sperm capacitation and embryogenesis. This study aimed to test a hypothesis that the oviducts of obese cows may express MIF at a lower level than those of normal and lean cows. Ampullar and isthmic oviduct sections were collected from lean (n = 5; body condition score (BCS) on a 5-point scale, 2.5), normal (n = 6; BCS, 3.0) and obese (n = 5; BCS, 4.0) Japanese Black cows. MIF mRNA and protein were extracted from ampullae and isthmuses and their levels measured by real-time polymerase chain reaction or western blot. Immunohistochemistry was performed on frozen sections of ampullae and isthmuses by using antibodies to MIF. MIF mRNA and protein expression were lower in the obese and lean groups than in the normal group (P < 0.05). Immunohistochemistry revealed that the primary site of MIF expression in the ampulla and isthmus is the tunica mucosa. In conclusion, obese cows have suppressed MIF expression in the ampullae and isthmuses of their oviducts, as hypothesised, but, unexpectedly, MIF expression was also lower in lean cows.


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