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第165回日本獣医学会学術集会に参加し、学生の齋藤理紗さんが日頃の研究成果を発表してきました。今回は、麻布大学が主催でオンライン開催されました。

発表したタイトルはつぎです:

新規ゴナドトロフ刺激因子のクジラの脳での探索:近縁種のウシと異なる驚異的な寿命と繁殖可能年数の謎に挑む


日本鯨類研究所の坂東武治先生と田村力先生、また大阪公立大学の北村進一先生と小谷口美也子先生との共同研究です。

 

これまでに学会発表では対象となっていなかったクジラを用いて、近縁種のウシと比較した先進的な成果の発表はとても好評でした。

オンライン発表のための動画作成のために、ほぼ一週間を費やしました

以下が要旨の一部です。

 
【背景】
 私達はFSHLHを分泌する下垂体前葉のゴナドトロフで、GnRH受容体と複合体を形成する新規受容体、GPR61を発見した。リガンドは視床下部等の脳が合成するエタノールアミン・プラズマローゲン(EPl)である。若牛脳から抽出したEPlを培養ウシゴナドトロフに作用させると、GnRHが存在しなくても強力にFSH分泌を刺激する。しかし老牛脳のEPlには刺激作用が無い。構造上の理由からEPlは多様な分子種からなり、分子種構成の違いがこの老若差の理由である。なお分子種の分析は、新開発の2次元LC-MS法で可能になった。

【目的】
 進化上ではウシと近縁だが平均寿命や繁殖可能年数が驚異的に長いクジラの、脳内EPlには特有の分子種が存在するか調べた。

【材料と方法】
 未経産の黒毛和種牛の下垂体前葉から細胞を調整した。初代培養後に、雌クジラ(商業捕鯨によるヒゲクジラ亜目ニタリクジラ)や未経産牛の脳EPlを添加し、FSHLHの分泌量を比較した。次に2次元LCMS法により、若牛脳、老牛脳、またクジラ脳のEPlを分析し群間差を解析した。最後にRNAseq法を雌ウシや雌クジラの視床下部に用い、EPl合成・分解酵素のRNA発現量を比較した。

【結果】
 クジラ脳EPlは、ウシ下垂体前葉細胞からのFSH分泌の他に、LH分泌までも刺激した。次に2次元LCMS法により、クジラ脳、ウシ脳の各々に固有の分子種を発見した。また両種の脳に存在するが、種間の有意差がある分子種も発見した。最後にRNAseq法により、クジラ脳で多い分解酵素や、ウシ脳で多い分解酵素を発見した。

以上のように、脳内EPlの重要な種差が発見された。 




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