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平野 均先生の今日この頃シリーズ

                       

睡眠相後退症候群(DSPS)、

               今日この頃

 快眠・快食・快便は健康のバロメータです。いずれも本能の領域に属する活動であり、自律神経系によって営まれます。たかが寝ること・食べることなのですが、便通も含めて苦労している学生さんの多いことには驚かされます。自律神経がうまく働くためには、規則正しい生活が何よりも大切です。しかし、テレビやラジオにインターネットなど、早寝早起きの励行を妨げる誘惑が現代社会には多すぎます。朝起きられずに一コマ目の授業に遅刻したり、運良く間に合っても居眠りしたりしている人はいませんか。

 寝不足に気づき早寝早起きの生活に改めれば、これらの症状はすぐに消えて無くなります。しかし、いくら努力しても、寝付けない人がいます。長期間に亘る睡眠不足のため頭は朦朧として、気がつくと授業中に居眠りをしている。これではいけないとコーヒーを飲んで頑張ってはみるものの、そういうときには眩暈や頭痛がしたりで勉強どころではありません。努力の報われない日が続くといっそあきらめて、授業は昼からになってしまいます。しかし、ひとたびたがが緩んでしまうと昼夜逆転の生活が始まり、授業に出るのがますます辛くなります。

 アルバート・アインシュタイン医科大学のWeitzmanらは、@望ましい時刻に寝付けない(寝入るのは午前2時〜6時頃)、Aそのような状態が少なくとも半年、普通は数年間続いている、B社会生活に縛られない週末や休日・休暇中には困難なく眠れ、時間が経つと自然に目覚める(もちろん昼近くから昼過ぎに)。そういう症状を示す一群の睡眠障害を、「睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome:DSPS)」と命名し報告しました。1981年のことです。現在の診断基準では症状の持続期間は少なくとも一ヶ月間ですので、DSPSと診断される学生さんの数は決して少なくありません。

 電灯の無い暗い部屋でネズミを飼うと、夜昼の手掛かりが無いにもかかわらず、およそ25時間周期で寝たり起きたりの規則正しい活動を続けます。ヒトも暗い洞窟で生活すると、ネズミと同じように25時間近い周期で活動します。これは生物時計(あるいは体内時計)の働きによるもので、左右の視神経が交差する直上の視交差上核がその在りかです。生物時計は時計遺伝子の転写調節(蛋白合成と合成された蛋白による転写抑制)によって、1日を刻むと考えられています。地球の自転(1日)は24時間ですから、生物時計も24時間で1日を刻んでくれると心身(自律神経系)の状態は安定します。

 普段私たちは朝の早い時間帯に光を浴びることによって、ややもすれば遅れがちな生物時計を毎日地球の自転に合わせています。このように朝方目から入る光には時計を前進させる作用がありますが、一方で夕方の光には時計を遅らせる作用があります。未だDSPSの原因は分かっていませんが、生物時計を24時間にリセットする機構に問題がありそうです。朝の光に反応する力が弱いのか、あるいは夕方の光に過敏なのか。DSPSの学生さんが受診するのは、経験上3月下旬から6月上旬頃と9月下旬から10月上旬に多いようです。しかし、昼夜逆転して引き籠もり状態であれば、このような季節性は当てはまりません。

 早起きするよりも夜更かしの方が楽なことから、Weitzmanらは6日間続けて毎日3時間ずつ寝るのを遅らせる方法で睡眠時間を望ましい時間帯に持って行く治療法を考案しました。そうすることによって患者の睡眠時間が短縮し、かつ気分もうんと改善したと述べています。私はこの方法で治療したことはありませんが、遅れている睡眠相が元に戻ると心身の不調の多くは確かに改善します。

 現在保健管理センターで行っている治療法には2種類あります。春から夏にかけては、毎朝戸外を散歩してもらいます。起床後3時間以内を目安に、太陽のもとで身体をできるだけ動かしてもらいます。たっぷり時間の取れる週末には、いつまでも布団の中でもじもじしていないで外を散歩しましょう。秋から冬にかけては、日の出が遅くなります。そのため卓上蛍光灯で机の上を明るくして、勉強することを勧めます。登校前ですので、遅くとも朝6時には起きないと間に合いません。予防としては有効ですが、ひとたび睡眠相が遅れてしまうとこの方法ではなかなか元に戻りません。その場合には高照度光療法を実施します。眼前で5,000 lux程度の高照度を、朝1時間ほど浴びてもらう治療法です。山口大学製の治療器の写真を掲載しておきました。あなたが寝付けずに困っていたら、是非保健管理センターを受診ください。

平成18年5月15日

 

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