摂食障害−その2−、
今日この頃
秋刀魚の塩焼きがおいしい季節になりました。「ご老体が七輪で秋刀魚を焼くので、酸素を浪費して困る。出資者だから文句も言えず…。」と、ぼやく宇宙船の船長に同情したのを覚えています。中学の時に読んだ小説の中での話ですが、頼まれもしない秋刀魚を買って帰るようになったのもこの数年のこと。秋刀魚が恋しいのは、年齢のせいもありそうです。今回は秋刀魚ではなく、主食であるご飯(炭水化物)の話です。
9月上旬頃から無性にご飯や甘いものが食べたくなる。最初のうちは食欲の秋だからと気に掛けないのですが、それにしては体重が鰻登りです。不安と苛々のうちに後期が始まりますが、食欲は一向に落ちる気配をみせません。気付いたらコンビニへ行き、袋いっぱい食べ物を買い込んでいます。中身は菓子パンやクッキー、それにおにぎりも。明日の朝食分も入っているのですが、買ったものはその日の内にみんなお腹に入ってしまいます。同じコンビニで毎晩大量の食べ物は買えないので、セブンイレブン・ローソン・ポプラとお店を変えます。
10月下旬になると気の置けない友達からも、「太ったんじゃない?」とこころに突き刺さる一言が出てきます。毎夜毎夜の盛大な宴なので、朝には胸焼けがひどくて朝食どころではありません。胃の痛みと自己嫌悪に耐えながら、寝床の中で一時うとうとするともうお昼過ぎです。秋が深まるにつれて起きる時間が遅くなりますが、朝起きにくくなったのはお盆過ぎ頃ではないでしょうか。そのころは暑いのでクーラーを効かせた部屋で朝寝坊、秋冬は寒いのでお布団の中で朝寝坊。
もうすぐクリスマスというのに気分はブルー。宴の最中には頭の中は真っ白(ブランク)です。おおらかな人はそれでも我慢して授業にでますが、前期に頑張ってダイエットした努力家は自分が許せません。引き籠もりの状態になるか、過食後に食べた物を吐き出すようになります。一冬に10kg近く増えることは稀ではありませんが、嘔吐を始めるとさすがに増えません。しかし、親からの大切なお金をトイレに流していること、過食しないと誓っても食べてしまうことで辛さは人一倍です。
さて治療に移りましょう。意外と簡単なのです。「先生、何故食べるのか考えてみたんですけど…。好きな人がいるときは食べてないんですよね。去年の夏もそうだったし、今年もそうでした。」奥手のA子さんの好きな人とは想いをよせるだけの人ですが、もちろん好きな人ができれば治るのではありません。しかし、この中にヒントがあります。食欲が増す時期と状況を思い浮かべてください。それは秋から冬であり、人によっては梅雨時分も含まれます。また夜更かし・朝寝坊の状況です。共通するのは日照時間の減少です。
日が短くなると動物はせっせと食べて、食べ物の少ない冬に備えます。さらに蓄えたエネルギーを消費しないように、基礎代謝率も低下させます。典型的なのは冬眠を決め込む熊さんですね。2000ルクスを超える強い光を浴びると交感神経の働きが高まること、強い光の作用は夏よりは冬に顕著であることが分かりました。また女性ホルモンが低下すると、メラトニンという眠くなるホルモンが増加し、身体のリズムが遅れることも分かりました。これらは今年の第13回日本時間生物学会で報告する予定です。
食欲のコントロールで苦しんでいる人は、まずは早起きして十分に光を浴びてください。日照時間が減少すると食欲が増すのは本能の営みで、本能はこのように環境によってコントロールされています。本能は生命が脅かされないように働きますので、本能に逆らって頑張ると病気になります。しかし文明の発達により、人は環境をコントロールする術を身につけました。朝早く起きて電灯のスイッチを入れましょう。盆地で寒さの厳しい山口も、常夏のハワイに早変わりです。それでも不十分な人は、光シャワー室を作りましたので利用ください。強い光でメラトニンが抑制され、女性ホルモンが十分に分泌されます。回復したA子さんは、冬場にもロマンスを楽しめるようになりました。
平成18年10月1日
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