歯の健康管理(その2)
夏休みと虫歯治療
高校時代までは、春の定期健康診断で歯科検診があり、虫歯のある人は、夏休み中に治療を受けることを勧められます。そのため、大部分の人が、智歯(親知らず)を除いて、すべての歯がそろい、歯の喪失は少ないようです。
しかし、大学生になり、生活習慣も食生活も大きく変化し、歯の健康は今まで以上に損なわれがちです。しかも、山口大学では歯科検診は実施していないため、今までのように定期的な口の中のチェックは行われず、受診勧奨もありません。したがって、せっかく、健康に保たれていた口の中に虫歯や歯周病が蔓延してしまうのです。
実際に、長崎大学の歯科検診の結果(平成3年度)では、未処置歯保有者(虫歯があるのに、治療されていない歯がある人)は、1年次生1600人中1194人(73.4%)もいます。これを読んでいるあなたも、「虫歯があるかもしれない」と思って読んでみて下さい。
人から管理されなくなった大学生の今こそ、自分で管理できる能力を養いましょう。
歯が1本でも抜けると、
- 噛む力が弱くなる
- 噛み合わせが悪くなる
- 歯並びが悪くなる
- 見た目が悪くなる
- 発音が悪くなる
- 顔の形が崩れる
というように、健康上の問題だけでなく、美容上の問題もあり、女性にとっては、特に気になります。
歯垢は、ただの「食べカス」ではない
自分の顔を毎日鏡で見るという人は、かなりいると思います。しかし、自分の口の中の様子、歯や歯ぐきを毎日、観察している人は、どれくらいいるでしょうか?
「見たこともない」という人は、いますぐ、鏡で歯や歯ぐきを見て下さい。歯に白いねっとりとした塊が付着していませんか?これは食べカスではなく、「歯垢」といわれるものです。歯垢は図1のような機序で、虫歯を引き起こすと考えられています。
(虫歯を予防するには、★印の箇所を減らす努力を!)
図1 虫歯のおこり方
口腔内のストレプトコッカスミュータンス菌★が特殊な酵素を使って、食物中の糖質★から粘着性のある物質を瞬時につくる。
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この粘着物質によって、ミュータンス菌は歯の表面に付着する。
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付着後ミュータンス菌は増殖し、細菌のかたまりである歯垢★をつくる。
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歯垢内の細菌の増殖にあたって、飲食物に含まれる糖質を分解してエネルギーを得ているが、エネルギーの代謝産物として、乳酸などの有機酸★をつくる。
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有機酸が歯垢内★で歯を溶解する濃度に達し、歯を溶かしていく(これが虫歯)。
虫歯発生の機序はこのように考えられていますが、全ての人が一様に発症するわけではありません。発生を促進する因子としては次のことがあげられます。
- 口腔清掃不足:歯垢の放置によって、その中で細菌の増殖がおこるので、歯垢を取り除けば、増殖も抑えられる。
- 唾液分泌減少:唾液はストレスなどによって分泌が減少する。これにより、口の中の自浄作用が低下し、歯垢がつくられやすくなる。
- 唾液の性状変化
- 炭水化物性食品の影響:砂糖類の摂取が多いほどミュータンス菌が粘着物資をつくる。
- 歯の組成・構造・形態・位置:歯垢を取り除きにくい歯並びをしていたり、歯の質が悪いと、虫歯になりやすい。
虫歯の程度
ミュータンス菌の産生する酸により、歯が侵食されていきますが、早い時期では、程度によっては、簡単な治療ですむ場合が多いものです。自覚症状(歯が痛い、水がしみる、歯の色が変わった)があれば、必ず、早めに歯科を受診して下さい。自覚症状がなくなっても、虫歯は進行しています。自然治癒はありませんので、決して油断しないで下さい。 最近の虫歯の治療時の痛みへの配慮は工夫されて、苦痛が少ないようになっています。治療への不安よりも、歯がなくなってしまう方が、深刻な問題です。まずは、歯科へ足を運びましょう。
図2 虫歯の程度
第1度(エナメル質の齲蝕)痛みはない。
第2度(象牙質の齲蝕)
象牙質にある神経の末梢が刺激をうけるため、痛みを感じる。冷たいもの、熱いものがしみる。治療は簡単。
第3度(歯髄感染)
神経を直接刺激するために、痛みは非常に激しくなる。ここの段階までに治療を行うように。
第4度(残根)
抜歯が必要。侵食が歯の根元まで及んだ段階。
虫歯を放っておくと「顔に穴があく?」
虫歯を放っておくと、歯が抜ける位では済まない場合があります。第3度まで進行すると、やわらかい結合組織の歯髄に、口の中の微生物の感染がおこり、「歯髄炎」という病気になります。歯髄は一度病変がおこると自然治癒力はきわめて弱く、炎症は悪化していきます。症状は強い痛みが特徴です。
これが進行すると、歯髄の一部の組織が腐って、ひどい臭いがするようになります。化膿性の病変は、歯根膜(歯と歯槽骨の間にあるすきまを満たしている線維性組織)まで広がってしまい「歯根膜炎」になります。これも、かむとき痛みなどを伴いますが、そのまま放置しておくと、歯根の先端部分の骨を吸収して、「歯根嚢胞」という膿の袋をつくってしまいます。
この状態をさらに放っておくと、あごの骨とその周囲に炎症がおよび、「顎炎」を引き起こします。
また、「歯根嚢胞」を生ずる場合、体力低下時に、急性感染症に発展し、「急性歯槽骨炎」「顎骨骨膜炎」「顎骨骨髄炎」「歯性上顎洞炎」「顎骨周辺の蜂窩織炎」などの、各種の炎症をひきおこし、機能障害、痛み、発熱、腫れ、化膿などを伴います。
さらに、「顎骨周辺の蜂窩織炎」などを放置すると、膿瘍を形成した後、自潰すると、膿を外に出すために、顔面(顎の付近の皮膚)に自然に穴があいてしまい、中にたまっていた膿が排出されます。
虫歯を放っておくと「心臓病になる?」
「病巣感染」という感染があります。体のどこか一部に細菌感染があると、その部分の細菌や毒素が、リンパ管や血管の中に入り、他の全く違う器官や臓器に転移、感染して、症状をおこすことをいいます。例えば、歯や口の感染性の病巣が第一次感染巣として、腎臓疾患(腎炎、腎盂炎)、心臓疾患(心内膜炎、心筋炎)、眼疾患(角膜炎、虹彩炎)、運動器系疾患(リウマチ性関節炎)、などの原因になることがあります。
たかが虫歯、されど虫歯。たいしたことはないと、放っておくと、重大な病気を引き起こす可能性があるのです。軽く考えないで、歯科受診をして下さい。
夏休みはチャンスです。
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