山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和4年8月1日作成
21世紀の新しい医学の潮流としてナノ医学が提唱され、その研究が活発に進められています。ナノ医学は従来の医薬品では不十分であった効果を、多種多様な分子をナノ構造体に機能的に集約することによりナノマシンとして強力かつ多彩な効果を発揮させ、これまでの医学の限界を打ち破る革新的医療を実現することが期待されています。
当講座では、多機能ナノ構造体を創生する"ものつくり研究"とその医学生物学への応用研究を行っています。独自に開発した有機シリカ粒子技術(国際特許取得済)をはじめ、有機化学、材料科学、蛋白質・遺伝子工学による異分野融合研究や学際的研究により新規かつ有用な多機能ナノ粒子の創生を進めています。その応用研究として多機能ナノ粒子の生体内での分布や動態を肉眼解剖的なマクロな観察から組織学的なミクロな観察、さらにはナノレベルの観察を連続的に行い、新たな知見獲得に至っています。これら観察には生体イメージングに用いるMRI、X線CT、さらに共焦点レーザー顕微鏡や多光子励起顕微鏡、高性能電子顕微鏡など様々な装置を融合的に用いる観察(マルチモーダルイメージング)を応用しています。より正確かつ精密な生命現象の可視化のため細胞や分子の動態を動画や3D、さらに4Dとしての所見取得を行っています。臨床的研究として、多機能ナノ粒子を応用した新しい治療法の開発、さらに治療と診断の一体化(セラノスティクス)の研究も進めています。セラノスティクスは個別化医療、患者様に優しい革新的医療の実現につながります。
世界的にも少ない"ものつくり研究"を基盤とした医学科講座として、独創的な研究成果の学術的な発信と共に、製品化によるマーケットへの進出、さらにトランスレーショナルリサーチへの展開を行い、特色ある創造的医学者・医師の育成を目標としています。