講座・教員紹介

山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。

分子細胞生理学(旧 生理学第一)

Molecular and Cellular Physiology

令和4年8月1日作成

顔写真:

教授名
宮本 達雄
講座のメンバー
岸 博子,張 影,森田 知佳
医学科担当科目
医学入門1,医学英語,基礎解剖生理学序説,循環・呼吸器系,消化器系,泌尿・生殖器系,機能系実習,細胞生理化学演習,基盤系特別専門講義,自己開発コース,修学論文テュートリアル,Open Science Club,SCEA/AMRA
居室
基礎研究棟3階
TEL
0836-22-2209
FAX
0836-22-2348

講座の紹介

当講座では、血球系以外のほぼ全てのヒト細胞の表面に発達する「一次繊毛」と呼ばれる小さな突起構造に注目して(図1)、細胞が外界の様々な情報を正確に感知する基本原理の解明と関連疾患の治療法開発を目指しています。一次繊毛は、約1〜5マイクロ・メートルの細胞表面に発達する小さな突起で、細胞骨格の一つ、微小管からできています。繊毛を覆う細胞膜には、市販薬の標的分子の約30%とも呼ばれるGタンパク質共役型(GPCR)受容体や様々なイオンチャネルが集積しており、一次繊毛は、細胞の「アンテナ(感覚器官)」として機能します。
 生まれつき一次繊毛に異常がある場合には、多発性嚢胞腎、網膜変性、左右逆位など特徴的な奇形症候群が現れます。このような繊毛病は、約200種類存在すると推定されていますが、未だに60%の疾患で発症メカニズムが分かっていません。当講座では、これらの繊毛病を「オーファン(行き場のない)繊毛病」と位置付け、病因・病態解明研究を進めています。これにより、新たな細胞情報伝達ロジックを解明して、画期的な治療法の開発を目指しています。研究手法の特徴としては「ゲノムを操作し、観て考える」こと、つまり、ゲノム編集技術を用いて繊毛病モデル細胞・動物を作り、形態学・生理学・生化学・分子生物学など多面的なアプローチを駆使して、繊毛の「生理」と「病理」を観察しています。
 当講座では、オーファン繊毛病の研究から、酸化オルガネラの一つペルオキシソームが繊毛にコレステロールを輸送すること(図2)、コレステロールの「欠乏」が多発性嚢胞腎を引き起こすこと(図3)を先駆けて報告しました(Miyamoto et al., EMBO J 2020)。現在、細胞のコレステロール輸送・代謝機構の解明、ゲノム編集技術を用いた繊毛病の治療法の開発や創薬展開を進めています。この他にも、血管収縮を調節する平滑筋の生理学研究も行なっています。なお、2022年度からは、山口大学研究拠点群形成プロジェクト「高度ゲノム編集医療・創薬研究拠点」において、ゲノム編集技術をキーワードに、基礎・臨床各科との協働を推進しています。

 

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