山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和3年5月1日作成
臨床面では,附属病院第三内科,糖尿病・内分泌・代謝内科,血液内科を担当し,内分泌・代謝疾患,血液疾患,HIV診療を主たる診療対象としています。
内分泌・代謝疾患の中では,糖尿病が全体の約9割を占め,臨床面の中心をなします。現在,本邦における糖尿病患者数は約1,000万人と言われており,今後ますます増加することが予想されています。糖尿病はさまざまな合併症により健康寿命を短縮させる生活習慣病のひとつです。複雑な病態を呈する糖尿病の合併症を管理・予防するため,専門性の高い治療が求められます。看護師,栄養士,薬剤師などコメディカルスタッフとのチーム医療により,質の高い診療を行っています。さらに,日本糖尿病学会,日本内分泌学会の認定教育施設としてこれまで多くの専門医を輩出し,県内の糖尿病や内分泌・代謝疾患診療の質の向上に努めています。
血液疾患の診療では,クリーンルームを16床有し,造血幹細胞移植や分子標的薬を用いた最先端治療を行っています。とりわけ造血幹細胞移植に関しては,西日本において草分け的な存在であり,当科では造血幹細胞移植に関する技術の開発,改良と基礎的研究も合わせて行っています。今まで不治の病といわれた白血病などの治療も,進歩しています。そうした治療をいち早く取り入れ,患者さんに最大限の恩恵が受けられるよう努力すると共に,日本血液学会血液研修施設として優秀な血液専門医も育成し輩出しています。
すぐれた臨床は,優れた研究により裏打ちされます。研究成果を世界に向けて発信し,高い評価を得てきました。研究面では,日常診療で取り扱う疾患を分子のレベルに掘り下げて理解し,治療法,予防法を確立することを目指しています。米国の研究室との共同研究として糖尿病と視神経萎縮を合併するWolfram症候群の原因遺伝子(WFS1)を世界に先駆けて同定したことも教室の特筆すべき業績の一つです。WFS1の機能を調べることで糖尿病を進行させるβ細胞死のメカニズム解明を進めています。さらに,生体リズムを制御する時計遺伝子による代謝制御の研究を展開しています。血液の分野では,白血病の発症メカニズム,シグナル伝達についての基礎研究,末梢血幹細胞動員方法の改良や全国の主要施設と共同して新たな治療法を確立する臨床研究にも参加しています。
このように,病気のメカニズムを一つ一つ紐解く中で,「山ロから世界へ発信」を合言葉に,各々が成果を積み上げています。幅広い視野を持ち,世界に通じる研究を展開するため,国内外の一流研究施設への留学生の派遣も積極的に行っています。
大学の使命である教育・研究・社会貢献の3本柱を強力に推進することにより,患者さんに,地域社会に,そして世界に貢献することを目標に,日々精進しています。