山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和5年1月4日作成
当分野は,日本では内科の一分野として認識されていますが,欧米ではNeurology(神経科)という名称の独立したdepartmentであり,中枢神経系,末梢神経系,筋肉の疾患を扱う非常に間口の広い分野です。厚生労働省は,331疾病を指定難病として認定していますが,このうち実に45は神経内科疾患であり,また,神経症状をあらわして神経内科が関与する疾患も半数以上に及びます。また,このような難病だけでなく,単一臓器の疾患としては日本人の死因のトップとなる脳血管障害もわれわれが扱う重要な疾病のひとつです。これらの幅広い疾患群を対象として,研究・診断・薬物治療・リハビリテーションを含めた総合的な研究・診療にあたるのが臨床神経学の仕事です。
主な研究・診療の対象は,上記の脳血管障害のほか,中枢神経系変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症など),脱髄疾患(多発性硬化症など),神経感染症(髄膜炎,プリオン病など),脊髄疾患,末梢神経疾患(ギランバレー症候群など),筋疾患(筋ジストロフィー症,重症筋無力症,多発筋炎・皮膚筋炎など)などですが,これらに加えて,てんかん,頭痛,めまいなどの非常に患者さんの数の多い"common disease"も臨床神経学の守備範囲です。
社会のニーズに比べ,脳神経内科の専門医の数は絶対的に不足しており,また,将来的に神経関係のbasicな研究者としての道を選ぶことも可能で,専門家として長い期間第一線で仕事をするには極めて条件の整った科であるといえます。19世紀のある時期がコッホやパスツールの名前とともに,細菌学の時代として記憶されたのと同じように,21世紀初頭は脳の時代として後世に記憶されることになることは間違いなく確実です。来るべき時代に脳神経内科のコッホやパスツールとして,神経学の担い手となる若い諸君の参加を切望します。