山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和3年5月1日作成
消化器・腫瘍外科学は,消化器外科および乳腺・内分泌外科を担当しています。消化器外科では,食道・胃・小腸・大腸・直腸・肛門までの消化管領域と,肝臓・胆道・膵臓・脾臓などの肝胆膵領域の,全ての消化器外科領域の良性・悪性疾患を網羅し,我が国でもトップクラスの診療内容と治療成績を誇っています。また,肝不全に対する生体肝移植も積極的に行っています。乳腺・内分泌外科においては,山口県で最も乳がんの症例数が多く,甲状腺・副甲状腺疾患の治療も行っています。一方,生命に危険が及ぶような重症急患はもとより,入院/手術が必要となるような救急症例も積極的に受け入れ,ヘルニアなどの一般外科診療も行っています。
教室の特徴としては,山口県で唯一の日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医/高度技能指導医修練施設(A)として、肝胆膵領域癌に対する拡大切除を基軸とした集学的治験に積極的に取り組んでおります。さらに,肝不全治療として生体部分肝移植についても定期的に施行しています。さらに,近年の鏡視下手術の技術革新は目覚ましく,当教室でも積極的に取り入れ,多くの患者さんに"体に優しい高度な手術"を行っています。現在、教室では6人の内視鏡外科技術認定医が在籍し食道癌,胃癌,大腸癌,肝癌には鏡視下手術が可能です。なお食道癌手術においては,ロボット支援下手術が保険診療として施術できる県内唯一の施設でもあります。乳癌では放射線科と共同開発した3DCTリンフォグラフィを用いた正確なセンチネルリンパ節生検などを駆使して,乳房温存療法など整容的にも満足できる手術を実践しています。これらは全て専門的な技術と知識を持った学会専門医/指導医が対応しています。
また,手術だけでなく,多くの患者さんに化学療法(抗癌剤や分子標的剤を用いた治療)を行い,最新の癌免疫治療も提供し,術後再発や手術不能の患者さんにも同様の治療を行っています。令和2年からは,山口県では初めての消化器癌を専門とする腫瘍内科医がメンバーに加わり,その質の向上に努めていきます。さらに,個別化医療である遺伝子診断による抗癌剤治療選択,特許化した吻合補助器を用いた手術など,他の施設では受けられない診断や治療を行っています。研究は常に臨床に直結したテーマを取り上げ,癌免疫,網羅的遺伝子発現解析,プロテオーム解析,癌幹細胞研究といった幅広い領域で行っています。その中でも最近は,癌の個別化医療の確立に力を入れており,最近では,手術後の癌の再発を遺伝子診断により正確に予測できるシステムや,遺伝子多型による精度の高い毒性予測チップの作成や,新規免疫療法の開発を産学共同研究で行っています。
医学部 医学科における臨床外科学講座の社会責務は,①患者さんのためにある"医療",②研究者と共に進む"医学",そして,③これからの若い先生たちの可能性を十二分に発展させる"教育",にあります。つまり,最先端医療の供給と未来医療の開発を行いつつ,明日の医療を支えるこれからの外科医を育てることこそが,私たちに課せられた課題です。
対「日本」,対「世界」を見すえつつ,教室員一丸となって山口の消化器外科,乳腺内分泌外科のさらなる飛躍のために,日々邁進していくつもりです。