山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和4年8月1日作成
山口大学整形外科分野は、中国・四国地区のなかではじめて整形外科学講座が開設された伝統と歴史を持つ教室です。1948年初代伊藤鐡夫教授が就任され、1957年からは服部奨教授、1983年からは河合伸也教授、2004年から田口敏彦教授、2018年より坂井孝司教授が就任し、2018年(平成30年)には開講70周年を迎えました。
整形外科といえば、骨折を思い浮かべる方も多いと思いますが、我々整形外科医が対象とするのは骨、筋、靭帯、神経など運動器すべてであり、部位では脊椎・脊髄から骨盤、上肢(肩、肘、手、手指)、下肢(股、膝、足、足趾)まで広範囲に及びます。これらの部位の機能障害の原因となる先天性疾患、外傷、炎症性疾患、腫瘍性疾患、加齢性変化などが治療の対象となります。そのため対象患者は新生児から高齢者までの全年齢層が対象となります。またそれらの治療には薬物療法、手術療法に加え、リハビリテーションも駆使して対応しています。高齢化社会の進行により、運動器疾患の患者数は増加し、整形外科医のニーズは高まっています。
現在大学整形外科の診療、研究、教育は油形准教授、今城准教授を中心に3人の講師、6人の助教、5人の診療助教で行っています。医学科生の教育については、助教以上の医師が講義を行い、またポリクリでは外来見学や講義に加え、担当患者を受け持ち、入院、手術、術後リハビリを通して疾患と治療について理解を深めていただきます。またクリニカルクラークシップではより長い期間をかけ、より専門的な知識や技能を学んでいただきます。大学院生には、臨床を学びつつ、現在関節班、脊椎班が中心となって行っている研究分野を進めていただき、世界に情報発信をおこなっていただきます。
整形外科では多岐にわたる部位、疾患が対象となるため、当科では脊椎、上肢、腫瘍、下肢、外傷の各専門診療班に分かれ、若手医員の医師が各分野を回りながら全ての分野に精通できるようにしています。
現在、当教室では下記の研究を行っています。
下肢班では主に股関節、膝関節、足の外科のそれぞれの分野の専門医が診療にあたっており、手術を年間約270例行っています。CT basedナビゲーション等を使用し、より正確な手術を心がけております。現在行っている下肢班の主な臨床および基礎研究は下記の通りで、さらなる治療成績向上を目指しております。
・人工股関節全置換術の臨床成績・動態解析
・三次元積層造形法によるインプラント開発
・特発性大腿骨頭壊死症の疫学調査・病態解明
・炎症性関節疾患の早期診断法の開発
・術後患者満足度向上を目指した術後鎮痛法の研究
脊椎脊髄班では手術を年間約250例行っています。脊柱管狭窄症など一般的な疾患から脊髄腫瘍、靭帯骨化症、側弯症など難易度の高い疾患を扱っており、顕微鏡、ナビゲーション、術中脊髄モニタリングなどを駆使し安全な手術を心がけています。
・脊髄再生:損傷された脊髄を骨髄間質細胞の移植、生体材料を用いた人工脊髄、脊椎脊髄短縮術等により再生を試みる研究を行います。
・脊椎脊髄バイオメカニクス:3次元有限要素法を使用しひずみや応力分散などを解析し、脊髄症などの発生メカニズムを研究します。
・脊髄電気生理:電気生理を駆使し、脊髄病変の部位や病態を解明します。
上肢班では腱板修復、肩・肘人工関節、手指の手術や上肢外傷に加え、マイクロサージャリ―を用いた切断肢・指の再接着や腫瘍切除後の筋非弁など複合組織移植手術を年間約200例行っています。
腫瘍班では良性から悪性まで骨や軟部組織に発生した腫瘍の手術を年間約130例行っています。
我々の教室が目指しているのは、当科ホームページにも掲載していますが「患者さんに生涯を通じて豊かで安心できる生活をサポートすること」です。今後も我々整形外科教室は、常に豊かな人間性と高い倫理観を持ち、患者さんにはいつも温かい応接に徹し、最高水準の医療を提供することを目標とします。