山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和4年8月1日作成
皮膚は全身を覆う巨大な臓器であり、外部からの異物の侵入を防ぎ、発汗によって体の水分量や体温を調節するなど、生体の恒常性を維持する上で重要な機能を有します。しかしながら、内的または外的な要因によってそのバランスが崩れると、さまざまな皮膚疾患を発症します。多くの皮膚疾患では、皮膚だけでなく他の臓器にも症状を呈することが知られています。また、内臓疾患の状態を反映して多彩な皮膚症状が出現することもあります。皮膚は外部に露出している臓器であるために、内臓病変に比べて症状を容易に認識できるという特徴があります。すなわち、皮膚症状が診断のために決定的な役割を果たすことがしばしばありますので、皮膚科医に限らずどの分野の医師にも皮膚科学の知識は重要です。そのような皮膚科学の重要性を、講義および臨床実習を通じて学生にわかりやすく教授するように努めています。さらに、当教室の形成外科診療班のメンバーは、医学部附属病院において皮膚科から独立して診療に従事しており、形成外科についての専門的な教育も積極的に行っています。
当教室では、遺伝性皮膚疾患の新規の原因遺伝子の同定とその機能解明をテーマに基礎研究を行っています。近年の分子生物学の進歩によって皮膚の発生や分化に関与している多数の遺伝子やシグナル伝達系が同定され、さらに、それらの異常によってさまざまな遺伝性皮膚疾患を発症することが明らかになってきていますが、未解明な疾患が数多く残っているのが現状です。疾患の中には症候群の一症状として皮膚に異常をきたすものがあるため、同定された遺伝子を解析することで、皮膚だけでなく他臓器の発生・分化のメカニズムの解明にも貢献できる可能性があります。今後も、研究活動を積極的に推進し、新規の治療薬の開発等へと発展させていく予定です。
以上のような現状のもとに、「優れた医術を実践できる叡智と経験を身につけた医療人を育成する」ことを当教室の理念に掲げ、世界水準の医療を提供できるように教室員一丸となって努力しています。