山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和4年8月1日作成
呼吸器領域の疾患構造は各時代背景を反映して変遷を重ねていますが、近年の生活習慣の多様化、環境汚染、高齢化現象はその構造変化をより複雑にしています。しかし逆転の発想として、呼吸器疾患は脆弱性を背景に多因子によって引き起こされた全身性疾患の表現型のひとつとも捉えることが出来ます。つまり肺は人体を見渡す窓の一つと言えるでしょう。高い専門性をもった呼吸器内科医のニーズは益々高まっていますが、我々には全身を診ることができる臨床能力を持ち合わせた総合的な内科医としての力量も求められています。当領域ではcommon diseaseから専門性の高い疾患まで、良性から悪性まで、急性期から慢性期まで幅広い分野を扱うため、疾病に対する深くて広い知識や経験を得られることに加え、全人的な視点から診療を行うといった医療人たる上で最も重要な姿勢を身に付けることが出来ます。また、現在COPD、肺癌、間質性肺炎といった難治性呼吸器疾患は増加しているものの、これらを完全に制御する治療法は未だ確立されておらず、呼吸器科医に残された課題は山積しています。
こうした課題を一つひとつ解決していくために、研修医や専攻医をはじめとした若い医師に全身をしっかり診療することの重要性を認識してもらった上で、よく観察し、自ら考え、自ら行動することで課題解決能力を身につけ、論理的思考や責任感を育成し、専門的臨床能力ひいては後進への指導力を養うことを目指しています。医学生に対しては、講義やベッドサイド実習を通して、呼吸器内科学の重要性や計り知れない魅力に気付いてもらうきっかけ作りを心がけています。研究面では、日々の臨床から抽出された課題を解決するため基礎・臨床両面からのアプローチを通じ、呼吸器内科学を基盤として多分野で活躍できる人材の育成を目指しています。現代の医療では、適切な治療を適切な患者に提供する個別化医療の基盤となるトランスレーショナルリサーチの発展が求められています。そこで我々は呼吸器疾患に対する低侵襲で高精度なバイオマーカーや検査法の開発を通して、新たな治療法・予防法の確立を目指し、診断・治療の進歩に貢献し、次世代の研究マインドを育成することを目標としています。
講座の誕生から早7年が経過しました。この間一貫して研究と症例の報告を精力的に継続し、国内外の学会で多くの賞をいただき、その成果である論文を世界に向けて発信して参りました。新しい講座の創生期に携われる大変貴重な機会でもあります。この分野に興味がある先生方、学生の皆さん、ぜひ私たちと一緒に新たな一歩を踏み出してみませんか?