山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和3年5月1日作成
適切な薬物療法を実践するためには、医薬品を生体に適用した時に発生する効果・副作用等に関して、患者個々での定量的な予測が重要です。そのためには、医薬品の体内での動き(動態)の把握が必須となり、これには、薬物の吸収・分布・代謝・排泄といった薬物動態学(Pharmacokinetics;PK)的プロセスと、組織や細胞での薬理学的応答から効果・副作用の発現に至るまでの薬力学(Pharmacodynamics;PD)的プロセスを関係づけ、生体をひとつのシステムとして取り扱う理論(PK/PD理論)の展開が有用となります。このような考え方を発展させるのが臨床薬理学であり、医薬品の適正使用を必要とする臨床現場や、将来の遺伝子治療、再生医学の現場において、大切な学問分野のひとつと考えています。当講座では、薬物動態学の基礎と医療現場に即した方法論、そして新たな医薬品情報の創出を中心に研究を展開しています。
教育面では、医学科と保健学科の両方で「臨床薬理学」講義を担当しており、医薬品の開発過程から市販後医薬品の適正使用までの全プロセスを体系的に教育することを目標に、医薬品・医療機器開発、医薬品・医療機器を用いた臨床研究管理、医薬品の適正管理、医薬品の適正使用、医薬品情報管理に関する教育指導を行っています。また薬学生に対して、11週間の臨床実習指導も行っています。
診療においては、附属病院の薬剤部として役割を果たしています。我々薬剤師は、安全で安心な薬物治療を提供できるよう積極的な支援を行っています。具体的には、病棟薬剤業務、チーム医療、セントラル業務(院内で使用する治験薬を含むすべての医薬品管理、一般調剤・注射薬調剤・一般製剤、医薬品情報管理、抗がん剤の混合調製、薬物治療モニタリング(TDM))と、院内で医薬品が使用される全ての場面において、医薬品適正使用の推進に取り組んでいます。