山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和2年5月1日作成
Email:kenkou@yamaguchi-u.ac.jp
わが国では、戦後5%未満であった高齢化率は瞬く間に増加し、平成25年には65歳以上の人口が3,190万人(総人口の25%)、75歳以上の人口が1,560万人(総人口の12%)を超えました。わが国の高齢化は今後も伸展し、2060年には40%に達すると推定されています。我が国は、人類がこれまでに経験したことのない超高齢社会に突入しています。
一方、急速に高齢化する日本だからこそ、医療・介護分野に豊富なデータやノウハウが蓄積され、イノベーションのチャンスが生まれるともいえます。人材不足が深刻化する医療・介護分野では、今後AIやロボットによる人手の代替を進める必要があります。また、遠隔診療による僻地での医療を支援することも重要になります。さらに、超高齢社会においては、従来の治す医療から「治し支える医療」、さらにはそもそも病気にならないための「予防法の確立」へのパラダイムシフトが求められています。わが国の高齢化は世界に先駆けるものであり、「質の良い超高齢社会」を築く方策は、わが国が独自に考えていく必要があります。世界は課題先進国であるわが国の超高齢社会対策の動向に注目しています。
このような問題を解決すべく、呼吸器・健康長寿学講座では、高齢者の特性に応じた適切な医療の提供、臨床と研究の連携、高齢者のQOLを維持・向上させるための研究を通じて、高齢者の健康増進、健康長寿の実現を目指します。
本研究は、山口大学の臨床部門、基礎研究部門、地域の急性期病院、回復期リハビリテーション病院、慢性期病院などの多彩な機能を持つ病院群が共同で行う点で、極めてユニークです。高齢者の臨床現場で生じた問題に対する解決策を大学病院で研究する、さらに大学病院で得られた研究成果をいち早く臨床現場に反映させていくことができます。
本研究では「呼吸器・地域包括ケアシステム」の先進的医療連携モデルの構築を目指します。そのために、病院・施設間連携と多職種間連携を深化させ、医療スタッフや市民への教育・啓発を推進します。さらには、新技術の社会実装に向けた連携を加速させ、人工知能(AI)やSociety 5.0などのイノベーションを駆使して課題分野の解決に重点的に取り組みます。
これまでに蓄積された英知と技術を結集し、さらには新たなイノベーションを駆使してこの難題に取り組めば、健康長寿を享受でき、真に豊かで成熟した社会を構築することができます。「課題先進国・ニッポン」の独自のソリューションは、世界でも必要とされる日が必ず到来します。真に豊かで成熟した健康長寿社会を実現し、その方策を世界に広く発信していくことが、本講座の設置目的です。