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アルツハイマー病の発症に関わる神経細胞内Ca²⁺制御機構の解明~小胞体Ca²⁺放出 チャネル(RyR2)安定化による新規治療法への期待~[2021.04.15] [医学部]

 大学院医学系研究科器官病態内科学の矢野雅文教授らの研究グループは、アルツハイマー病の発症が、神経細胞内の小胞体Ca2+放出チャネル(RyR2)機能異常の是正により抑制される仕組みを明らかにしました。
 アルツハイマー病(AD)は、進行性の神経細胞減少、認知機能低下を特徴とする神経変性疾患であり、近年、小胞体ストレスおよび細胞内Ca2+ホメオスタシスの調節不全が、ADにおける神経機能障害の一因であることが示唆されていましたが、その詳細は明らかではありませんでした。
 研究チームは、以前より心不全の心筋では筋小胞体のRyR2に点突然変異・酸化ストレス・過剰な交感神経刺激などの負荷が加わると、calmodulin (CaM)が解離し4量体構造が不安定となり、Ca2+漏出を生じ心不全や致死的不整脈を発症することを報告してきましたが、一方で、RyR2は心筋以外の臓器・組織にも広汎に発現し小胞体(ER)機能維持に関わっていることから、今回、3つの家族性AD変異を内在するAD型変異モデルマウス(AppNL-GF)における神経細胞内小胞体RyR2 のAD発症における役割を検討しました。その結果、AppNL-GFマウスでは、RyR2のCaM結合親和性が著しく低下しており、Ca2+漏出から小胞体ストレスが誘導されていること、逆に、ADモデルマウスにCaM結合親和性を高める変異を加えるか(RyR2 V3599K)、または、RyR2構造安定化薬のダントロレン(DAN)を投与することで、小胞体ストレスの減少、海馬神経細胞数の減少抑制、認知機能の改善が得られることが明らかとなりました(図1)。これらのことから、「RyR2の不安定化(酸化ストレス、PKA/CaMKIIリン酸化→CaM解離)→Ca2+漏出」が臓器・組織を問わず小胞体ストレスを介して様々な疾患の共通病態となっており、RyR2の安定化により各種病態を包括的に是正しうる可能性が示唆されました。
本研究成果は、2021年3月31日に、英国のオンライン科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

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