経験したことのない運動やスポーツを繰り返し練習すると、次第にその運動に熟練していきます。今回、大学院医学系研究科・神経生理学講座の木田裕之助教と美津島大教授らは、大脳新皮質の一次運動野II/III層におけるシナプス(神経と神経のつなぎ目)に着目し、その変化を捉えました。実験にはラットを用い、回転するドラムの上を歩かせるという運動を学習させ、スライスパッチクランプ法で興奮性シナプスと抑制性シナプスの変化を同じ細胞で捉えました。
トレーニング1日目、抑制性シナプスではGABAの分泌が一時的に低下し、興奮性シナプスではAMPA型のグルタミン酸受容体が増加しました。トレーニング2日目、抑制性シナプスにおけるGABA分泌は回復しますが、興奮性シナプスにおけるAMPA型受容体の増加は維持され、グルタミン酸放出量はトレーニング前よりも増加しました。
本研究で興奮と抑制のバランスがダイナミックに変化し、運動学習の熟練段階に応じて、個々のシナプスが多様化して発達変化していく事が解りました。運動熟練のシナプス・分子メカニズムの解明は、運動機能障害の治療やリハビリテーション医学への展開が期待されます。
本研究は、文部科学省・科学研究費補助金制度の支援を受けて行ったものです。
なお、この研究成果は、2016年5月18日付けの英科学誌「Cerebral Cortex」電子版に掲載されました。
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