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KPCカルバペネマーゼ −カルバペネム耐性の肺炎桿菌−
 カルバペネム系抗菌薬(IPM, MEPM, DRPMなど)は、広い抗菌スペクトルと優れた抗菌力を持ち、臨床現場では重要な抗菌薬です。国内では近年、このカルバペネム系を不活化する酵素(カルバペネマーゼ)を産生するセラチア菌や緑膿菌「メタロ-β-ラクタマーゼ産生」、あるいは「OXA-β-ラクタマーゼ」を産生するアシネトバクターが病院感染の問題となっています。
 さて国外では、特に米国においてはKlebsiella pneumoniae (肺炎桿菌)のカルバペネマーゼ産生菌による病院感染が2004年ごろより深刻化しています。このカルバペネマーゼは「KPCカルバペネマーゼ; K. pneumoniae carbapenemase 」と呼ばれ、全てのβ-ラクタム薬を不活化する最も強力なβ-ラクタマーゼです。2006年のニューヨークで分離されたK. pneumoniae の38%(n = 997)がこのKPCカルバペネマーゼ保有し、24%がIPM、MEPM耐性という報告があります(J Antimicrob Chemother 2007; 60: 78-82)。これには過去に深刻化したESBL産生 Klebsiella に対する治療の数少ない選択肢のひとつに、カルバペネム系が選ばれていた背景があります。
 これまでに国内の分離例は報告されていませんが、イギリスでは、2003年Enterobacter cloacae 1例、2007年K. pneumoniae 1例、フランス2005年K. pneumoniae 1例、スウェーデン2007年K. pneumoniae 1例、その他コロンビア、イスラエル、中国においても報告されておりグローバル化しつつあります。さらに、緑膿菌、サルモネラ、エンテロバクターから検出される報告もあり、菌種の拡大も懸念されています。
 カルバペネム系の使用量が国際的にも多いと言われている日本にとって、このKPCカルバペネマーゼは大変な脅威であり、抗菌剤の適正な使用が望まれます。
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