学生にとって大切なのは、研究成果よりも各自の成長です。自分の研究テーマと向き合い、技術的問題を発見し、仲間と議論しつつ、解決を試みる…この過程を自分のペースで繰り返すことで、単なるスキルや知識ではなく、技術者としての「体幹」を鍛えます。
手応えを得れば楽しくなり、さらにやる気が出るでしょう。大学院生にもなると、自分で課題を見つけ、自作のプログラムで解析し、自分の意思で論文を発表する学生も現れます。
人には論理的思考が得意な人もいれば、気持ちを理解するのが得意な人、五感や直観に優れた人もいます。技術者にも、技術の数理的内容に深い理解を得るタイプや、交渉・協働やマネジメントが得意なタイプがいます。ある専門用語について学ぶにも、論文から動画まで、今や様々な方法があります。
指導教員や仲間と一緒に研究する過程で、少しずつ、技術者としての自分のタイプ・適性が見えてきます。
現在のメインテーマとして、ドローンで撮った写真から地形を測量する技術(UAV写真測量)を研究しています。どのように撮ってどのように解析すれば、効率的かつ高精度に地形が測れるのかを、現地実験やシミュレーションを使って調べています。
成果のみならず研究体験を有意義なものとするため、いたずらに実験や解析を振り回すことは避け、原理と基礎の理解を大切に、深みのある研究を志しています。得た知見は技術ノートで随時発信しており、全国の技術者・研究者の方々に、役立ったとの声をいただいています。
衛星画像で海岸・川の水深マップを作ったり、カメラで川の汚染を監視したりする遠隔計測の技術も研究しています。衛星画像による水深マッピングは、広域の地形を簡便に知ることができ、サンゴ礁などの保全のための基礎データを得るために有用です。この技術では、今では一般的になった空間統計学との融合アプローチを世界に先駆けて提案するとともに、国内外の宇宙機関と連携してきた実績があります。
データサイエンス・機械学習・AIと言われるものを使いますが、うわべだけの利用は避け、学生がその気ならば、本質的理解を重視します。
毎週、5研究室からなる環境工学グループのゼミに参加します。そこではプレゼン・ディスカッション・情報収集など、現代の技術者に必須の様々な能力を育むとともに、水環境・水処理・廃棄物など、地域・地球環境を守るための研究に関わることができます。
また技術を活かして、環境に関する研究を直接実施することもあり、過去には海外熱帯泥炭地での環境調査、日射量経年変動の解析、大気汚染予測システムの開発などに携わっています。
工学は、人間社会に「役立つ」技術や知識を生む活動です。太古より連綿と続いてきたことから、善悪はともかく、人間がやめられない本能的な営みだと思われます。
工学部の皆さんは、社会に出て技術者(技術を実務に使う人)になる前に、 研究室で研究者(技術を生む人)を体験することで、 技術に関する本質的学びを得ます。その深さと皆さんの良識が、これからの社会を支えていきます。
大学院では、マイペースでより深く自由に研究できます。また、研究や民間企業などとの協働の経験により、学部時代より自他を「見る目」が育つため、自分の就職先をよりしっかりと見極めることができます。企業などが書いた論文も読みこなし、第一志望の判断材料に活かせます。
研究テーマは力を養う題材に過ぎず、就職先がそれに制約されることはありません。大学院修了生は、コンサルタント、高速道路会社、自治体など、建設業界の様々な場所で活躍しています。