5/11/2011
平成23年度第1回上級者向け講習会
NMRスペクトルの測定には,90度パルス幅や90度パルスパワーなどの基本的な測定パラメータが必要である。当然のことながら,これらの測定パラメータは核種ごとに異なる。また,分光計の性能(プローブを含む),溶媒,および,温度等にも強く依存している。したがって,測定に必要なパラメータは測定ごとに決定すべきである(ただし,実験目的によっては,パラメータを変更してはいけない場合もあり得る)。室温における,主な核種(1Hや13Cなど)の測定パラメータはすでに登録されている。測定パラメータが登録されている核種の場合は,その数値を参考にして,測定条件ごとにパラメータを再確認することが望ましい。
1)温度可変
a) プローブによって可変範囲が異なる。←分からない場合,測定前に管理者に相談すること。
AV400:-100~+150℃(5mmφおよび10mmφBBFO-Z多核プローブ)
ただし,0〜+70℃:エアー,0℃以下および+70℃以上:N2ガス
AV500(BCU 05を使用):-50~+80℃(3核インバースプローブ)
-150~+180℃(BBO-Z多核プローブ)
ただし,上記最高温度よりも20℃以下,および,最低温度よりも20℃以上での使用のみを許可する。
b) セラミック製のスピナーを用いること。
c) 温度可変装置およびプローブの構成や原理を十分理解し,正しく接続してから使用する。
d) ヒーター発熱の暴走を防ぐため,ヒーターや温度センサーをプローブから外すときにはヒーター電源を切る。
e) NMR試料管の破損を防止する。
・恒温槽やデュワー瓶の温度を最高測定温度や最低測定温度に設定して,その中にNMR試料管を浸け,それらの温度で試料管が破損しないことを確認する。このような確認をしておくと,プローブ内で試料管が破損して修理を依頼しなければならない重大な事態を避けることができる。
・水溶液系の試料の場合には,0℃以下に冷却すると試料管が割れる可能性があることに注意しておく。
・低温測定をする場合に,次第に温度を下げて行ってロック信号の強度が急激に低下したら,溶液が凍結し始めていると理解する。その温度での測定が終了したら,試料管を取り出して,プローブ内で凍結した試料が解凍する事態を避けること。その理由は,プローブ内で解凍するときに,NMR試料管が破損してプローブ内を試料液が汚染することがあるからである。
f) 必要あれば,各自で測定パラメータを決定する。ただし,測定前に管理者に相談すること。
g) 測定パラメータを標準パラメータとして保存することはできない。保存を希望する場合も,管理者に相談すること。
2)多核測定
a) AV400を使用する場合,以下の核種の測定パラメータが登録されている。
・5mmφBBFO-Z多核プローブ:1H,13C,15N,19F,31P
・10mmφBBFO-Z多核プローブ:13C,15N,31P,109Ag,39K
b) AV500を使用する場合,以下の核種の測定パラメータが登録されている。
・BBO-Z多核プローブ:1H,13C,15N,31P
・TXI HCN-XYZ三核インバースプローブ:1H,(デカップル用:13C,15N)
・TXI HCP-XYZ三核インバースプローブ:1H,(デカップル用:13C,31P)
c) 登録されていない場合,標準サンプルを用意し,核種ごとの測定パラメータを決定する。←分からない場合,測定前に管理者に相談すること。