核磁気共鳴装置管理規則
1.核磁気共鳴装置の管理者(以下「管理者」という)は,装置の維持管理を行い,常にその状況を把握する。管理者は当面谷教員が担当する。
2.核磁気共鳴装置の管理補助者(以下「管理補助者」という)は,管理者の業務を補助する。AVANCE400の管理補助者は当面藤井教員が,AVANCE500の管理補助者は当面右田教員が担当する。
3.管理者は,管理補助者と常時情報交換をして,装置の状況を把握する。
4.管理者または管理補助者は,利用者から機器に異状の報告を受けた場合,直ちに対処にあたる。ただし,必要あれば,管理者および管理補助者は対処方法を協議し,対処にあたる。
5.AVANCE400および500の液体ヘリウム補充は管理者および管理補助者が担当する。
6.AVANCE400の液体窒素の再補充は,当該機器の定常的利用者が輪番で担当する。
AVANCE500の液体窒素の再補充は,谷教員が担当する。
7.核磁気共鳴装置の利用に関する規則は別に定める。
核磁気共鳴装置利用規則
1.本装置は山口大学共同利用機器として,学内及び学外の教育研究に活用する。
2.AVANCE400を利用できる者は,本装置の操作方法に習熟した次の各号に掲げる者とする。
(1) 山口大学の教職員。
(2) 山口大学の元教職員。
(3) 山口大学の大学院生。
(4) その他,特に管理者が許可した者。
3.AVANCE400の操作方法の習熟度は,AVANCE400の管理補助者が判断する。
4.AVANCE500は生体高分子構造解析用であるので,調整が非常に困難である。本装置を利用しようとする者は,AVANCE500の操作方法に習熟した者が管理者またはAVANCE500の管理補助者に申請し,その許可を受けなければならない。
5.利用上の注意事項は利用細則に定める。
核磁気共鳴装置利用細則
1.AVANCE400の利用について
(1)測定時間は,原則としてつぎのとおりとする。
(イ) 8:00〜19:00 の間:1ユーザーが連続して2時間を越えないこと。
(ロ) 19:00~翌朝8:00の間:長時間測定を許可する。
(2) 測定は,当面“ICON-NMR”で行うこと。特別の測定方法を用いる場合には,AVANCE400 の管理補助者に申し出て許可を得ること。
(3) 利用者は,Web上のNMR予約システムで測定時間等を予約すること。予約システムには氏名,測定時間(開始時刻~終了時刻),連絡先の電話番号を記入すること。LANが不調の場合には,核磁気共鳴測定室(102号室)入口の予約表に氏名,測定時間等を記入すること。
(4) 測定終了後には,必ず試料管を取り出すこと。
(5) 測定予約者が予約時間に測定できなくなった場合には,直ちに次の予約者に連絡すること。次の予約者が不在の場合には,順次その後の予約者に連絡すること。測定を予定終了時間以前に終了した場合にも,直ちに次の予約者に連絡すること。
2.AVANCE500の利用者は,Web上のNMR予約システムで測定時間等を予約すること。ただし,特殊測定をする場合には,測定予定の1週間前までに測定試料と測定方法について管理者に申請し,許可を得て行うこと。
3.測定者は測定記録簿に測定日,氏名,測定開始時刻,測定終了時刻,測定時間,測定方法,装置の状況等をノートに記録する。院生は,氏名のあとに指導教官名を付記すること。
4.測定は,利用者が行うことを原則とする。利用料金は,別途定める。
5.核磁気共鳴測定室(102 号室)は,常に清浄に保つように心がける。
6.利用者は,機器に異状が認められたときには速やかに管理者に連絡する。管理者が不在の時は,管理補助者に連絡する。
7.記録用紙,記録用インクなどの消耗品は,維持費でまかなう。USBメモリやMOなどのデータ保存用の消耗品は,各利用者が用意する。
8.室内の清掃は,定常的利用者が輪番で行うこと。
9.液体窒素を再充填する際,AVANCE400横の非常口の扉を開放すること。室内に設置されている酸素濃度センサーのアラームが鳴ったときは、直ちに再充填を中止し、測定室から避難する。通常の酸素濃度に戻るまで十分に換気を行うこと。
10.装置の標準プログラム以外のパルスシーケンスを用いる場合には,管理者または管理補助者とパルスシーケンスの内容について協議し,許可を得て使用すること。
11.利用者の重大な過失による故障の修理費は,原則として当該の利用者が負担する。
12.0℃以下の低温測定を行う場合に用いる液体窒素と窒素ガスボンベは,利用者が調達すること。
13.その他利用上の注意事項
(1) データのバックアップ
利用者は,測定の都度あるいは一週間に一度,測定データをバックアップしてハードディスクのユーザー領域から削除すること。一週間以上放置されたデータは,管理者または管理補助者がハードディスクから削除する。
(2) 磁性体の持ち込み禁止
核磁気共鳴装置の超電導磁石はセルフシールド型で,AVANCE400の5ガウスラインは半径約1mに,AVANCE500の5ガウスラインは半径約1.3mに抑えられている。しかし,磁石近傍では急激に磁場強度が上昇しているので以下の事項を守ること。
(a) 鉄製の工具,ハサミ,ホッチキス,クリップなどの持ち込みを禁止する。
(b) 土ホコリを測定室に持ち込まないこと。
(c) 液体窒素補充には,備え付けの非磁性材料製液体窒素タンクを用いて行うこと。
(d) 鉄製の液体窒素タンクの使用を禁じる。
(e) やむを得ない場合を除きガスボンベの搬入を避けること。ガスボンベを搬入する場合には,入り口のボンベ置き場にチェーンで固定すること。
(f) 磁石付近の掃除には電気掃除機の使用を禁じる。雑巾で磁石周りの床の埃を拭き取ること。
(3) ペースメーカーをつけている人の入室禁止
(4) 試料管
測定試料の入った試料管は,測定室に持参する前に研究室で試料管外部をアセトン等で清浄にし,測定室で再度キムワイプを使って拭ってからスピナーに挿入すること。
試料管は通常市販されている製品で十分であるが,曲がった試料管でスピニングすると,プローブ内のインサートガラスを破損する可能性がある。また,傷のついた試料管はプローブ内で破損して汚染する可能性があるので,試料調製前に試料管をよく観察して疑わしい試料管の使用は避けること。
良好なスペクトルを得るためには,AVANCE400用にはWILMAD社製の528-PP-7(または528-PP-8)あるいは(株)シゲミ製のPS-003(またはPS-002)が,AVANCE500用にはWILMAD 社製の535-PP-7(または535-PP-8) あるいは(株)シゲミ製のPS-001(またはPS-002)が適している。
WILMAD 社製の試料管の問い合わせ先:(株)フレックス(http://flexnmr.com/)
(株)シゲミ製の試料管の問い合わせ先:
(株)シゲミ(http://www.shigemi.co.jp/pc/index.html)
(5) スピナーの取り扱い
試料管をスピナーに取り付けるときには,必ずサンプルゲージで高さを正しく調節すること。試料管位置を下げすぎると(insert bottom line より下の場合),試料管挿入時にコイル下部のセラミック部にぶつかって破損する。逆に上げ過ぎるとシム調整が順調に進まなくなる。
プローブへ試料管を挿入する前に,スピナーの空気を吹き付ける部分をキムワイプできれいに拭い,スピナーよりも上に出た試料管の上部を持ってプローブへの挿入作業を行うこと。
スピナーが汚れているとスピナーの回転モニターが正しく働かないばかりではなく,プローブの汚損につながる。
また,試料管を持ったときにスピナーがずり落ちる場合には,そのまま使うと回転不良や試料管の破損を招くおそれがあるので,管理者または管理補助者に連絡すること。
サンプルゲージは,各核磁気共鳴測定装置のプローブ内で試料管が最適位置にセットされるように調整されている。したがって,調節用のネジを回して設定を変えると試料が正しい位置にセットされなくなる。サンプルゲージは高価(約40万円)であるから,落として破損しないように注意する。
(6) 試料管のプローブへの挿入
試料管を超伝導磁石内にセットする前に,必ずプローブ内に試料管が挿入されていないことを確認すること。試料管の入ったプローブに,そのまま2本目の試料管を挿入すると,試料管が破損してプローブ内を汚損する。最悪の場合にはプローブを新規購入する必要が生じる可能性がある。
(7) 有毒試料の試料調製
核磁気共鳴測定室は熱交換型換気扇で換気をしているが,有毒ガスが試料から発生すると危険である。危険性の高い試料の場合には封管試料にすること。
(8) 試料の温度変化
プローブごとに使用温度範囲が定められているが,測定機器を最高の状態で維持するため,指定された最高温度よりも20℃以下,および,最低温度よりも20℃以上での使用のみを許可する。また、試料の温度を変える場合には,セラミック製のスピナーを用いること。セラミック製のスピナーは通常のスピナーよりも重いので,コンプレッサーあるいは窒素ガスの圧を指定された圧にして測定を行うこと。
試料温度を上げて測定したい場合には,試料管をプローブに挿入する前に,実験室で希望の測定温度よりも数度上まで加熱し,安全性を確認してからプローブに挿入すること。
試料の温度が上がりすぎると試料溶液が沸騰し,キャップが外れ,溶液がプローブ内にこぼれ落ちる危険性がある。試料溶液の沸点を必ず確認すること。また,沸騰しない場合でも試料管内で溶液の対流が激しくなると,気泡が生じることがあってシム調整が困難になる。
水溶液試料を0℃以下で測定したい場合も,試料管をプローブに挿入する前に,水溶液試料を入れた試料管が,実際に希望の測定温度よりも数度低い温度まで冷却し,凍結,および,破損しないことを必ず確認すること。
0℃以下の低温測定や70℃以上の高温測定を行う場合には,結露、凍結あるいは酸化によりプローブ等が痛まないよう,温度設定を変える前に、圧縮空気の代わりに窒素ガスを流すこと。コンプレッサー・ドライヤーから圧縮空気用のチューブを外し,窒素ガスボンベに接続し,少しずつ窒素ガスを流せばよい。試料回転やサンプルリフトも窒素ガスを利用する。温度可変の実験終了後は,必ず温度設定を室温に戻すこと。さらに,プローブ内の試料温度が室温に戻ったことを確認した後,圧縮空気用のチューブをコンプレッサー・ドライヤーに接続し,完全に実験前の状態に戻すこと。
(9) 測定終了時のデカップラーや温度可変装置の出力
測定が終了した段階で,必ずデカップラーや温度可変装置の出力が出ていないことを確認すること。プローブ交換などの作業をするときの障害になる。
(10) 新しいパルスシーケンスの利用
強いパルスを照射すると,プローブ内で放電が起こりコイルの焼き付きなどの故障の原因となる。新しいパルスシーケンスを用いる場合には,必ず管理者または管理補助者に相談すること。
(11) パルス強度の変更
パルス強度を変える場合には,必ず管理者または管理補助者の許可を得ること。
(12) 測定室の入退室
前室には前室用のスリッパに履き替え,測定室には測定室用のスリッパに履き替えて入室すること。退室するときには測定室のドアを施錠し,前室のドアも施錠する。測定室のドアはしっかり引っ張って確実に閉めないと,施錠が困難なときがある。
(13) 機器分析センターは全館禁煙であるので,決してセンター内及びその周辺で喫煙しないこと。
(14) 生命に危険が及ぶおそれを感じた場合には,核磁気共鳴装置のそばの非常口から脱出すること。
(15) 測定室内の機器をみだりにさわらないこと。
(16) 測定室内を汚した場合には直ちに掃除をすること。磁石の周辺特に真下は掃除機の使用は厳禁であり,雑巾でホコリや汚れを除くこと。
(17) 長時間測定の場合には,”測定中”と書かれた札をキーボードの前に置き,測定中であることをはっきりと示すこと。
13.講習会受講の推奨
核磁気共鳴装置は極めて敏感な装置であるから,利用にはそれ相応の訓練を受ける必要がある。更に高度な測定方法を使いたい場合には,ブルカー・バイオスピン株式会社(横浜市)で開かれる講習会の受講を推奨する。
ブルカー・バイオスピン㈱のサイト
http://www.bruker.co.jp/biospin/workshop/index.php
で講習会の日程が確認できる。受講費用は1人1日1万円である。
14.技術サービス連絡先
ブルカー・バイオスピン株式会社大阪営業所技術サービス部
電話 06-6394-8989
FAX 06-6394-9559
E-mail:info@bruker-biospin.jp