◇装置利用の手引き◇

単結晶自動X線回折装置

  1. 装置の概要
    1. 機種  理学電機株式会社製 AFC−5R
    2. X線発生部  回転対陰極型 定格出力 60kV,200mA  12kW
      ターゲット Cu及びMo
    3. モノクロメーター  ベントグラファイト(0 0 1)
    4. X線測定部  カウンター方式(NaI(Tl)シンチレーター,PHA付き)
      入射X線強度の変動をモニターし,得られたX線強度を補正するためのカウンターも,モノクロメーターの下流側にセットされて いる
    5. ゴニオメーター部  ユレリアンクレードル方式
      ゴニオスピード 2θ,χ,φ軸は 2000゜/min
      ω軸は 1000゜/min
    6. コントロール部  PC/ATコンパチブルの32ビットパーソナルコンピューターで,メインメモリー16MB,ハードディスク850MBとなっており,これに15”カラーモニターとドットマトリクスプリンタがセットされている。また,このコンピュー ターは,学内LANにも接続されている。データ収集の制御用ソフトとして,理学電機製のMSCがインストールされて いる。本ソフトには,オートモード(ピークサーチから,自 動の指数付け及び結晶格子の変換を行い,ラウエ群の判別をしたのち,高角側の反射による格子定数の精密化をし,結晶構造解析用の3次元強度データの収集を行い,再度高角側の 反射による格子定数の精密化をし,最後に結晶によるX線の 吸収補正用にΨースキャン測定を行う,という一連の操作を 自動で行う)及び個々の測定を個別に単独に行うマニュアルモード,また,散漫散乱を3次元的に測定するプログラムや写真撮影を行うためのプログラム等が含まれている。

  2. 装置の原理
     結晶にX線が入射すると,構成原子の種類及びそれらの幾何学的配置の周期性に従って,特定方向に特定の強度を持った散乱X線が観測される(ブラッグの法則)。また,結晶構造の乱れや揺らぎに対応する散漫散乱が観測される。これらの散乱強度を解析することにより(解析プログラムはインストールされていないので,各自で用意する必要がある),試料の結晶構造(平均構造)や分子配向の乱れや構造相転移における前駆現象としての構造的揺らぎ等を知ることができる。

  3. 試料
     測定試料の大きさとしてはX線に完浴させるためには,1.0mm以下にしなければならない。また,試料によるX線の吸収効果を補正し易くするため,試料を球形に整形するのが望ましい。特に,重原子を含んで吸収係数が大きい試料では,より試料の大きさを小さくしなければならない。試料の整形が困難な場合は,Ψースキャン測定から吸収補正を行うこととなる。また,試料に潮解性や空気中で分解し易いような性質はある場合には,試料表面をマニキュアでコートしたり,肉薄のガラスキャピラリー(X線解析用として種々のサイズのものが市販されている)中に封入しなければならない。
     次に,試料を直径0.1〜0.3mmの細いガラス管(あるいは棒)の先にアラルダイト等の接着剤を用いて接着し,そのガラス管を直径2.0mmのアクリル棒や真鍮等の金属棒に接着する(ガラスキャピラリー中に試料を封入した場合は,アクリル棒等に直接キャピラリーを接着してもよい)。試料からアクリル棒あるいは金属棒の端までの全体の長さは,約20mmにしなければならない。

  4. 測定方法
     まず,3.で作製した試料をAFC−5R用のゴニオヘッド(アークレスタイプ)に装着し,ゴニオにマウントする。その後,試料のセンタリングを行い,試料の中心をゴニオの回転中心に一致させる。そして,試料サイズにあったコリメーターを装着し,センタービームストッパーをセットする。
     測定は,装置附属のコンピューターにインストールされているソフトを用いて,オートモードもしくはマニュアルモードで行う。この際,ピークサーチ及び指数付けが終わり粗くセッティングパラメーターが求まったのち,適当な大きさのレシービングスリットをスリットボックス内にセットする。
     測定データは,フロッピーディスク(3.5インチ,2HD,1.44MBフォーマット)に落とすか,学内LANを使用してファイル転送を行うかして,各自の解析用のコンピューターにもっていくことになる。なお,移し終えた測定データは,装置附属のコンピューターのハードディスクから消去すること。
     なお,測定に先立ってのターゲット交換及びその後の光学系調整,PHA調整が必要な場合は,申込窓口になっている教員にご連絡下さい。
     また,試料の加熱あるいは冷却装置については,ハンドメイドの加熱空気あるいは冷却窒素ガス(液体窒素からの気化ガス)の吹き付け装置(温度制御装置付き)があります。これらの装置を使用希望の利用者の方は,申込窓口になっている教員にご相談下さい。

  5. 現在の機器運用システム
     現在,AFC−5Rは,理学部内の5グループに2週間ずつのマシンタイムを順番に割り当てるような形で運用しています。定期的にAFC−5Rを使用されたい方は,その旨を申し出ていただければ,新たなグループとしてマシンタイムを割り振りたいと考えています。また,不定期に使用されたい方は,随時受け付けたいと思いますが,なるべく2週間以上前に機器運用責任者へご連絡下さるようにお願いします。

  6. 利用に際しての注意
     まず,利用者の方は所属学部において,放射線の取扱者としての登録を済ませておいて下さい。また,装置を初めて使用する際には,申込窓口となっている教員の指導を受けるようにして下さい。
     また,装置の特殊な使用法を希望される方は,あらかじめ申込窓口となっている教員とご相談下さい。

  7. 申込窓口
     朝日孝尚(内線5761),野崎浩二(内線5679),笠野裕修(内線5678)(運用責任者)

  8. 利用料金
     消耗品等について実費を負担していただく可能性があります。

マシンタイム状況