◇装置利用の手引き◇

動的構造解析装置



1. 装置の概要
 動的構造解析装置はイメージングプレート(以下IP)を搭載したX線回折装置であり,2つの独立した装置,DIP3000とDIP220からなる.DIP3000は円筒状のIP2枚がワイセンベルグカメラに搭載されており,DIP220は6枚のIPが六角柱の側面に張ってある.それぞれの装置の主な仕様は次のとおりである.

DIP3000
 X線発生部   回転対陰極型 18kV  
         ターゲットMo,Cu,Ag
 光学系     平板グラファイトモノクロメータ, 
         コリメータ径0.3,0.5,0.7,1.0mmφ,カメラ長 150mm 
 ゴニオメータ  κゴニオ 
 装置制御部   EWS NSSUN IPX
 データ解析部  EWS COMTEC 4D XS24
 試料温度制御部 Oxford クライオストリーム
         (80K〜375K)


DIP220
  X線発生部   回転対陰極型 18kV
          ターゲットMo,Cu,Ag
  光学系     平板グラファイトモノクロメー タ,
          コリメータ径0.3,0.5,0.7,1.0mmφ
          3スリット型小角散乱光学系
          受光側Heパス
          カメラ長 80mm〜1000m可変
  ゴニオメータ  1軸ゴニオ
          振動可(小角光学系では不可)
  装置制御部   EWS NSSUN IPX
          (データ解析も行う)

2. 測定および試料
 IPは輝尽性蛍光物質BaFBr:Eu2+を塗布したフィルムである.従来のX線フイルムに比べて感度は10倍以上で,入射強度に対しては2桁あまり広い線型応答範囲を持っている.一度撮影した画像は可視光を照射すれば消去でき,1枚のIPを何度も繰り返し使用することが可能である.これらの特性を生かして次のような目的に使用することができる.

  (ウ)短時間での構造解析データの収集
  (エ)不安定な試料でのデータ収集
  (オ)相転移など過渡的な現象の時分割測定
  (カ)散漫散乱の測定
  (キ)生態高分子の構造解析
  (ク)粉末,繊維,液晶の回折パターンの測定

 測定できる試料はDIP3000では主に単結晶,DIP220では単結晶,粉末,繊維などなんでも測定可能である.
 単結晶の試料はX線のビームに完浴するように試料は直径が1.0mmよりも小さいものを用いる.また,X線の吸収の影響を考慮にしなくてもすむように小さくて球形であることが望ましい.試料は細いガラス棒の先端に接着剤で接着,またはガラスキャピラリーに封入して固定する.これを長さ8mm程度の3mm径のネジに台座からの試料の高さがほぼ15mmになるように取り付ける.粉末試料はガラスキャピラリーに封入して同様に3mm径のネジに取り付ける.
 DIP220ではゴニオヘッドの周りの空間が広く空いているのでサンプルホルダーを自作すればこのほかにも様々な試料の測定が可能である.

3. 測定の概要
 それぞれの装置の主な測定の流れは図1,2に示す通りである.装置の操作は全て制御用のワークステーションから行なう.
 DIP3000は主に構造解析ための反射データの収集の目的にも用いる.2枚のIPを使って交互に露光・読み取りを行なうことによりデータ収集の効率を高めている.データは画像として2次元的に収集される.結晶系は画像データから反射強度に変換する時に決めるので露光時には軸立てが不要である.このため結晶系に関係なく高速な測定が可能となっている.画像データは,解析用のワークステーションに転送して反射強度データに変換してから解析を行なう.結晶構造解析用には空間群の決定,直接法による初期位相の決定,構造の精密化までを自動的に行なうこともできるプログラムが用意されている.さらに分子を立体的に表示させるグラフィックプログラムもあり,昇華型のカラープリンタによる出力もできる.また,この様な測定のほかにκゴニオメータを使って軸立てを行い,通常の振動写真やワイセンベルグ写真を撮ることも可能である.
 DIP220には6枚のIPが搭載されており,このIPに次々に露光・読み取りを連続して行なうことができる.さらにIPを横方向に移動させる機構も備えており,1枚のIPで時分割測定を行なうこともできる.このようなIPの露光・読み取りの機構に加えてIPの高感度により短時間での測定が可能となり,これまで難しかった構造の時間変化等の観測を実現している.測定プログラムも連続測定,時分割測定それぞれに対応したものが用意されている.ゴニオメータは1軸型のものであるが,ワークステーションから制御を行い露光中試料を振動させることも可能である.用意されているデータ解析プログラムのほとんどは粉末回折データ用である.主な解析プログラムにはスムージング,バックグランド除去,ピークサーチ,積分強度,多重ピーク分離,データベース検索,Rietveld解析,結晶化度計算,結晶子サイズの計算等がある.

4. 利用に関しての注意
 X線回折装置であるので,主な利用者は各部局の放射線取り扱い者の登録を受けている必要がある.はじめて利用する場合は,機器分析センターに利用申請書を提出し,装置管理者あるいは装置運用責任者の指導を受ける.
 装置は原則として各研究グループで交代で使用するので,マシンタイムの都合上, 使用を希望されても後になる可能性もある.

5. 利用申し込み窓口
 運用責任者 野崎浩二 (5679)

6.利用料金
 消耗品については実費を負担していただきます.

7.その他
 詳しくは,運用責任者あるいは,機器分析センターにご相談ください.

マシンタイム状況