◇装置利用の手引き◇

オフセンター型極低温4軸回折装置

1.装置の概要
 極低温(10K〜300K)の単結晶からのX線回折積分強度、および散漫散乱強 度を測定する4軸型回折計です。ゴニオはフーバー製のオフセンター型で、エアプロ ダクト製のHe循環型冷凍器を登載し、サンのEWSからマックサイエンスの制御シ ステムMXCで制御されます。
X線は動的構造解析装置のDIP3000の管球の右側窓より取り出して、グラフ ァイトで単色化のMoKα線を使用しています。測定可能なのは2θ<61度です。

2.試料および得られるデータ
 単結晶を直径0.5〜0.3mmの球形に整形し、長さ10mmで直径1mmのサファイ ア(あるいは銅)の棒の先に低温ワニスで付けたものを、クライオスタットのコール ドヘッドの先に差し込みます。
 測定データはEWSのファイルに出力されます。強度のみ、あるいはプロファイル 付きでテキストファイルに変換でき、イーサーネットで持ち帰り、各自の処理系で解 析します。いくつかの標準的な解析プログラムが機器運用責任者の研究室で作成され ています。

3.測定方法と注意点
 X線回折計としては、他のシステムと同様に、
   ピークサーチ、 指数付け、
   Laue群の決定、 UB行列の精緻化、
   強度測定
を順に行いますが、完全自動測定も可能です。通常、100個の強度データ収集は1 時間程度です。サンプルが割れていたり、ツインとなっていると正確なデータを得る のは困難です。写真法で結晶の質および晶系、格子定数を確認されていることが必要 です。
 極低温の実験では、サンプルをベリリウムのセルに入れ、ラディエーションシール ドと強化カーボングラファイトのカバーを付け、真空に引き、冷凍機を起動します。 室温から10Kに下がるのに2〜3時間を要します。その際、コールドヘッドが1mm 程度収縮しますので、高さzの調整、およびxyの微調整が必要となります。これは 適当なブラッグ点を観測しながら行いますので、若干の熟練を要します。サンプル交 換は、クライオスタットが室温に戻るまで3〜4時間待ってから行います。
 散漫散乱や特定の逆格子点の強度の温度依存性の測定には、測定温度を含めて、あ らかじめ測定点を指定するファイルを作成し、自動的に温度制御とUB行列の精緻化 を行いながら強度測定することもできます。ただし、結晶のxyzの微調は人間まか せです。
 逆格子メッシュスキャンには、任意の位置のポイント測定と任意の点を中心とする ステップスキャンの2つのモードが用意されています。
 なお、測定システムMXCでは、強度はスキャンスピードで規格化されていないの で、スピードの異なるデータセットを比較する場合は、強度の規格化が必要です。

4.利用に際しての注意
 はじめて利用する場合は、センターに利用申請を出し、運用グループの指導を受けて下さい。防X線カバー内の作業は、X線取扱者として登録を受けている人の監督下 で行って下さい。

5.利用申込窓口
 運用責任者:増山博行(内線5675、e-mail:mashi@sci.yamaguchi-u.ac.jp)

6.利用料金
 消耗品は利用者負担です。また、装置維持費が措置されていない機器ですので、故 障の場合は責任に応じて実費、もしくは利用実績に応じた負担をお願いすることがあ ります。

7.その他
 昨年発行の機器分析センター報告 No.4 の記事も参照して下さい。