◇装置利用の手引き◇

全自動蛍光X線分析装置

1.装置の概要
(1)機種 理学電気工業株式会社製 RIX3000
(2)X線発生部 定格出力 60kV, 100mA,X線管球 Rh/W デュアルターゲット,
(3)分光方式 波長分散方式(LiF(200)SC用 およびF-PC用,LIF(220),Ge,PET,TAP)
(4)データ処理 32ビットパーソナルコンピュータ,マルチウインドウ対応ソフトウエア( 定性同定機能はKα,Kβ,Lα,Lβ1,Lβ2,Lβ3,Lγ1を判別の上自動解析する。検量線は2次式3分割方式である。 マトリックス補正は非線形回帰計算ができる。 バックグラウンドは多点で行えフィッティングは3次関数の他にローレンツ,双曲線ができ,ネット強度の精密測定ができる。ガラスビード試料に対して試料の強熱減量及び酸化増量さらに融剤の揮発に対応できるソフトウェアである。装置制御としてX線のエージング→PHA調整→標準化→測定サンプル登録→X線OFF迄ソフト上でプログラムできる。外部伝送としてASCII(アスキー)ファイルで出力ができる。)
(5)試料自動交換機 50個の試料ホルダが装填でき,1個ごとに定性。定量について任意にプログラムできる。 

2.装置の原理 
 物質にX線を照射すると,物質に吸収されたX線の一部が各元素の種類によって,固有のエネルギー(波長)を持った蛍光X線となって放出される。この蛍光X線を分光結晶で分光し,X線の波長と強度を測定することで,物質中に含まれる元素の種類と量がわかる。
 蛍光X線分析の特徴は,@分析が迅速,A非破壊分析も可能,Bスペクトルは化学的状態に影響されない,C化学的に同族の元素の分析が可能,D分析精度が高い,E定性分析が容易,F厚みの分析ができる,G試料準備が容易,などである。

3.試料および得られる情報
 そのままの状態で固体,粉体,液体の分析が可能(非破壊分析)(現在のところ,液体試料の分析はおこなっていない)。
 蛍光X線強度は,試料の表面状態や試料成分によって大きく左右される。同じ組成であっても試料の粒度効果あるいは鉱物効果などによりX線強度が変化し,検量線の直線性を乱す原因となる。このため,これらマトリックス効果(励起・吸収効果)の影響を小さくするために,試料調整が重要である。岩石試料の場合は,融剤と混合し均質なガラスを作り分析に供している。粉末で分析する場合は,アルミリングに試料をつめプレスマシンで加圧形成して表面の凹凸をできるだけなくす。定量分析をおこなう場合は,測定試料のほかに標準となる試料を用意する。5B(ボロン)〜92U(ウラン)までの元素が高感度で分析可能。5分間で定性,半定量分析が可能(高速スキャンニング機能)。ファンダメンタルパラメータ(FP)法を用い標準試料なしで,半定量,定量分析が可能。

4.測定方法
 測定は,装置付属のコンピュータでコントロールする。あらかじめ準備されているソフトウエアや検量線を用いて,定性分析や定量分析を行う.使用者が,標準試料を準備し,検量線を作成することも可能である.

5.測定例・応用例
 岩石の主成分および微量成分分析に加え希土類元素分析のへ応用例を述べる.
 現在,岩石の主成分およびRb,Zr等の徴量元素の分析は蛍光X線分析法の迅速,簡便,高精度という利点が評価され分析法の主流となっている。また,希土類元素の分析は,岩石の成因を考える上で重要であるが,一般的にその含有率が低く蛍光X線分析法にかわり,より希土類元素に対して感度の良い質量分析法が利用されているのが現状である。しかし,質量分析法は分析に長時間が必要で,また操作上も繁雑であり,蛍光X線分析法で他の元素と同様に希土類を簡便に精度良く分折出来ないかという要求が高まっていた。
 本装置は,Rh/WデュアルターゲットX線管球のWターゲットを用いることで,Rh X線管球に比べより高い感度で希土類を分析出来る。また,Rb,Zr等の分析は従来通りRhターゲットに切り換えることで精度良く分析でき,一本のRh/WデュアルターゲットX線管で希土類を含む微置元素と主成分を最適の条件で分析出来るようになった。
 機器分析センターに設置されているRIX 3000で1:2のガラスビードを使用して,地質調査所の標準岩石試料 JB-1a, JA-2を測定した結果を示す.( )内は推奨値.主成分元素はwt.%,微量成分元素はppm.

JB-1a:SiO2 52.73 (52.41), TiO2 1.30 (1.28), Al2O3 14.48 (14.45), Fe2O3 9.06 (9.05), MnO 0.15 (0.15), MgO 7.85 (7.83), CaO 9.38 (9.31), Na2O 2.75 (2.73), K2O 1.39 (1.40), P2O5 0.26 (0.26), Ba 498 (504), Ce 66.0 (65.9), Co 37.3 (38.6), Cr 393 (392), Cu 55.4 (56.7), Dy 4.17 (3.99), Er 2.13 (2.18), Ga 17.4 (17.9), Gd 3.60 (4.67), La 38.4 (37.6), Nb 27.9 (26.9), Nd 27.1 (26.0), Ni 141 (139), Pb 8.30 (6.76), Pr 7.94 (7.30), Rb 38.7 (39.2), Sm 5.00 (5.07), Sr 452 (442), Th 8.60 (9.03), U 3.49 (1.67), V 199 (211), Y 24.2 (24.3), Yb 1.91 (2.13), Zn 82.0 (85.2), Zr 140 (141)

JA-2:SiO2 56.20 (56.42), TiO2 0.67 (0.66), Al2O3 15.43 (15.41), Fe2O3 6.32 (6.21), MnO 0.11 (0.11), MgO 7.67 (7.60), CaO 6.30 (6.29), Na2O 3.08 (3.11), K2O 1.77 (1.81), P2O5 0.16 (0.15), Ba 313 (321), Ce 35.9 (32.7), Co 29.5 (29.5), Cr 424 (436), Cu 30.4 (29.7), Dy 3.62 (2.80), Er 1.35 (1.48), Ga 16.6 (16.9), Gd 2.95 (3.06), La 15.9 (15.8), Nb 9.43 (9.47), Nd 14.8 (13.9), Ni 141 (130), Pb 18.3 (19.2), Pr 3.68 (3.84), Rb 71.5 (72.9), Sm 3.20 (3.11), Sr 245 (248), Th 5.80 (5.03), U 3.12 (2.21), V 123 (126), Y 18.0 (18.3), Yb 1.43 (1.62), Zn 63.6 (64.7), Zr 114 (116).

 センターでは,現在のところ岩石試料についてのみ分析を行っているが,蛍光X線分析装置は,鉄鋼,非鉄金属,セメント,セラミックス,エレクトロニクス,化学,農業,環境の分野で利用されている。 

6.利用に際しての注意
 はじめて装置を利用する場合は,申し込み窓口になっている教員あるいはセンター技官の指導を受けて下さい。ガラスビード作成の際,水の多い試料,硫化物のはいった試料は,注意が必要ですのであらかじめ申し出て下さい。
 また,特殊な試料の分析を希望される際はご相談下さい。
 ガラスビードを作るビードサンプラ装置(東京科学株式会社製 NT-2100A)と加圧ペレットを作るプレスマシンはセンターにあります。

7.申し込み窓口
 白木敬一(内線5744),今岡照喜(内線5765),大和田正明(内線5751),永尾隆志(内線5772)(運用責任者)。

8.利用料金
 消耗品については,実費を負担していただきます。

9.その他
 詳しくは,山口大学機器分析センター報告第4号,第5号,第6号を参照して下さい。